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第三章 魔王編

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* * *

「ベルーーッ!!」
 
 可愛らしい声と共に、バンッ! と勢い良く扉が開く。
 うわっ、びっくりした! 

「ポチ、おはよう」

 ポチはウォン! と鳴くとパタパタ尻尾を振りながら私の周りをグルグルと纏わりついてきた。

「ベル、遊ぼっ! 遊ぼっ!」

 ポチは育ち盛りなこともあり、体力もあれば好奇心も人一倍だ。
 どうやら屋敷内にいるだけでは飽きてしまうようで、私が城に来てからというもの毎日のように遊びのお誘いに来る。

「分かったわ。じゃあ、お庭でボール遊びする?」
「えー、お庭? 飽きた!」

 うーん、確かに遊び場が一定だと飽きちゃうよね。ポチの意見も分かる。
 気分転換に違う場所に連れて行ってあげたいけど……

「おいイザベル、飯が出来てるぞ……って何だ。城内が飽きて気分転換がしたいのか?」

 うわっ、今度はラウル!?
 って、いきなり近寄ってきたらから思考を読まれるし!
 大変、早く思考遮断の魔術を発動させなきゃ。

「今更思考遮断しても遅いだろうが。で、お前達は気分転換したいのか?」
「え、えーと、実はポチがお庭で遊ぶのが飽きてしまった様で」

 あ、そうだ。
 ポチの気分転換のついでに城外で探索をしたら脱出ルートが見つかるかも知れない。
 ここに来てから毎日脱出ルートを探しているんだけど中々見つからなくて困っていたのよね。
 よし、ラウルに相談してみよう。

「それに、私も常に城内にいると目新しさがなくなってきて飽きて来たところです」
 
 ラウルはふむ、と考え込む素振りを見せ、徐に口を開いた。

「面倒な奴らだな。だが、同じ風景が飽きる気持ちも分かる。仕方ない、我が城近くの森へ連れて行ってやろう」
 
 ほっ、一先ず城外へ出れそうね。

「ありがとうございます、ラウル」
「やったー!!」

 ポチは嬉しそうにウォン! と鳴きながらクルクルとその場を回っている。
 モフモフが元気に動いている様子は可愛い。ああ、癒されるわ。

「ポチはすぐ腹を空かせるから今食堂に用意してある飯を弁当にして持っていくか。今使用人に頼んでくるから、それまでに支度をしておけ」

 ラウルはそう言い残し部屋を後にした。
 さて、森へ行くならドレスじゃなくて軽装にしなきゃ。
 
「ポチ、動きやすい服に着替えるから待っててね」
「分かった!」

 ポチは尻尾をブンブン振りながら私の部屋を出て行った。
 さてと、準備しなきゃ。
 クローゼットを開け町娘風のワンピースを手に取ると側で控えていた侍女に着替えを手伝って貰う。
 うん、これならコルセットも締めなくていいし動き易いわね。

「イザベル、弁当の準備が出来たぞ。支度は終わったか」
「あ、はい! 今出ます」

 扉を開けると、銀髪を一括りにしていつもよりラフな格好のラウルがポチを抱き抱えて立っている。
 へぇ、意外。いつもの魔王っぽい黒シャツ姿より若く見えるわね。

「なんだ? イザベルはこの格好の方が好みか」
「そ、そんな事、一言も言ってません!」
「ほう。その割には暫く我を見つめていたが?」
「見つめていません!」
「可愛い気のない奴だな、素直に認めればいいものを。さ、そろそろ出るか」

 もう! さっきからラウルの俺様キャラに振り回されっぱなしだわ。
 思わずため息を吐きながらラウルの後へ続いた。
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