65 / 86
その六三
アリよ。お前の仕業か?
しおりを挟む
先日、紹介した食用ホオズキ、スウィートジュエリー。
外の袋がいい感じに黄色くなっていた実があったので収穫した。指でつまんで、ちょっと力を入れるとほとんど抵抗もなくポロリと採れる。
よろしい。
やはり、食べ頃だった。
そう思い、外側の袋をむくと――。
手遅れだった。
実には穴が開いていた。
穴が開き、内部を食い荒らされていた。そして、なかには数匹のアリ……。
残念ながら今回は、アリたちに先を越されてしまった。いやまあ、残念なのは残念だが、それはいいのだ。虫や鳥に食べられるのは承知の上でやっている。虫たちに食べられる分は自然界に対する恩返し。
それでいい。
が、問題は『アリたちが実に穴を開けたのか?』と言うこと。
ツルツルの実の表面を食い破って穴を開け、中身を食い荒らす。
アリの顎でそこまでできるのか? アリなんてしょっちゅう見るし、いままで何度もプランターのなかに巣を作られたが、実を食われたことなんて一度もないぞ。
いや、もちろん。一口にアリと言っても色々な種類がいるし、種類ごとに習性もちがえば、食べるものだってちがうわけだから一概には言えないわけだが。
それにしても、不可解ではある。なにか、他の生き物が穴を開けて、そのあとにアリたちがなかに入った……という方がやはり、考えやすいのだが。
しかし、その『他の生き物』とやらも当たらないしなあ。
『実を食い荒らす』となれば一番、怪しいのはやはり、イモムシの類。とくに、ヨトウムシ。ヨトウムシには以前、ミニトマトを食い荒らされたこともある。だから、もし、ヨトウムシが土のなかに住み着いているのなら実に穴を開けられてもおかしくない。
しかし、ヨトウムシならば、あちこちに糞を残しているはず。それに、実だけではなく葉っぱも食い荒らしているはず。そして、実の方もいくつも同じようにかじっているはず。しかし、そんな様子もない。たったひとつの実だけが食い荒らされていた。これは、ヨトウムシとは考えにくい。
となると、どうなる?
「簡単なことだよ、ワトソン君」
ホームズならそう言うだろうか。
「実に穴が開けられ、そこにいたのは数匹のアリだけ。ならば、そのアリが犯人と言うことだよ」と。
しかし、やはり、いままで一度もアリに実を食われたことなんてないのに、今回に限ってと言うのもなあ。今回はじめて、そういう習性のアリがはるばる旅してやってきたということか? それとも、スウィートジュエリーが特別、アリに好かれやすい果菜なのか? と言って、アリが茎葉に群がっているわけでもないしなあ。
ともあれ、現状では犯人は不明。そもそも、スウィートジュエリー自体、はじめての作物。どんな特徴があり、どんな生き物に食われるかもわからない。実に穴を開けた犯人がなんなのかは今後も観察をつづけないとわからないだろう。ところで――。
なんで、人間って、アリとか見つけると反射的に指で潰すんだろうね?
外の袋がいい感じに黄色くなっていた実があったので収穫した。指でつまんで、ちょっと力を入れるとほとんど抵抗もなくポロリと採れる。
よろしい。
やはり、食べ頃だった。
そう思い、外側の袋をむくと――。
手遅れだった。
実には穴が開いていた。
穴が開き、内部を食い荒らされていた。そして、なかには数匹のアリ……。
残念ながら今回は、アリたちに先を越されてしまった。いやまあ、残念なのは残念だが、それはいいのだ。虫や鳥に食べられるのは承知の上でやっている。虫たちに食べられる分は自然界に対する恩返し。
それでいい。
が、問題は『アリたちが実に穴を開けたのか?』と言うこと。
ツルツルの実の表面を食い破って穴を開け、中身を食い荒らす。
アリの顎でそこまでできるのか? アリなんてしょっちゅう見るし、いままで何度もプランターのなかに巣を作られたが、実を食われたことなんて一度もないぞ。
いや、もちろん。一口にアリと言っても色々な種類がいるし、種類ごとに習性もちがえば、食べるものだってちがうわけだから一概には言えないわけだが。
それにしても、不可解ではある。なにか、他の生き物が穴を開けて、そのあとにアリたちがなかに入った……という方がやはり、考えやすいのだが。
しかし、その『他の生き物』とやらも当たらないしなあ。
『実を食い荒らす』となれば一番、怪しいのはやはり、イモムシの類。とくに、ヨトウムシ。ヨトウムシには以前、ミニトマトを食い荒らされたこともある。だから、もし、ヨトウムシが土のなかに住み着いているのなら実に穴を開けられてもおかしくない。
しかし、ヨトウムシならば、あちこちに糞を残しているはず。それに、実だけではなく葉っぱも食い荒らしているはず。そして、実の方もいくつも同じようにかじっているはず。しかし、そんな様子もない。たったひとつの実だけが食い荒らされていた。これは、ヨトウムシとは考えにくい。
となると、どうなる?
「簡単なことだよ、ワトソン君」
ホームズならそう言うだろうか。
「実に穴が開けられ、そこにいたのは数匹のアリだけ。ならば、そのアリが犯人と言うことだよ」と。
しかし、やはり、いままで一度もアリに実を食われたことなんてないのに、今回に限ってと言うのもなあ。今回はじめて、そういう習性のアリがはるばる旅してやってきたということか? それとも、スウィートジュエリーが特別、アリに好かれやすい果菜なのか? と言って、アリが茎葉に群がっているわけでもないしなあ。
ともあれ、現状では犯人は不明。そもそも、スウィートジュエリー自体、はじめての作物。どんな特徴があり、どんな生き物に食われるかもわからない。実に穴を開けた犯人がなんなのかは今後も観察をつづけないとわからないだろう。ところで――。
なんで、人間って、アリとか見つけると反射的に指で潰すんだろうね?
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる