281 / 411
第二部 絆ぐ伝説
第一一話一四章 死戦
しおりを挟む
大地を埋め尽くす亡道の怪物たち。
一歩いっぽ足音を立てて迫ってくる。
迎え撃つのは砦の前に布陣し、小銃を構える兵士たち。片膝を立てて座った姿勢の兵士たちの後ろに、立ち姿の兵士たちが並ぶ二段構えの布陣。その全員が両手に小銃をもって構えている。迫り来る亡道の怪物たち相手に狙いを定めている。そして、ジッと押し黙ったまままちつづけている。指揮官の『撃てッ!』の号令を。
居並ぶ顔はどれも紙のように白い。脂汗がにじんでいる。亡道の怪物を狙って構えている小銃がカタカタと震えている。一つひとつの音はかすかなものだが、それが何万と並んでいる。その音がひとつになって、さざ波のように戦場に流れている。
怖い。
恐ろしい。
誰もがその思いに襲われている。
支配されている。
なにしろ、この場にいる兵士たちのほとんどが、仲間たちが次々と亡道の怪物に変わり果て、自分たちを襲ってくる様を実際にその目で見ているのだ。
恐ろしくないわけがなかった。
――マークスⅡの存在があれば、亡道の力は押さえられる。死ぬことはあっても亡道の怪物になることはない。
そのことはもちろん、説明されている。頭では理解している。だからと言って、実際に見た恐怖の光景をそうそう忘れられるはすがない。
迫り来る亡道の怪物たち。その姿を見れば、いやでも思い出す。ともすれば恐怖に支配され、悲鳴をあげて逃げ出してしまいそうになる。
その思いを抑え、この場に足を残している理由はただひとつ、
「自分が逃げれば、家族や友人たちが殺される」
という、別の意味での恐怖だけ。
いっそ、亡道の怪物たちが地響きを立てて殺到してくれていれば、考える余裕もなく戦闘に入る分、楽だっただろう。しかし、亡道の怪物たちは決して走らない。あわてず、急がず、一歩いっぽ近づいてくる。それだけに到達するまで時間がかかる。その分、恐怖にさらされる時間も長い。
――もうたくさんだ! 早く戦闘になってくれっ!
兵士たちの心にそんな叫びがはじける。
戦闘がはじまれば目先の戦いに没頭できる。生き残ることに必死で、恐怖を感じる余裕もなくなる。
早くそうなってほしい。
早くこの恐怖から解放されたい。
誰もがそう思っていた。
そう願っていた。
そして、願いの叶うときがきた。亡道の怪物たちが小銃の射程距離に入る最後の一歩、その一歩を踏み出した瞬間、指揮官たちの声が一斉に響いた。
「撃てッ!」
ついにきたその瞬間。号令と共に兵士たちの心の箍が外れた。味わいつづけた恐怖の反動で、狂騒とも言っていい勇猛さを発揮した。
撃つ。
撃つ。
撃ちつづける。
引き金を引き、弾丸を装填し、また引き金を引く。
指もちぎれよとばかりにその動作を繰り返す。何度もなんども。
あとのことなど考えない。作戦もなにもない。ただただ自分に与えられた弾丸を撃ちまくる。弾丸の尽きるそのときまで。
ただそれだけ。まったくの無秩序な戦い方だがこの際はそれでいい。相手は亡道の怪物。逃げることも、隠れることもせず、真正面から堂々と群れをなして迫ってくる。どう撃っても当たるのだ。作戦だの、効率だの、そんなことを考える必要はなかった。しかし――。
当たるのと、効果があるのは別。
人間相手ではあり得ないその言葉が、亡道の怪物相手では当たり前に存在する。撃ってもうっても放たれた弾丸は、その強靱な肉体に跳ね返されて空しく地面に落ちるのみ。
亡道の怪物たちの体にろくな傷すらつけられない。せいぜい小さな穴を開け、人間であった頃の名残である血がわずかばかり流れる。その程度の効果しかない。
それでも撃つ。
撃ちつづける。
亡道の怪物たちはかまわず向かってくる。あわてず、急がず、怯まずに。一歩いっぽ着実に。巨大な壁そのものが動いているかのように近づいてくる。
砦のなかから大きな銅鑼の音が鳴り響いた。プリンスが指示した合図である。その音を聞いた途端、前線指揮官たちが一斉に手をあげ、後退を指示した。
その指示は一瞬の躊躇もなく実行された。それまで狂騒に駆られて銃を撃ちまくっていた兵士たちが突然、憑き物が落ちたように冷静になり、撃つのをやめ、立ちあがった。一斉に振り向き、砦の方向目指して走り出した。
一糸乱れぬその行動に大地が揺れ、足音が鳴り響く。兵士たちの後ろにあるものは塹壕。二重に張り巡らされた防衛用の穴蔵の最初のひとつ。その上に張り渡された渡り板を通って後方へと退避する。兵士たちが渡り終えたところで渡り板を引く。大地に開けられた穴蔵がポッカリと姿を表した。
兵士たちを追ってきた亡道の怪物たちがその穴へと落ちていく。後からあとから。落ちるそばから次の群れがやって来て、同じように落ちていく。
人間ならばひとたまりもない。落ちた衝撃で体を痛め、動けなくなり、そこに上から後続がつづけて落ちてくるのだ。その衝撃に押しつぶされ、身動きできなくなり、暗い穴の底で肉を、骨を、内臓を、そのすべてを押しつぶされて死の恐怖に苛まれながら圧死していく。しかし――。
それは、あくまで人間の場合。亡道の怪物たちはちがう。穴に落ちた程度ではその強靱な肉体は傷つかない。上から落ちてきた後続の重量も簡単に受けとめる。後からあとから穴に落ちては、その身で塹壕を埋めていく。亡道の怪物たちがぎっちり詰まり、埋め尽くされた塹壕の上。そこを通って後続の怪物たちがやってくる。
その姿、まるで、川も堀も埋め尽くしてやってくるネズミの群れのよう。
どんな手段をもってしてもとめられない。
そう思わせる光景だった。
もちろん、人間の側もこんなことで亡道の怪物をとめられないことは百も承知。罠の本質は塹壕に落とすことではない。本当の罠はその先にある。
「撃てッ!」
再び指揮官たちの号令が飛んだ。その指示はやはり、一瞬の遅滞もなく実行された。ただし、今回、撃つものは銃ではない。弓。先端に小さな炎をまとった火矢である。
海原の火。
古くから海戦で使われてきた火炎兵器。それを人間たちはいま、この場で使ったのだ。
腕力にものをいわせて放たれた矢が亡道の怪物たちの身に当たり、導火線につけられた火が引火して海原の火が、松脂と硫黄とタール、それに、数種類の秘密の原料が混ぜ合わされた火炎兵器が爆発する。
爆発音が鳴り響き、炎が舞う。効果を高めるために塹壕の底にはあらかじめ、ありったけの油が撒かれている。その油に火がついて一斉に燃えあがる。
亡道の怪物に埋め尽くされた塹壕。その底から深紅の猛火が立ちのぼり、巨大な壁となって天に向かって舞いあがる。
その炎の壁のなかで亡道の怪物たちは焼かれていく。生も死もない不死身の怪物たち。その怪物たちであっても、すべてを浄化する炎だけは効果がある。焼き払い、殺すことができる。
噴きあがる猛火の壁があたり一面を、炎を照らした黄金の色に染めあげる。そのなかで亡道の怪物たちが炎に焼かれていく。炎のなかで踊り、苦悶のうちに灰になっていく。その姿に――。
兵士たちが歓喜の声をあげた。
味合わされた恐怖が大きく、長いものだったからこそ喜びも大きい。子どものように飛びはね、はしゃいでいる。しかし――。
亡道の怪物は恐れない。怯まない。あきらめない。炎の壁を強引に突破し、その身を焼く炎を張りつけたまま前進してくる。迫ってくる。
「長槍兵、突撃!」
「おおおっ!」
指揮官の命令に、長槍を構えた兵士たちが怒濤の叫びで応える。両手に槍を構え、亡道の怪物めがけて突進していく。その身に槍の穂先を突き立て、腕力にものをいわせて動きを封じ込む。そこへ、天命の理を付与された武器をもつ兵士が斬りかかり、両断する。
いまや、人類の伝統芸である三位一体の戦法。それは、この戦いでも存分に効果を発揮した。その基本を徹底することで、炎の壁を越えてきた怪物たちを一体いったい始末していく。
だが、もちろん、亡道の怪物たちの数は圧倒的に多い。後からあとから越えてこられれば兵士たちの手に余ることになる。それを見越して、砦の上でプリンスが叫んだ。
「爆砕射、砲撃開始! 炎の壁の向こうを撃ちまくり、やつらの列をくずせ! 少しでも進撃の時間を遅らせるんだ!」
平等の国リンカーンの王にして、砦の総責任者。そのプリンスの号令に従い、防壁上に並んだ無数の爆砕射が一斉に火を吹いた。響く轟音。たなびく煙。その様子はまさに、地獄の火山の噴火だった。
その轟音に負けじと、プリンスは声の限りに叫ぶ。
「撃てっ! 撃って撃って撃ちまくれ! あとのことは考えるな! 撃てるだけ撃ちつづけるんだ!」
「まってよ、プリンス!」
さすがにたまりかねてセアラが叫んだ。
「そんなに撃ちつづけたら砲身が破裂しちゃう! ある程度、撃ったら休ませないと……」
セアラの発言は開発者として当然のものだったが、プリンスは取り合わなかった。
「かまわん! パンゲアの正規騎士団に爆砕射が効かないのは証明済みだ。残しておく必要はない。いまは少しでも早く亡道の怪物どもを倒し、兵士たちを温存することだ。砲身が吹っ飛ぶまで撃ちつづけろっ!」
プリンスのその苛烈な指示を受け、法主たちは人間にできうる限りの効率性と迅速さをもって砲弾を撃ちつづける。
そのなかで、セアラはくやしさに唇を噛みしめていた。
――爆砕射はパンゲアの正規騎士団には通用しない。
はっきりとそう言われたことが、開発者としてこの上ない屈辱だった。
とはいえ、爆砕射が実際に防がれたことはセアラ自身、砦の兵士たちから聞いて知っている。その事実がある以上、なにも言えない。
――見てろよ! 絶対に誰にも防げない超強力な新兵器を作ってやるからっ!
腹のなかでそう叫び、堪えるしかなかった。
戦いは――。
終わらない。
一歩いっぽ足音を立てて迫ってくる。
迎え撃つのは砦の前に布陣し、小銃を構える兵士たち。片膝を立てて座った姿勢の兵士たちの後ろに、立ち姿の兵士たちが並ぶ二段構えの布陣。その全員が両手に小銃をもって構えている。迫り来る亡道の怪物たち相手に狙いを定めている。そして、ジッと押し黙ったまままちつづけている。指揮官の『撃てッ!』の号令を。
居並ぶ顔はどれも紙のように白い。脂汗がにじんでいる。亡道の怪物を狙って構えている小銃がカタカタと震えている。一つひとつの音はかすかなものだが、それが何万と並んでいる。その音がひとつになって、さざ波のように戦場に流れている。
怖い。
恐ろしい。
誰もがその思いに襲われている。
支配されている。
なにしろ、この場にいる兵士たちのほとんどが、仲間たちが次々と亡道の怪物に変わり果て、自分たちを襲ってくる様を実際にその目で見ているのだ。
恐ろしくないわけがなかった。
――マークスⅡの存在があれば、亡道の力は押さえられる。死ぬことはあっても亡道の怪物になることはない。
そのことはもちろん、説明されている。頭では理解している。だからと言って、実際に見た恐怖の光景をそうそう忘れられるはすがない。
迫り来る亡道の怪物たち。その姿を見れば、いやでも思い出す。ともすれば恐怖に支配され、悲鳴をあげて逃げ出してしまいそうになる。
その思いを抑え、この場に足を残している理由はただひとつ、
「自分が逃げれば、家族や友人たちが殺される」
という、別の意味での恐怖だけ。
いっそ、亡道の怪物たちが地響きを立てて殺到してくれていれば、考える余裕もなく戦闘に入る分、楽だっただろう。しかし、亡道の怪物たちは決して走らない。あわてず、急がず、一歩いっぽ近づいてくる。それだけに到達するまで時間がかかる。その分、恐怖にさらされる時間も長い。
――もうたくさんだ! 早く戦闘になってくれっ!
兵士たちの心にそんな叫びがはじける。
戦闘がはじまれば目先の戦いに没頭できる。生き残ることに必死で、恐怖を感じる余裕もなくなる。
早くそうなってほしい。
早くこの恐怖から解放されたい。
誰もがそう思っていた。
そう願っていた。
そして、願いの叶うときがきた。亡道の怪物たちが小銃の射程距離に入る最後の一歩、その一歩を踏み出した瞬間、指揮官たちの声が一斉に響いた。
「撃てッ!」
ついにきたその瞬間。号令と共に兵士たちの心の箍が外れた。味わいつづけた恐怖の反動で、狂騒とも言っていい勇猛さを発揮した。
撃つ。
撃つ。
撃ちつづける。
引き金を引き、弾丸を装填し、また引き金を引く。
指もちぎれよとばかりにその動作を繰り返す。何度もなんども。
あとのことなど考えない。作戦もなにもない。ただただ自分に与えられた弾丸を撃ちまくる。弾丸の尽きるそのときまで。
ただそれだけ。まったくの無秩序な戦い方だがこの際はそれでいい。相手は亡道の怪物。逃げることも、隠れることもせず、真正面から堂々と群れをなして迫ってくる。どう撃っても当たるのだ。作戦だの、効率だの、そんなことを考える必要はなかった。しかし――。
当たるのと、効果があるのは別。
人間相手ではあり得ないその言葉が、亡道の怪物相手では当たり前に存在する。撃ってもうっても放たれた弾丸は、その強靱な肉体に跳ね返されて空しく地面に落ちるのみ。
亡道の怪物たちの体にろくな傷すらつけられない。せいぜい小さな穴を開け、人間であった頃の名残である血がわずかばかり流れる。その程度の効果しかない。
それでも撃つ。
撃ちつづける。
亡道の怪物たちはかまわず向かってくる。あわてず、急がず、怯まずに。一歩いっぽ着実に。巨大な壁そのものが動いているかのように近づいてくる。
砦のなかから大きな銅鑼の音が鳴り響いた。プリンスが指示した合図である。その音を聞いた途端、前線指揮官たちが一斉に手をあげ、後退を指示した。
その指示は一瞬の躊躇もなく実行された。それまで狂騒に駆られて銃を撃ちまくっていた兵士たちが突然、憑き物が落ちたように冷静になり、撃つのをやめ、立ちあがった。一斉に振り向き、砦の方向目指して走り出した。
一糸乱れぬその行動に大地が揺れ、足音が鳴り響く。兵士たちの後ろにあるものは塹壕。二重に張り巡らされた防衛用の穴蔵の最初のひとつ。その上に張り渡された渡り板を通って後方へと退避する。兵士たちが渡り終えたところで渡り板を引く。大地に開けられた穴蔵がポッカリと姿を表した。
兵士たちを追ってきた亡道の怪物たちがその穴へと落ちていく。後からあとから。落ちるそばから次の群れがやって来て、同じように落ちていく。
人間ならばひとたまりもない。落ちた衝撃で体を痛め、動けなくなり、そこに上から後続がつづけて落ちてくるのだ。その衝撃に押しつぶされ、身動きできなくなり、暗い穴の底で肉を、骨を、内臓を、そのすべてを押しつぶされて死の恐怖に苛まれながら圧死していく。しかし――。
それは、あくまで人間の場合。亡道の怪物たちはちがう。穴に落ちた程度ではその強靱な肉体は傷つかない。上から落ちてきた後続の重量も簡単に受けとめる。後からあとから穴に落ちては、その身で塹壕を埋めていく。亡道の怪物たちがぎっちり詰まり、埋め尽くされた塹壕の上。そこを通って後続の怪物たちがやってくる。
その姿、まるで、川も堀も埋め尽くしてやってくるネズミの群れのよう。
どんな手段をもってしてもとめられない。
そう思わせる光景だった。
もちろん、人間の側もこんなことで亡道の怪物をとめられないことは百も承知。罠の本質は塹壕に落とすことではない。本当の罠はその先にある。
「撃てッ!」
再び指揮官たちの号令が飛んだ。その指示はやはり、一瞬の遅滞もなく実行された。ただし、今回、撃つものは銃ではない。弓。先端に小さな炎をまとった火矢である。
海原の火。
古くから海戦で使われてきた火炎兵器。それを人間たちはいま、この場で使ったのだ。
腕力にものをいわせて放たれた矢が亡道の怪物たちの身に当たり、導火線につけられた火が引火して海原の火が、松脂と硫黄とタール、それに、数種類の秘密の原料が混ぜ合わされた火炎兵器が爆発する。
爆発音が鳴り響き、炎が舞う。効果を高めるために塹壕の底にはあらかじめ、ありったけの油が撒かれている。その油に火がついて一斉に燃えあがる。
亡道の怪物に埋め尽くされた塹壕。その底から深紅の猛火が立ちのぼり、巨大な壁となって天に向かって舞いあがる。
その炎の壁のなかで亡道の怪物たちは焼かれていく。生も死もない不死身の怪物たち。その怪物たちであっても、すべてを浄化する炎だけは効果がある。焼き払い、殺すことができる。
噴きあがる猛火の壁があたり一面を、炎を照らした黄金の色に染めあげる。そのなかで亡道の怪物たちが炎に焼かれていく。炎のなかで踊り、苦悶のうちに灰になっていく。その姿に――。
兵士たちが歓喜の声をあげた。
味合わされた恐怖が大きく、長いものだったからこそ喜びも大きい。子どものように飛びはね、はしゃいでいる。しかし――。
亡道の怪物は恐れない。怯まない。あきらめない。炎の壁を強引に突破し、その身を焼く炎を張りつけたまま前進してくる。迫ってくる。
「長槍兵、突撃!」
「おおおっ!」
指揮官の命令に、長槍を構えた兵士たちが怒濤の叫びで応える。両手に槍を構え、亡道の怪物めがけて突進していく。その身に槍の穂先を突き立て、腕力にものをいわせて動きを封じ込む。そこへ、天命の理を付与された武器をもつ兵士が斬りかかり、両断する。
いまや、人類の伝統芸である三位一体の戦法。それは、この戦いでも存分に効果を発揮した。その基本を徹底することで、炎の壁を越えてきた怪物たちを一体いったい始末していく。
だが、もちろん、亡道の怪物たちの数は圧倒的に多い。後からあとから越えてこられれば兵士たちの手に余ることになる。それを見越して、砦の上でプリンスが叫んだ。
「爆砕射、砲撃開始! 炎の壁の向こうを撃ちまくり、やつらの列をくずせ! 少しでも進撃の時間を遅らせるんだ!」
平等の国リンカーンの王にして、砦の総責任者。そのプリンスの号令に従い、防壁上に並んだ無数の爆砕射が一斉に火を吹いた。響く轟音。たなびく煙。その様子はまさに、地獄の火山の噴火だった。
その轟音に負けじと、プリンスは声の限りに叫ぶ。
「撃てっ! 撃って撃って撃ちまくれ! あとのことは考えるな! 撃てるだけ撃ちつづけるんだ!」
「まってよ、プリンス!」
さすがにたまりかねてセアラが叫んだ。
「そんなに撃ちつづけたら砲身が破裂しちゃう! ある程度、撃ったら休ませないと……」
セアラの発言は開発者として当然のものだったが、プリンスは取り合わなかった。
「かまわん! パンゲアの正規騎士団に爆砕射が効かないのは証明済みだ。残しておく必要はない。いまは少しでも早く亡道の怪物どもを倒し、兵士たちを温存することだ。砲身が吹っ飛ぶまで撃ちつづけろっ!」
プリンスのその苛烈な指示を受け、法主たちは人間にできうる限りの効率性と迅速さをもって砲弾を撃ちつづける。
そのなかで、セアラはくやしさに唇を噛みしめていた。
――爆砕射はパンゲアの正規騎士団には通用しない。
はっきりとそう言われたことが、開発者としてこの上ない屈辱だった。
とはいえ、爆砕射が実際に防がれたことはセアラ自身、砦の兵士たちから聞いて知っている。その事実がある以上、なにも言えない。
――見てろよ! 絶対に誰にも防げない超強力な新兵器を作ってやるからっ!
腹のなかでそう叫び、堪えるしかなかった。
戦いは――。
終わらない。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~
日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!
斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。
偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。
「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」
選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる