ただいま

越知 学

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2章

10話

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 9月17日。同じ日を繰り返すという不思議な体験から1週間が経った。僕と母が和解したあの日以来、それ以前と変わらない生活を送っていた。
 ある一つだけの疑問を残して。
 ……あの少女がいない。
 僕は9月11日から休日問わず、毎日学校近くの公園に立ち寄った。あの日くれた言葉のお礼を言いたくて、夕方になっては日課のように足を運んだ。土曜日に関しては、きっと少女が好きであろうと考えたイチゴの大きなショートケーキを持って、昼からブランコで待ちぼうけていた。
 しかし僕を後押ししてくれたあの日以降、少女に会うことは叶わなかった。
 ……僕はまた大切なものを失ったのか?
 帰りのHRの最中、僕の視線は既に公園の方に向いていた。
 ……今日は会えるだろうか。あの日の感謝を伝えられるだろうか。
 そんなことをぼんやりと考えていると、担任からプリントが配られた。僕は前の人から両手でそれを受け取り、自分の分を取って両手で後ろの人に渡す。その紙に目をやるや否や、一瞬時間が止まったかのような錯覚を覚えた。
 ーー進路希望調査。
 それはフォントサイズ20は軽く超えているぐらい大きく書かれていた。あまりにも誇張されすぎているその文字は、僕の揺らぐ思考に訴えかけてくる。
『現実を見ろ』
 その日の勉強で手一杯の僕に、未来、それも数年後の先を見据えることなんて到底無理な話である。ただでさえ心配症な僕に、さらに不安を煽るようなその言葉はあまりにも大きすぎる負荷だった。
 僕は誰よりも現実的で、しっかり今と向き合っているつもりでいたが、どうやらそれは間違えだったようだ。
 ……本当に僕はダメなやつだな。
 悪い癖が出る。イレギュラーなことに出くわしてしまうと、つい自分を卑下してしまう。
 HRが終わり、自己評価を下げたまま僕は公園へと向かう。もしかしたら、落ち込んでいる僕を慰めにひょっこり出てきてくれるかもしれない。そんな淡い期待を持ったが、今日も少女は現れなかった。
 建物のせいなのか、僕の錯覚なのか分からないが、ブランコの一帯だけ夕日で照らされず、闇の世界が広がっていた。
 一足早く夜が訪れているようなその空間は、僕の心と同じくらい暗かった。
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