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第三章 魔王編

【アルフレッド視点】

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「何っ!? それは本当か!?」

 寮に帰るや否や影から急ぎの報告を受け、愕然とする。
 ヘンリーが側にいながら、アイツは何をやっているんだ! くそっ!
 恐らくヘンリーは現在、エスタ卿や国王陛下と共にベルの奪還に向けての議論を行なっているはずだ。

 アイツは魔王に目の前で喧嘩を売られたのだ。間違いなく奪還のメンバーに加わるだろう。
 しかし、ベルの奪還をヘンリーだけに任せておくのは危険だ。魔王から奪還した後、ベルに手出しをされては困るからな。

 最近のアイツはベルに近付き過ぎだ。
 そのせいで、周囲からは「美男美女カップル」やら「理想のお二人」などと下らない噂まで立ち始めている。

 更には、生徒会の役員決めに口出し、事もあろうにベルの副会長役を阻止してきた。

 ……いや、あれはヘンリーだけではなかったが。

 まさか、生徒会メンバー全員がベルを狙っているとは想像していなかっただけに、予想外の展開に頭を悩ませていたところだった。

 そんな中、ベルの連れ去り事件が発生した。
 はぁ、僕も油断していた。
 まさか学園の校門前、それも白昼堂々とベルを連れ去るとは。

 学園内はエスタ卿の強力な結界が張られている。
 恐らくその結界の外に出たタイミングを見計らい、連れ去ったのだろう。

 魔王の余裕のない行動から察するに、魔獣の増殖に魔力が追い付かなくなってきているのだろう。
 それに、こちらと交渉をするつもりがないということは、マリア嬢の『浄化』の力が発動されない限り、魔王はベルを手放さないつもりなのだろうな。

 エスタ卿やマリア嬢の話から推測するに、マリア嬢はまだ力を使いこなせていないはずだ。
 そうすると、残された道は奪還以外にないだろう。
 しかし、魔王城は魔の森にあり、魔王は魔獣の統率者だ。
 大人数で攻め込めば、たちまち魔獣と国同士の全面対立になるだろう。
 そうなると、莫大な金が掛かる上に、貴重な兵力が失われる。
 普通の感覚を持つ統率者であれば、そのような事態は避けるだろう。

 となれば、恐らく少数の精鋭部隊を組み、魔王城まで隠密に行動し、魔王や魔獣の隙を突いてベルを奪還する作戦を取ると予想される。

 ……生憎、僕は指を咥えたまま見ているだけなんて真似は出来ない性格でね。
 どんな手段を使っても奪還のメンバーに加わることにしよう。

 こう見えても僕の魔力は強く攻撃魔法は得意分野である。
 剣技は騎士や現役の猛者達にはやや劣るものの、それなりに鍛錬を積んでおり、魔獣との実戦経験もある。
 少なくとも足手纏いにはならないだろう。

 ベルに手出しをしたヤツには、きっちり制裁を加えねば。

 ベル、必ず君を連れて帰る。
 そして、ベルに手出しをした魔王には、二度と手出しなど出来ぬよう、地獄を味わって貰おう。

 さぁ、まずは義父上の説得だ。
 そして、魔王に関する情報を早急に集めよう。

 これからやるべき事を整理しながら、自室の扉を開け、義父上の執務室を目指した。
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