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第二部 絆ぐ伝説
第七話一四章 亡霊を討ち果たす!
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――あの化け物どもが大公邸のまわりを埋め尽くしている。その数、ざっと一〇万。
ロウワンをはじめ、野伏、行者、メリッサ、ボーラ、ヴァレリ、それにルドヴィクス。連合軍の指揮官級が集まったなかでビーブはそう告げた。
「一〇万……。あの化け物たちがまだ、そんなにいるのか」
ロウワンはさすがに唖然とした。まさか、そこまでの数がいるとは思っていなかったのだ。
「千年に及ぶ妄執は伊達ではない、と言うことだね」
肩をすくめながらそう言ったのは行者である。たしかに、化け物たちの数を思えば、〝賢者〟たちがこの千年の間、ただ闇に隠れて昼寝して過ごしていたのではないことは、はっきりとわかる。
「ちょっとまって。一〇万って……鳥からの報告なんでしょう? 鳥にそんな数がわかるの?」
そう尋ねたのは、いつの間にやらビーブの言葉がすっかりわかるようになっていたメリッサである。美しい顔全体に『信じられない』という思いが書いてある。
――鳥と人間では数のとらえ方がちがうんだよ。鳥たちは一定の空間にどれだけの群れがいるかで判断する。その認識を人間風に換算すると『一〇万』って数になるんだ。
「はあ……」
そう言われてもメリッサはやはり、納得しがたいらしい。かの人にしてはめずらしく間の抜けた声をあげた。
「無数の群れのなかから自分の獲物とすべき相手を見つける。それが鳥の目だ。鳥たちの報告は信頼できる」
野伏にそう言われて、メリッサもようやく納得したらしい。しぶしぶ、という感じではあったが。
「ビーブどの」
と、今度はレムリア伯爵領の誇る九天将軍のひとり、力天将軍ヴァレリが口を開いた。ビーブとはほとんど初対面に近いかの人ではあるが、ビーブがロウワンのきょうだい分であり、自由の国きっての勇敢な戦士であることを聞いているのだろう。『サルだから』と侮る様子はまったくない。人間、それも、歴戦の勇士を相手にするのと同じ敬意を払っての質問だった。
「ひとつ、確認させていただきたい。化け物どもは大公邸に集まっているのがすべてなのですかな? 他の場所に残っていると言うことはありませぬか?」
重々しくそう尋ねる。口調もいつもより丁寧だが、その全身から吹き出る気配はまさに『武人』。ちょっと前まで飲んで、唄って、得意の裸踊りまで披露して大騒ぎしていたのだが、そんな軽薄さは微塵も感じさせない。いま、この場にいるのは、鎧兜に身を包んだ歴戦の将である。そのあたりがレムリア伯爵クナイスルから信頼され、兵士たちからも慕われる名将の所以なのだった。
ヴァレリの質問に、ビーブは答えた。
――鳥たちは、ローラシア全土を飛びまわって偵察している。目につく限り、化け物どもは一体もいないそうだ。すべて、大公邸に集まっている。どこかに隠れているにしても、やつらの匂いはおれたちにはすぐにわかる。大公邸以外の場所にはどこにもいないと断言できる。
「やれやれ。空から見下ろすことができる上に、鼻も効く、か。動物ってのは便利なもんだね。なんで、人間にはそれができないのかねえ」
ボーラが首を左右に振りながらそう言うと、ヴァレリも重々しくうなずきながら言った。
「まったくまったく。しかし、それだけに獣士隊の存在は頼もしい。いや、ビーブどの。貴殿がいてくれてありがたい」
ビーブとの付き合いの浅いボーラやヴァレリには、さすがにビーブの言葉は理解できない。なので、ロウワンによる通訳を聞いての感想である。
「貴殿への礼にぜひ、我が愛用の薬湯を……」
――いや。それはいい。
健康志向の強すぎるヴァレリは、なにかと言うと怪しげな薬を買い込んではむさぼり食っている。その話を聞いているビーブはにべもなく断った。
「……そんな。せっかく、大枚をはたいて買った、雪に閉ざされた東方の寺院に古くから伝わる秘薬だというのに」
ションボリしながらそう言うヴァレリを見て――。
その場にいる全員がビーブの正しさにうなずいた。
「だけど、これではっきりしたね。やはり、〝賢者〟たちは失うことを怖れている」
行者がそう言った。
「そうでなかったら、ここまで守りに徹するはずがない。〝賢者〟たちは自分たちの立場を、自分たちの栄光を、自分たちの生命を失うことを怖れている。その怖れに取り憑かれているんだ」
「東方世界には『一〇道』という考えがある」
野伏の言葉に、ロウワンは眉をひそめた。
「一〇道?」
「人間が死後に向かう一〇の世界のことだ。そのうちのひとつに『天界』というものがある」
「天界? 天国のことか?」
「いや。西方世界で言う天国とはまるでちがう。死後、天界に入った人間はたしかに、栄耀栄華に満ちた暮らしを送ることができる。しかし、内心では常に、その暮らしを失うことへの怖れに震えている。苛まれている。その苦しみは、他のどの道よりも深く、激しいものだという」
行者が言葉を継いだ。
「そういうこと。〝賢者〟たちも同じ。失うことが怖くてこわくて仕方ないのさ。自分のものを失わないためならどんな犠牲を払ってもかまわない。それこそ、世界を滅ぼしてもかまわない。そう思うほどにね」
「世界を滅ぼしてもって……世界が滅びたら、いくら〝賢者〟たちだって生きてはいられないだろう」
「死の恐怖から逃れる唯一の方法を知ってるかい?」
「えっ?」
尋ね返したロウワンに向かい、行者はイタズラっぽく片目をつぶって見せた。
「実際に、死ぬことだよ」
それは、『洒落』と言うにはあまりにも胃のあたりが重くなる言葉だった。
「しかし、一〇万か……」
気を引き締めるようにロウワンが呟いた。
「そんな数を相手にしなくてはならないなんてな」
「それも、ただの一〇万ではないぞ」と、野伏。
「やつらは正真正銘の化け物。知性もなく、感情もなく、ただ進み、殺すのみ。人間のように逃げることはない。降伏することもない。交渉することもできない。一〇万すべてを殺し尽くすまで戦いは終わらない」
「たしかに」
と、行者が、かの人にしてはめずらしく真面目そうな表情で付け加えた。
「連中には策もなければ、駆け引きもない。ただ、進んで来るのみ。それだけにこちらとしても小細工のしようがない。ただ、ひたすらに、正面からぶつかって力で制する以外にない」
さらに、メリッサも言った。
「それにしても、対化け物用の武器が少なすぎるわ。『もうひとつの輝き』の総力をあげて生産に励んできたけど結局、五千程度しか作れなかった。一〇万もの化け物が相手では……」
メリッサは悔しそうに唇を噛みしめながら言った。髪を切ったために神話に出てくる美少年のように見える美貌が、無念の思いに歪んでいる。開発担当として充分な武器を用意できなかった自分たちを責めているのだ。
そんなメリッサに向かい、ヴァレリが『これぞレムリア人!』と言いたくなる、軽薄なほど陽気な声をかけた。
「なんのなんの。気にするには及びませんぞ、メリッサどの。やつらはたしかに頑丈だが、専用の武器でなければ殺せない、と言うわけではない。槍の一突きでは殺せなくとも一〇〇突き、二〇〇突きをすれば殺せる。それができるのが、人間の知恵というものでありましょう」
「ズルさとも言うけどね」
ヴァレリの陽気さに水をぶっかけるように、ボーラが言った。
「でも、その通りだね。力が足りない分は知恵で補う。それが、人間さまの戦い方さ。一〇万の化け物相手に勝てるかどうかは、あたしたち指揮官の指揮振りにかかってるってことだね」
「キキキ、キイ、キイ」
――人間だけの戦いじゃないぜ。おれたち、野生の力もあるってことを忘れんなよ。
ビーブにそう言われて、ロウワンは改めてうなずいた。
「そうだ。とにかく、避けて通ることはできない戦いだ。化け物どもを突破しないことには、〝賢者〟たちと交渉することすらできはしない」
交渉。
その言葉に――。
それまで無言を貫いていたルドヴィクスの顔色がサッとかわった。表情が強張り、身じろぎした。実際に口に出してなにかを言わなかったのはロウワンに対して遠慮したからか、それとも、あまりに意外な言葉にとっさに反応できなかったからだろうか。
ルドヴィクスにかわるように、その思いを言葉にしたのは行者だった。
「ロウワン。君、まさか、交渉次第では〝賢者〟たちの存在を認めようなんて思っているんじゃないだろうね?」
そう問いかける表情は笑っていたが、きわめて手厳しいものだった。
「そうするためには、〝賢者〟たちはあまりにも多くのローラシア人を殺しすぎた。その〝賢者〟たちを生かしておけば『世界を〝賢者〟から守る』という、この戦いの大義は失われる。それはまた、死んでいった兵士たちに対する裏切りでもある。かの人たちは皆、君が〝賢者〟たちを殺して自分たちの仇を討ってくれる、そう信じて死んでいったんだからね。〝賢者〟たちを生かしておけば、ロウワン。この戦いは君ひとりの権力欲のためのものとなってしまうよ」
まさか、そんなことはしないだろうね?
行者はそう念を押した。
その場にいる全員の視線がロウワンに集中した。ロウワンの答えをまった。すべての視線を浴びながら、ロウワンはゆっくりとうなずいた。
「……わかっている。おれは、〝賢者〟たちを殺さなくてはならない。それは、決して譲らない。そのことは約束する」
その言葉に、ルドヴィクスが安堵の表情を浮かべたのは――。
かの人の立場では当然のことだったろう。
「しかし、〝賢者〟たちを殺すためにはそれこそ、一〇万の化け物どもを突破しなくてはならない。苦しい戦いになる。皆、死力を尽くして当たってくれ」
その言葉に――。
全員が決意を込めてうなずいた。
そのとき、天幕の入り口が開き、〝ブレスト〟とプリンスが入ってきた。
「ロウワン。兵士たちの再編成が終わったわ。いつでも、出撃できる」
「士気は高い。補給も充分にある。なんの心配もなく、戦いに向かえる」
〝ブレスト〟とプリンスにそう言われ――。
ロウワンは立ちあがった。
「よし、行くぞ。いまこそ現代の総力をあげて、過去の亡霊たちを討ち果たすときだ!」
ロウワンをはじめ、野伏、行者、メリッサ、ボーラ、ヴァレリ、それにルドヴィクス。連合軍の指揮官級が集まったなかでビーブはそう告げた。
「一〇万……。あの化け物たちがまだ、そんなにいるのか」
ロウワンはさすがに唖然とした。まさか、そこまでの数がいるとは思っていなかったのだ。
「千年に及ぶ妄執は伊達ではない、と言うことだね」
肩をすくめながらそう言ったのは行者である。たしかに、化け物たちの数を思えば、〝賢者〟たちがこの千年の間、ただ闇に隠れて昼寝して過ごしていたのではないことは、はっきりとわかる。
「ちょっとまって。一〇万って……鳥からの報告なんでしょう? 鳥にそんな数がわかるの?」
そう尋ねたのは、いつの間にやらビーブの言葉がすっかりわかるようになっていたメリッサである。美しい顔全体に『信じられない』という思いが書いてある。
――鳥と人間では数のとらえ方がちがうんだよ。鳥たちは一定の空間にどれだけの群れがいるかで判断する。その認識を人間風に換算すると『一〇万』って数になるんだ。
「はあ……」
そう言われてもメリッサはやはり、納得しがたいらしい。かの人にしてはめずらしく間の抜けた声をあげた。
「無数の群れのなかから自分の獲物とすべき相手を見つける。それが鳥の目だ。鳥たちの報告は信頼できる」
野伏にそう言われて、メリッサもようやく納得したらしい。しぶしぶ、という感じではあったが。
「ビーブどの」
と、今度はレムリア伯爵領の誇る九天将軍のひとり、力天将軍ヴァレリが口を開いた。ビーブとはほとんど初対面に近いかの人ではあるが、ビーブがロウワンのきょうだい分であり、自由の国きっての勇敢な戦士であることを聞いているのだろう。『サルだから』と侮る様子はまったくない。人間、それも、歴戦の勇士を相手にするのと同じ敬意を払っての質問だった。
「ひとつ、確認させていただきたい。化け物どもは大公邸に集まっているのがすべてなのですかな? 他の場所に残っていると言うことはありませぬか?」
重々しくそう尋ねる。口調もいつもより丁寧だが、その全身から吹き出る気配はまさに『武人』。ちょっと前まで飲んで、唄って、得意の裸踊りまで披露して大騒ぎしていたのだが、そんな軽薄さは微塵も感じさせない。いま、この場にいるのは、鎧兜に身を包んだ歴戦の将である。そのあたりがレムリア伯爵クナイスルから信頼され、兵士たちからも慕われる名将の所以なのだった。
ヴァレリの質問に、ビーブは答えた。
――鳥たちは、ローラシア全土を飛びまわって偵察している。目につく限り、化け物どもは一体もいないそうだ。すべて、大公邸に集まっている。どこかに隠れているにしても、やつらの匂いはおれたちにはすぐにわかる。大公邸以外の場所にはどこにもいないと断言できる。
「やれやれ。空から見下ろすことができる上に、鼻も効く、か。動物ってのは便利なもんだね。なんで、人間にはそれができないのかねえ」
ボーラが首を左右に振りながらそう言うと、ヴァレリも重々しくうなずきながら言った。
「まったくまったく。しかし、それだけに獣士隊の存在は頼もしい。いや、ビーブどの。貴殿がいてくれてありがたい」
ビーブとの付き合いの浅いボーラやヴァレリには、さすがにビーブの言葉は理解できない。なので、ロウワンによる通訳を聞いての感想である。
「貴殿への礼にぜひ、我が愛用の薬湯を……」
――いや。それはいい。
健康志向の強すぎるヴァレリは、なにかと言うと怪しげな薬を買い込んではむさぼり食っている。その話を聞いているビーブはにべもなく断った。
「……そんな。せっかく、大枚をはたいて買った、雪に閉ざされた東方の寺院に古くから伝わる秘薬だというのに」
ションボリしながらそう言うヴァレリを見て――。
その場にいる全員がビーブの正しさにうなずいた。
「だけど、これではっきりしたね。やはり、〝賢者〟たちは失うことを怖れている」
行者がそう言った。
「そうでなかったら、ここまで守りに徹するはずがない。〝賢者〟たちは自分たちの立場を、自分たちの栄光を、自分たちの生命を失うことを怖れている。その怖れに取り憑かれているんだ」
「東方世界には『一〇道』という考えがある」
野伏の言葉に、ロウワンは眉をひそめた。
「一〇道?」
「人間が死後に向かう一〇の世界のことだ。そのうちのひとつに『天界』というものがある」
「天界? 天国のことか?」
「いや。西方世界で言う天国とはまるでちがう。死後、天界に入った人間はたしかに、栄耀栄華に満ちた暮らしを送ることができる。しかし、内心では常に、その暮らしを失うことへの怖れに震えている。苛まれている。その苦しみは、他のどの道よりも深く、激しいものだという」
行者が言葉を継いだ。
「そういうこと。〝賢者〟たちも同じ。失うことが怖くてこわくて仕方ないのさ。自分のものを失わないためならどんな犠牲を払ってもかまわない。それこそ、世界を滅ぼしてもかまわない。そう思うほどにね」
「世界を滅ぼしてもって……世界が滅びたら、いくら〝賢者〟たちだって生きてはいられないだろう」
「死の恐怖から逃れる唯一の方法を知ってるかい?」
「えっ?」
尋ね返したロウワンに向かい、行者はイタズラっぽく片目をつぶって見せた。
「実際に、死ぬことだよ」
それは、『洒落』と言うにはあまりにも胃のあたりが重くなる言葉だった。
「しかし、一〇万か……」
気を引き締めるようにロウワンが呟いた。
「そんな数を相手にしなくてはならないなんてな」
「それも、ただの一〇万ではないぞ」と、野伏。
「やつらは正真正銘の化け物。知性もなく、感情もなく、ただ進み、殺すのみ。人間のように逃げることはない。降伏することもない。交渉することもできない。一〇万すべてを殺し尽くすまで戦いは終わらない」
「たしかに」
と、行者が、かの人にしてはめずらしく真面目そうな表情で付け加えた。
「連中には策もなければ、駆け引きもない。ただ、進んで来るのみ。それだけにこちらとしても小細工のしようがない。ただ、ひたすらに、正面からぶつかって力で制する以外にない」
さらに、メリッサも言った。
「それにしても、対化け物用の武器が少なすぎるわ。『もうひとつの輝き』の総力をあげて生産に励んできたけど結局、五千程度しか作れなかった。一〇万もの化け物が相手では……」
メリッサは悔しそうに唇を噛みしめながら言った。髪を切ったために神話に出てくる美少年のように見える美貌が、無念の思いに歪んでいる。開発担当として充分な武器を用意できなかった自分たちを責めているのだ。
そんなメリッサに向かい、ヴァレリが『これぞレムリア人!』と言いたくなる、軽薄なほど陽気な声をかけた。
「なんのなんの。気にするには及びませんぞ、メリッサどの。やつらはたしかに頑丈だが、専用の武器でなければ殺せない、と言うわけではない。槍の一突きでは殺せなくとも一〇〇突き、二〇〇突きをすれば殺せる。それができるのが、人間の知恵というものでありましょう」
「ズルさとも言うけどね」
ヴァレリの陽気さに水をぶっかけるように、ボーラが言った。
「でも、その通りだね。力が足りない分は知恵で補う。それが、人間さまの戦い方さ。一〇万の化け物相手に勝てるかどうかは、あたしたち指揮官の指揮振りにかかってるってことだね」
「キキキ、キイ、キイ」
――人間だけの戦いじゃないぜ。おれたち、野生の力もあるってことを忘れんなよ。
ビーブにそう言われて、ロウワンは改めてうなずいた。
「そうだ。とにかく、避けて通ることはできない戦いだ。化け物どもを突破しないことには、〝賢者〟たちと交渉することすらできはしない」
交渉。
その言葉に――。
それまで無言を貫いていたルドヴィクスの顔色がサッとかわった。表情が強張り、身じろぎした。実際に口に出してなにかを言わなかったのはロウワンに対して遠慮したからか、それとも、あまりに意外な言葉にとっさに反応できなかったからだろうか。
ルドヴィクスにかわるように、その思いを言葉にしたのは行者だった。
「ロウワン。君、まさか、交渉次第では〝賢者〟たちの存在を認めようなんて思っているんじゃないだろうね?」
そう問いかける表情は笑っていたが、きわめて手厳しいものだった。
「そうするためには、〝賢者〟たちはあまりにも多くのローラシア人を殺しすぎた。その〝賢者〟たちを生かしておけば『世界を〝賢者〟から守る』という、この戦いの大義は失われる。それはまた、死んでいった兵士たちに対する裏切りでもある。かの人たちは皆、君が〝賢者〟たちを殺して自分たちの仇を討ってくれる、そう信じて死んでいったんだからね。〝賢者〟たちを生かしておけば、ロウワン。この戦いは君ひとりの権力欲のためのものとなってしまうよ」
まさか、そんなことはしないだろうね?
行者はそう念を押した。
その場にいる全員の視線がロウワンに集中した。ロウワンの答えをまった。すべての視線を浴びながら、ロウワンはゆっくりとうなずいた。
「……わかっている。おれは、〝賢者〟たちを殺さなくてはならない。それは、決して譲らない。そのことは約束する」
その言葉に、ルドヴィクスが安堵の表情を浮かべたのは――。
かの人の立場では当然のことだったろう。
「しかし、〝賢者〟たちを殺すためにはそれこそ、一〇万の化け物どもを突破しなくてはならない。苦しい戦いになる。皆、死力を尽くして当たってくれ」
その言葉に――。
全員が決意を込めてうなずいた。
そのとき、天幕の入り口が開き、〝ブレスト〟とプリンスが入ってきた。
「ロウワン。兵士たちの再編成が終わったわ。いつでも、出撃できる」
「士気は高い。補給も充分にある。なんの心配もなく、戦いに向かえる」
〝ブレスト〟とプリンスにそう言われ――。
ロウワンは立ちあがった。
「よし、行くぞ。いまこそ現代の総力をあげて、過去の亡霊たちを討ち果たすときだ!」
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