子持ち主婦がメイドイビリ好きの悪役令嬢に転生して育児スキルをフル活用したら、乙女ゲームの世界が変わりました

あさひな

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第三章 魔王編

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 あの方々は……創造神様だったのね。
 マリア様はしばらくその場に立ちすくみ、しばらくするとハッと辺りを見渡し、私がいることを確認するとパッと手を握って来た。

「イ、イザベル様……! 私、今、創造神様にお会いしました!」

 あ! もしや私と同じ場面を見ていたの!?

「そうか、巫女もか。……イザベル、お前もあの場にいたのだろう?」

 え、ラウルまで!? そうか、あれは私達の魂が創造神様と同調して起きた現象だったのね!

「はい、私もいました」
「そうか。お前達は奇跡を起こしたのか……」

 マリア様はぎゅっと私に抱き付くと、キッとラウルを睨み付ける。

「魔王様、これでもうイザベル様を拘束する必要はありませんよね! イザベル様を返していただきます!」

 ラウルはふう、と息を吐いた。

「確かに我の使命がなくなった故、その必要はないな。……だが」

『だが』?

「我はイザベルが気に入っているのでな。これからは違う形でお前と関わるとしよう。それに、ポチもお前に会えないのは寂しいようだぞ」

 ふっとラウルの足元を見ると、ポチがダラリと尻尾を垂らしながら私を見つめている。
 小さいながらも持ち合わせていた鋭い牙や爪はなくなり、完全に子犬化していた。

「イザベル、いなくなっちゃう? もう僕と遊んでくれない?」
「ポチ! ああ、無事だったのね!!」

 マリア様の腕から離れてポチの元へ駆け寄ろうとすると、グイッと腕を引き寄せられた。

「きゃっ!」

 ポスッと背中に温かい物が触れ、慌てて振り向くとボロボロの騎士服が眼に入った。

「私を置いてどこへ行くつもりだい?」
「ヘンリー殿下!!」

 ヘンリー殿下の腕は私をぎゅっと私を包み込む。

「魔王よ、イザベル嬢は返してもらうぞ」

 ヘンリー殿下の言葉に賛同するように、リュカ先生もラウルに向かって話し掛けた。

「魔王君、僕も確かに創始者様達の集うあの場を見た。もう僕達の使命はなくなったのだからイザベル君は必要ないだろう」

 ラウルはふん、と鼻を鳴らし、つまらなそうな顔をすると私に話し掛けてきた。

「イザベルよ、お前はどうしたい」

 私の心は決まっている。だからそれを伝えればいいだけ。
 でも、人と魔獣の垣根がなくなったにも関わらず、ラウルやポチと会えなくなるのは寂しい。

「私は……」

 そうだ。皆が仲良く暮らすために、私から提案をしてみよう。

「私は、皆と共に国に帰りたいです。でも、ラウルやポチ達との交流も残したいと思っています」
「イザベル嬢……」

 動揺するヘンリー殿下の声に、思わず後ろを見上げると、ヘンリー殿下は不安そうな表情で私を見つめている。
 ヘンリー殿下、大丈夫だよ。
 そんな思いをこめてヘンリー殿下の腕をかるく握りラウルの方を向く。

「魔素がなくなり、魔獣は人を襲わなくなるでしょう。しかし、敵対し合っていた者同士が受け入れ合うにはそれなりの時間が掛かるはずです」

 ラウルは、うむ、と頷いた。

「私は、お互いを受け入れ合うには交流をしていくことが大事だと思うのです。そこで、魔獣達の統率者であったラウルに、魔獣と人との掛橋になっていただきたいのです。時間をかけて交流していくことで、魔獣と人との隔たりも次第に薄れていくと思うのですが……」

 自分のふわっとした発言に自信がなくなり、チラッとヘンリー殿下を見ると、視線に気付いたヘンリー殿下はふっと優しく微笑む。

「イザベル嬢らしい意見だな。私はイザベル嬢の意見に賛成だが、魔王、いや、ラウルはどうだ」

 ラウルはやれやれといった様子で口を開いた。

「我もいきなり人間界に戻るのは落ち着かんし、魔獣達も混乱するかも知れん。イザベルの言う通り、段階を踏んで交流をして行くのが望ましいな」

 良かった、私の意見を聞き入れてもらえた。
 ほっと胸を撫で下ろしていると、ヘンリー殿下は「私はラウルに話がある。皆のところで待っていてくれ」と耳打ちをして来た。
 そして、私を一旦生徒会メンバー達のところまで連れて行くと、自身は身を翻しラウルのところへ向かって行った。

「ベル! 無事で良かった!」
「イザベル嬢」
「お姉様ぁ!!」
「イザベル様!」
「皆様、ご心配をお掛けしました」

 皆の歓迎を受けながら、ヘンリー殿下の方をちらりと見ると、ヘンリー殿下はラウルの前まで行くとスッと手を差し出した。

「ラウル、新世界を築く上で其方の力を借りたい。今後は隣国も交えて交流を深めて行こうではないか」

 ラウルはニヤリと笑いながらその手をガシッと掴んだ。

「ふん。貴様のことは気に食わんが、イザベルやポチ達のためだ。力になろう」

 そんな二人の様子を見ていたリュカ先生がうんうんと頷きながら口を開いた。

「国を挙げて交流して行けば、徐々に魔獣と人との隔たりがなくなって行くだろうね。……しっかし、闇魔法が使えなくなっちゃったのは残念だなぁ。破壊魔法は僕のお気に入りだったのにぃ」

 その言葉にヘンリー殿下とラウルはげんなりした様子で口を挟んだ。

「エスタ卿……」
「此奴が魔王になっていたら、人間は滅んでいたかも知れんな……」
「えー? 何だか心外な反応だなぁ。さ! そうと決まれば僕達は一旦国へ帰ろうよ!」

 ヘンリー殿下はこくりと頷いた。

「そうだな。ラウル、落ち着き次第こちらから改めて伺おう」
「ああ、その時は歓迎してやる」
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