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彩の第一印象は不器用。
生徒会に入りたての1年生だった俺でも、それはちょっと違うのではないか思うくらい、少しずれた方法で時間をかけている2年生の先輩がいた。
彼女は当時、整美委員長を務めていたが、人への伝え方があまり上手ではなく、非効率的なやり方で働き、よく泣いているような人だった。俺が憧れていた誰もから慕われるようなタイプではなかったのだ。しかし、誰よりも一生懸命で、何事にも真剣に取り組み、人のために涙を流せる先輩の姿に俺は惹かれていった。
彼女の仕事を手伝いたくなり、自ら彼女と共に働くことを志願した。そして、傍にいるうちにどんどん彼女の魅力が見えてきて、自然と好意を持つようになっていったのである。いつからか、彼女に告白したいという気持ちが芽生えていた。
しかし、自分に自信を持って言える長所がなく、想いを伝える勇気が持てなかった。何か自信をつけられるものはないかと悩んだ挙句、学力を上げることを目指した。
ここで問題が発生する。当時の俺は自他共に認めるお墨付きの馬鹿だった。五教科の平均点は32点。実力テストの順位は、下から5番目で、先生からは卒業は疎か、進級すら怪しいと言われていた。
馬鹿な男は女子に嫌われると思っていた俺は、今のままでは好かれるどころか、相手にさえしてもらえないと思った。だから俺は、テストで五教科平均80点以上取ったら告白するという、かなりハードルの高い明確な目標を立て、死に物狂いに勉強した。
天矢の力を借りるか迷ったが、今回は自分の力で成し遂げたいと考え、彼の申し出は断った。もしかしたら人生でこれほど勉強する時は来ないのではないかというぐらい頑張った。
その結果、1年生の夏の期末テストで、五教科平均85点という自分でも驚くような点数を取ることができた。
その日の放課後、彼女と二人きりの生徒会室で俺は告白した。心が躍っているのに、はち切れそうな変な感覚は始めて味わうものだった。彼女は少し不自然な挙動をみせたが、「私なんかで良ければ」と恥ずかしがりながら承諾してくれた。
「報われない努力は努力とは言えない。つまり報われた君の努力は本物だったんだね。おめでとう」
天矢の祝福の言葉は、まるで「俺の世界へようこそ」と言っているようだった。無論、彼はそんなタイプではないのは百も承知だが……。
俺が初めて行った努力は、こういった形で実を結んだのだった。
付き合い始めても、生徒会での関係性は変わらない。先生にいいようにこき使われ、二人でこなしていく。
彼女の不器用なやり方を俺が指摘し、散々言い返すくせして、俺の方を採用する。それが上手くいったら、
「まあ……今回はありがとね」
そうやってちょっと不服そうにお礼を言う。なんて見事なツンデレなんだと俺は歓喜してしまう。
字を書く仕草、用具点検するときの姿、上手くいったときに見せる晴れやかな笑顔。そのどれもが俺を惹きつけてやまない。
彩と特別な関係になってから今日に至るまで、俺は幸せの絶頂にいた。恋は盲目というのはどうやら本当らしい。
生徒会に入りたての1年生だった俺でも、それはちょっと違うのではないか思うくらい、少しずれた方法で時間をかけている2年生の先輩がいた。
彼女は当時、整美委員長を務めていたが、人への伝え方があまり上手ではなく、非効率的なやり方で働き、よく泣いているような人だった。俺が憧れていた誰もから慕われるようなタイプではなかったのだ。しかし、誰よりも一生懸命で、何事にも真剣に取り組み、人のために涙を流せる先輩の姿に俺は惹かれていった。
彼女の仕事を手伝いたくなり、自ら彼女と共に働くことを志願した。そして、傍にいるうちにどんどん彼女の魅力が見えてきて、自然と好意を持つようになっていったのである。いつからか、彼女に告白したいという気持ちが芽生えていた。
しかし、自分に自信を持って言える長所がなく、想いを伝える勇気が持てなかった。何か自信をつけられるものはないかと悩んだ挙句、学力を上げることを目指した。
ここで問題が発生する。当時の俺は自他共に認めるお墨付きの馬鹿だった。五教科の平均点は32点。実力テストの順位は、下から5番目で、先生からは卒業は疎か、進級すら怪しいと言われていた。
馬鹿な男は女子に嫌われると思っていた俺は、今のままでは好かれるどころか、相手にさえしてもらえないと思った。だから俺は、テストで五教科平均80点以上取ったら告白するという、かなりハードルの高い明確な目標を立て、死に物狂いに勉強した。
天矢の力を借りるか迷ったが、今回は自分の力で成し遂げたいと考え、彼の申し出は断った。もしかしたら人生でこれほど勉強する時は来ないのではないかというぐらい頑張った。
その結果、1年生の夏の期末テストで、五教科平均85点という自分でも驚くような点数を取ることができた。
その日の放課後、彼女と二人きりの生徒会室で俺は告白した。心が躍っているのに、はち切れそうな変な感覚は始めて味わうものだった。彼女は少し不自然な挙動をみせたが、「私なんかで良ければ」と恥ずかしがりながら承諾してくれた。
「報われない努力は努力とは言えない。つまり報われた君の努力は本物だったんだね。おめでとう」
天矢の祝福の言葉は、まるで「俺の世界へようこそ」と言っているようだった。無論、彼はそんなタイプではないのは百も承知だが……。
俺が初めて行った努力は、こういった形で実を結んだのだった。
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字を書く仕草、用具点検するときの姿、上手くいったときに見せる晴れやかな笑顔。そのどれもが俺を惹きつけてやまない。
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