オレンジジュースとケーキとコーヒー

5 オレンジジュースは探したくない

「どうしたの？大丈夫？」
私は驚きと心配で焦ってしまったけど秀は違った。
「誰？」
その秀の一言に驚いたがその言葉の意味は一応、理解した。そして早く誰なのかを知りたい私は大きな声で少し早口で言った。
「誰なのか教えて！」
「……」
沈黙が続き、私は少し驚いた。このメンバーでこんなに静かになる時間がながいことは滅多にないことだから。
「いやっ違う。誰かわかったんじゃないよ。ところで何で好きになったの？」
予想通りの質問だった。
「その人が優しいから?」
「気持ち悪っ」
「気持ち悪くない！」
いつの間にかまた、私と龍のケンカのようなコントが始まる。
「うるさい。」
そして秀の一言で終わる。いつも通りすぎてなんとなく何かに安心する。きづけば学校についていた。
「あっ」
「ん？」
「？」
「パーカーの人！！！」
私は周りのものが見えず、まるで今にも電柱にぶつかりそうなほどのスピードで走った。
「すみません！」
「何ですか？」
「あなた、名前、何て言うの？」
「えっ？」
「名前！」
「あーえーと高騒遥灯（たかざわ はるひ）です。」
「…」
「あっ僕今から仕事行くんで」
私はその名前を聞き、頭の中が真っ白になっていた。
「高騒春火って、あの有名モデルじゃん！」
龍の声が、まるで私の真っ白になった頭に色をつけてくれたようだった。
「じゃあ、私が好きになったのって有名モデル？って事は、絶対叶わない恋ってこと？っていうより何で気づかなかったのかなぁー！？」
わたしは心の中に文字が書かれているかのように次々と叫んでいった。通行人もいるし、私たちと同じ学校の生徒もたくさんいる。だけどそんなことにも気づかなかった。
「咲、恥ずかしいから静かにしてください。」
龍の声が、可愛く聞こえた。
「俺、あいつと知り合いだよ。」
久々に開いた秀の口から思わぬ言葉がとびでてきた。