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二九章
そうさ、おれはじいさんの田んぼを守りたいだけなんだ
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そして、ついにその日はやってきた。
八月最初の日曜日。実家のSEED水田の畔道に立つおれたちの前には数人のテレビ・クルー。テレビで見たそのままの大型カメラがおれたちを見つめている。
ゴクリ、と、おれは思わず生唾を飲み込んだ。
こんなところにいたくなかった。逃げ出してどこかに隠れていたかった。それでもおれはこの場にいた。それは勇気とか覚悟とか言うようなものじゃない。もっと怖いことがあったからだ。もし、ここで逃げ出せば、おれは雪森にも、陽芽姉ちゃんにも、鈴沢にも見捨てられてしまう。それが何よりも怖かった。もっと怖いことがあるから他の恐怖を選んだ。それだけのこと。そのときのおれはまちがいなく世界一の臆病者だった。
八月を迎えたSEED水田ではホテイアオイがいよいよその繁殖力を存分に発揮しはじめ、水面全体を覆い尽くさんばかりの勢いになっている。どの株も紫の美しい花をつけ、SEED水田全体が花の絨毯と化している。
その美しい風景は『控えめに言っても国宝級』と陽芽姉ちゃんが評したとおりのもので、一目見れば忘れがたいものがあった。
テレビ・クルーもここまで美しい風景が広がっているとは思わなかったのだろう。到着するなりそろって、『おおっ』と声をあげた。
まずは水面いっぱいに花の広がるその美しい風景を撮影し、さらに周囲の風景やら、SEED水田の全景やら、ずらりと並ぶ太陽電池パネルやらを撮影し、それからいよいよおれたちの番である。
「では、今日はよろしくお願いします。テレビだからといって緊張せず、いつものとおりに行動してください」
そう言われたけど、もちろんそんなことは無理だ。おれは相変わらず真っ青だったし、冷や汗だらけで足元はふらついていた。ひっきりなしに吐き気がして倒れそうだった。そんな情けないおれの姿が映らないように、鈴沢がおれとカメラの間に立って小さな体を大きく動かして注意を引いていた。雪森はSEEDシステムの構成要素を一つひとつ手にとって解説している。みんな、自分のやるべきことをきちんとやっているのに、このおれは……。
おれをフォローしようというみんなの気づかいに、おれは逆に落ち込むばかりだった。 午前中にいつもの作業を終え、昼食をとり――もちろん、おれは米一粒食えなかった――午後からいよいよ本番である。メイド服に着替えたおれが畔道に立ってテレビ・クルーたちを案内しながら、SEED部の理念を語る……手はずになっていた。しかし――。
おれは何も言えなかった。頭のなかが真っ白になってなにひとつ浮かんでこない。陽芽姉ちゃんと雪森に叩きこまれたSEED部の理念も、目的も、SEEDシステムの特徴も、何ひとつ思い出せなかった。おれは役立たずのカカシのようにカメラの前で突っ立っているだけ。動くものは体を流れる冷や汗だけ。スタッフたちも何を質問しても答えられないおれにあきれ果て、天を仰いでいる。
――やっぱり、だめだよ……。
おれは哀願するように雪森を見た。かわってくれるよう視線で訴えた。だが――。
雪森はおれの思いを拒絶していた。いつもクールミントな雪森だが、こんな険しい視線ははじめて見る。怒っている。おれの弱気を弾劾している。
――あなたはなんのためにやっているの?
そう言われている気がした。
――なんのために? それは……それは……。
「ええいっ! やってられるか、こんなこと!」
おれは叫びながらカツラをむしりとり、地面に叩きつけた。周りが一斉に驚きの目にかわった。だが、もう知ったことか。しょせん、おれに格好付けた喋り方なんかできるわけがないんだ。だったら、言いたいことを言うだけだ!
「ちがう! そんなんじゃない! 世界を救うとか、貧富の差を無くすとか、そんなことはどうだっていいんだ! おれはただ、この田んぼを守っていきたいだけなんだ。おれはこの田んぼで育った。それが滅びていくのを見たくないだけなんだ。そのためならおれはなんだってやる、なんだって……!」
……それからどれだけの時がたったのだろう。おれは喋るだけしゃべっていた。じいさんと一緒に過ごした田んぼの思い出。両親の苦労。じいさんの死。幼い頃の誓い。田んぼを継ぐことを反対されたときのショック。一緒に育った仲間たちから拒絶された悔しさ。一度はすべてをあきらめて別の人生を送ろうとした。でも、陽芽姉ちゃんと雪森がおれを救ってくれた。じいさんの田んぼを守っていく方法を教えてくれた。だから、おれは……おれは……!
そのすべてをおれはとりとめもなく喋っていた。まとまりなんて全然なかっただろう。何度も繰り返していることもあっただろう。それでもとにかく、おれは思いの丈のすべてをぶちまけた。気がついたとき――。
おれは全身にべっとり汗をかいて肩でハアハア息をしていた。まるで、全力の一〇〇メートルダッシュを繰り返した後のようだった。喉は火傷でもしたかのようにヒリヒリと痛み、いったい、どれだけ話したのかわからないほどだった。突然――、
「おおっー」
と、声がして、周り中から拍手の音がした。おれは驚いて周りを見た。だれもが拍手していた。雪森が、陽芽姉ちゃんが、鈴沢が、金子までが、そして、テレビ局のスタッフたちが、おれを見ながら拍手していた。おれは何がなにやらわからなまま、その場に立ち尽くしていた。マイクを手にしたリポーターが言った。
「いやあ、よかったよ!」
「よかった?」
思いがけない言葉におれは思わず聞き返していた。
「ああ、すばらしかったよ。最初はとんだヘタレにぶち当たったもんだと思ってたけど、あの喋りは見事だった。芝居っ気のない、まさに生の迫力だね。君の思いの強さには圧倒されたよ。これなら大丈夫。テレビを見る人たちにも必ず伝わるよ」
「テレビを見る人たち? それじゃ……」
「ああ、放送させてもらうよ」
その声を聞いた途端――。
おれはその場にぶっ倒れた。
……気がついたとき、おれは自分の部屋で布団に寝かされていた。横には雪森が座っていた。静かに本を読んでいる。
雪森がおれが目を覚ましたことに気付いた。本を置いて小さく言った。
「気がついた?」
そう言う表情がいつもよりほんの少し柔らかいように見えた。
「え、えっと、あの……」
「だいじょうぶ。成功よ。放映されることに決まったし、お祭りの時も取材にくるって。みんな、がんばってくれって言っていたわ。『地方の衰退や家業の断絶はいまや日本的な問題だ。それを何とかしようとして若者ががんばっている。心強いよ』ってね」
「ほ、本当に……?」
疑い深く尋ねるおれに雪森はコクンと頷いた。
「ええ」
その瞬間、おれは――。
「いやったあー!」
思いきり叫んでいた。
「まったく、あんな大声出してバカじゃないの?」
鈴沢がいつものキツい視線で睨みながらそう言った。おれの叫びはあまりに大きかったので、たちまち家中の人間がよってきてしまったのだった。
「はっはっ、まあいいではないか」と、陽芽姉ちゃん。
「弟にしてみればまさに乾坤一擲、人生を懸けた大勝負。その一戦に勝利したのだ。雄叫びのひとつもあげたくなるというもの」
「まったくですな、お姉さま。これでこそ、この不肖・金子雄二、テレビ局との折衝に苦労した甲斐があったというものです」
「うむ。とにかくこれで宣伝はばっちりだ。いよいよ本番に向けて邁進あるのみ! ついてこい、SEED部の戦士たち! 我々の行動から世界はかわるのだ!」
「ははあっ! どこまでもついて行きますぞ、お姉さま!」
と、陽芽姉ちゃんは鈴沢と金子を引き連れ、一〇〇万の軍勢が行進するような勢いで部屋を出て行った。あとにはおれと雪森だけが残された。
「え、えっと……」
おれは雪森を見て口ごもった。言いたいことがあったのにとっさに言葉が出てこない。
「素敵だったわ」
「えっ?」
「あの言葉。あれはまちがいなくあなた自身の言葉。誰かから教えられたのではなく、あなた自身の心の奥底から出てきた言葉だった。あなたの思いがはっきりと伝わったわ」
「そ、そうかな? なんか全然とりとめもなかったし、言いたいことだけ言いまくっただけって感じで、なんか恥ずかしいんだけど……」
おれはすっかり照れてしまってそう言ったけど、雪森はその完璧な美貌を静かに横に振った。
「あなたはそれでいいのよ。わたしたちがまちがっていたの、ごめんなさい。あなたに無理に理屈を語らせようとしていた。でも、あなたにはそんなの似合わない。あなたは理屈や、人に教えられたことを語るより、自分の思いをそのままぶつける方がずっと似合う。理屈を語ることが必要ならわたしが受け持つ。あなたはあの調子で自分の言いたいことだけを言って」
雪森はそう言って優しく見つめてくれた。
「……あ、あのさ、雪森」
「なに?」
「ありがとう」
「ありがとう?」
「ああ。インタビューの途中でお前を見ただろう? あのとき、お前から『何のためにやっているの?』って言われた気がしたんだ。それで吹っ切れたんだよ。あれがなかったらあのまま終わってた。すべて台無しにしてたところだ。本当にありがとう」
雪のように白い雪森の頬がたちまちバラのように赤くなる。
「わたしは……べつに」
雪森はそのままうつむいて黙り込んでしまった。おれもやけに照れくさくて頭などかいてみる。すると――。
「なにをイチャイチャしてんのよ!」
鈴沢が部屋に飛び込んでくるなり、おれを蹴りつけた。
「本番はこれからなのよ! のんきに女、口説いてる場合じゃないでしょ。これからの相談があるんだからさっさとくる!」
勝手に飛び込んできて、蹴りつけて、言いたいことだけさっさと言って飛び出していく。『これぞ鈴沢!』と言わんばかりのその行動に、おれと雪森は思わず顔を見合わせ、笑ってしまった。
「その通りだな。本番はこれからなんだ。さあ、行こう。なんとしても成功させなきゃ」
「ええ」
おれと雪森は並んで部屋を出て行った。
八月最初の日曜日。実家のSEED水田の畔道に立つおれたちの前には数人のテレビ・クルー。テレビで見たそのままの大型カメラがおれたちを見つめている。
ゴクリ、と、おれは思わず生唾を飲み込んだ。
こんなところにいたくなかった。逃げ出してどこかに隠れていたかった。それでもおれはこの場にいた。それは勇気とか覚悟とか言うようなものじゃない。もっと怖いことがあったからだ。もし、ここで逃げ出せば、おれは雪森にも、陽芽姉ちゃんにも、鈴沢にも見捨てられてしまう。それが何よりも怖かった。もっと怖いことがあるから他の恐怖を選んだ。それだけのこと。そのときのおれはまちがいなく世界一の臆病者だった。
八月を迎えたSEED水田ではホテイアオイがいよいよその繁殖力を存分に発揮しはじめ、水面全体を覆い尽くさんばかりの勢いになっている。どの株も紫の美しい花をつけ、SEED水田全体が花の絨毯と化している。
その美しい風景は『控えめに言っても国宝級』と陽芽姉ちゃんが評したとおりのもので、一目見れば忘れがたいものがあった。
テレビ・クルーもここまで美しい風景が広がっているとは思わなかったのだろう。到着するなりそろって、『おおっ』と声をあげた。
まずは水面いっぱいに花の広がるその美しい風景を撮影し、さらに周囲の風景やら、SEED水田の全景やら、ずらりと並ぶ太陽電池パネルやらを撮影し、それからいよいよおれたちの番である。
「では、今日はよろしくお願いします。テレビだからといって緊張せず、いつものとおりに行動してください」
そう言われたけど、もちろんそんなことは無理だ。おれは相変わらず真っ青だったし、冷や汗だらけで足元はふらついていた。ひっきりなしに吐き気がして倒れそうだった。そんな情けないおれの姿が映らないように、鈴沢がおれとカメラの間に立って小さな体を大きく動かして注意を引いていた。雪森はSEEDシステムの構成要素を一つひとつ手にとって解説している。みんな、自分のやるべきことをきちんとやっているのに、このおれは……。
おれをフォローしようというみんなの気づかいに、おれは逆に落ち込むばかりだった。 午前中にいつもの作業を終え、昼食をとり――もちろん、おれは米一粒食えなかった――午後からいよいよ本番である。メイド服に着替えたおれが畔道に立ってテレビ・クルーたちを案内しながら、SEED部の理念を語る……手はずになっていた。しかし――。
おれは何も言えなかった。頭のなかが真っ白になってなにひとつ浮かんでこない。陽芽姉ちゃんと雪森に叩きこまれたSEED部の理念も、目的も、SEEDシステムの特徴も、何ひとつ思い出せなかった。おれは役立たずのカカシのようにカメラの前で突っ立っているだけ。動くものは体を流れる冷や汗だけ。スタッフたちも何を質問しても答えられないおれにあきれ果て、天を仰いでいる。
――やっぱり、だめだよ……。
おれは哀願するように雪森を見た。かわってくれるよう視線で訴えた。だが――。
雪森はおれの思いを拒絶していた。いつもクールミントな雪森だが、こんな険しい視線ははじめて見る。怒っている。おれの弱気を弾劾している。
――あなたはなんのためにやっているの?
そう言われている気がした。
――なんのために? それは……それは……。
「ええいっ! やってられるか、こんなこと!」
おれは叫びながらカツラをむしりとり、地面に叩きつけた。周りが一斉に驚きの目にかわった。だが、もう知ったことか。しょせん、おれに格好付けた喋り方なんかできるわけがないんだ。だったら、言いたいことを言うだけだ!
「ちがう! そんなんじゃない! 世界を救うとか、貧富の差を無くすとか、そんなことはどうだっていいんだ! おれはただ、この田んぼを守っていきたいだけなんだ。おれはこの田んぼで育った。それが滅びていくのを見たくないだけなんだ。そのためならおれはなんだってやる、なんだって……!」
……それからどれだけの時がたったのだろう。おれは喋るだけしゃべっていた。じいさんと一緒に過ごした田んぼの思い出。両親の苦労。じいさんの死。幼い頃の誓い。田んぼを継ぐことを反対されたときのショック。一緒に育った仲間たちから拒絶された悔しさ。一度はすべてをあきらめて別の人生を送ろうとした。でも、陽芽姉ちゃんと雪森がおれを救ってくれた。じいさんの田んぼを守っていく方法を教えてくれた。だから、おれは……おれは……!
そのすべてをおれはとりとめもなく喋っていた。まとまりなんて全然なかっただろう。何度も繰り返していることもあっただろう。それでもとにかく、おれは思いの丈のすべてをぶちまけた。気がついたとき――。
おれは全身にべっとり汗をかいて肩でハアハア息をしていた。まるで、全力の一〇〇メートルダッシュを繰り返した後のようだった。喉は火傷でもしたかのようにヒリヒリと痛み、いったい、どれだけ話したのかわからないほどだった。突然――、
「おおっー」
と、声がして、周り中から拍手の音がした。おれは驚いて周りを見た。だれもが拍手していた。雪森が、陽芽姉ちゃんが、鈴沢が、金子までが、そして、テレビ局のスタッフたちが、おれを見ながら拍手していた。おれは何がなにやらわからなまま、その場に立ち尽くしていた。マイクを手にしたリポーターが言った。
「いやあ、よかったよ!」
「よかった?」
思いがけない言葉におれは思わず聞き返していた。
「ああ、すばらしかったよ。最初はとんだヘタレにぶち当たったもんだと思ってたけど、あの喋りは見事だった。芝居っ気のない、まさに生の迫力だね。君の思いの強さには圧倒されたよ。これなら大丈夫。テレビを見る人たちにも必ず伝わるよ」
「テレビを見る人たち? それじゃ……」
「ああ、放送させてもらうよ」
その声を聞いた途端――。
おれはその場にぶっ倒れた。
……気がついたとき、おれは自分の部屋で布団に寝かされていた。横には雪森が座っていた。静かに本を読んでいる。
雪森がおれが目を覚ましたことに気付いた。本を置いて小さく言った。
「気がついた?」
そう言う表情がいつもよりほんの少し柔らかいように見えた。
「え、えっと、あの……」
「だいじょうぶ。成功よ。放映されることに決まったし、お祭りの時も取材にくるって。みんな、がんばってくれって言っていたわ。『地方の衰退や家業の断絶はいまや日本的な問題だ。それを何とかしようとして若者ががんばっている。心強いよ』ってね」
「ほ、本当に……?」
疑い深く尋ねるおれに雪森はコクンと頷いた。
「ええ」
その瞬間、おれは――。
「いやったあー!」
思いきり叫んでいた。
「まったく、あんな大声出してバカじゃないの?」
鈴沢がいつものキツい視線で睨みながらそう言った。おれの叫びはあまりに大きかったので、たちまち家中の人間がよってきてしまったのだった。
「はっはっ、まあいいではないか」と、陽芽姉ちゃん。
「弟にしてみればまさに乾坤一擲、人生を懸けた大勝負。その一戦に勝利したのだ。雄叫びのひとつもあげたくなるというもの」
「まったくですな、お姉さま。これでこそ、この不肖・金子雄二、テレビ局との折衝に苦労した甲斐があったというものです」
「うむ。とにかくこれで宣伝はばっちりだ。いよいよ本番に向けて邁進あるのみ! ついてこい、SEED部の戦士たち! 我々の行動から世界はかわるのだ!」
「ははあっ! どこまでもついて行きますぞ、お姉さま!」
と、陽芽姉ちゃんは鈴沢と金子を引き連れ、一〇〇万の軍勢が行進するような勢いで部屋を出て行った。あとにはおれと雪森だけが残された。
「え、えっと……」
おれは雪森を見て口ごもった。言いたいことがあったのにとっさに言葉が出てこない。
「素敵だったわ」
「えっ?」
「あの言葉。あれはまちがいなくあなた自身の言葉。誰かから教えられたのではなく、あなた自身の心の奥底から出てきた言葉だった。あなたの思いがはっきりと伝わったわ」
「そ、そうかな? なんか全然とりとめもなかったし、言いたいことだけ言いまくっただけって感じで、なんか恥ずかしいんだけど……」
おれはすっかり照れてしまってそう言ったけど、雪森はその完璧な美貌を静かに横に振った。
「あなたはそれでいいのよ。わたしたちがまちがっていたの、ごめんなさい。あなたに無理に理屈を語らせようとしていた。でも、あなたにはそんなの似合わない。あなたは理屈や、人に教えられたことを語るより、自分の思いをそのままぶつける方がずっと似合う。理屈を語ることが必要ならわたしが受け持つ。あなたはあの調子で自分の言いたいことだけを言って」
雪森はそう言って優しく見つめてくれた。
「……あ、あのさ、雪森」
「なに?」
「ありがとう」
「ありがとう?」
「ああ。インタビューの途中でお前を見ただろう? あのとき、お前から『何のためにやっているの?』って言われた気がしたんだ。それで吹っ切れたんだよ。あれがなかったらあのまま終わってた。すべて台無しにしてたところだ。本当にありがとう」
雪のように白い雪森の頬がたちまちバラのように赤くなる。
「わたしは……べつに」
雪森はそのままうつむいて黙り込んでしまった。おれもやけに照れくさくて頭などかいてみる。すると――。
「なにをイチャイチャしてんのよ!」
鈴沢が部屋に飛び込んでくるなり、おれを蹴りつけた。
「本番はこれからなのよ! のんきに女、口説いてる場合じゃないでしょ。これからの相談があるんだからさっさとくる!」
勝手に飛び込んできて、蹴りつけて、言いたいことだけさっさと言って飛び出していく。『これぞ鈴沢!』と言わんばかりのその行動に、おれと雪森は思わず顔を見合わせ、笑ってしまった。
「その通りだな。本番はこれからなんだ。さあ、行こう。なんとしても成功させなきゃ」
「ええ」
おれと雪森は並んで部屋を出て行った。
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