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第三章 魔王編
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「んぶっ!」
「その威勢の良さ、気に入った」
「んぶふっ!!」
「我は抵抗する者程服従させたくなる性分でな。イザベル、お前を我の虜にさせてみせよう」
ラウルは顔の潰れた私の顔を見ながらふっと鼻で笑った。
「公爵令嬢もこうやって潰れた顔をすると、そこら辺の小娘と大して変わらんな」
私はラウルの手を引っ剥がすと、キッと睨み付けた。
「ぶっ、はぁ! 淑女の顔になんて事をっ!」
「お前みたいなじゃじゃ馬が淑女だと? はっ、笑わせる」
「じゃ、じゃじゃ馬ですって!? 失礼な!」
「お前みたいな女をじゃじゃ馬と表現して何が悪い。それより、話は終わったことだし、さっさと思考遮断の魔術を教えるぞ。一度しか教えんから死ぬ気で覚えろ」
はぁ!? 初めて習うのに、たったの一度だけで覚えろですって!?
そんなの無理よ!
「初めから出来ぬと思っていたら覚えられんぞ。我もイザベルの思考が煩くて敵わんから、一発でマスターせよ」
ラウルはスッとその場に立ち上がるとその場で魔術を教え始めた。
「イザベルはただでさえ脆弱な魔力なのだ、まずは魔力の流れに集中しろ。目を閉じ、鼓動を意識していれば己の中に眠る熱を感じるはずだ。その熱がお前の持つ魔力だ」
その教え方……! リュカ先生も同じ事を言っていたわ。
「リュカ・エスタも闇の魔力の保持者ゆえ、発動方も似通っているのだろうな。あの男も思考遮断の魔術くらい教えてやれば良かろうに、全く面倒事を増やしおって。さ、話を戻すぞ」
「は、はい」
「熱を感じたら、それを己の身体に纏う様なイメージを持て。そして、己の意識を外部と遮断するように、熱の層を作るのだ」
熱……これね。これを全身に広げて、外から守るようなイメージ……
「ほう、初めてにしては筋が良い。だが、層がまだ薄い、もうニ、三重に纏うイメージを持て」
え、もう熱を出し切ってしまったのだけど。
「意識をすればまだ奥に熱があるだろう。それを引っ張り出して纏え」
熱、熱……あ、これか。これを、更に纏う……。
「それで完成だ。我が言ったとおり、出来ただろう?」
「は、はい」
凄い、たった一度教えて貰っただけで……
「この部屋程度の距離にいると、お前の思考が勝手に入ってくる。我に思考を読まれたく無ければ、この距離に我がいる時は思考遮断の魔術を使え」
「はい」
「よし、よく出来たな」
ラウルはふっと柔らかい笑みを浮かべると、冷たくて大きい手でそっと私の頭を撫でた。
ちょっ! 私は子供じゃないのに!!
「思考が読めずとも、イザベルはすぐ顔に出るから分かりやすいな。では、我は一旦自室に戻る。食事の用意が出来たら呼ぶから、お前も自室に戻れ」
くっ、いちいち癪に障る奴ね!
私はラウルをキッと睨み付けたが、ラウルはそんな事などお構いなしにさっさと部屋を出て行ってしまった。
すると入れ違うように先程の侍女が入ってきて私に向かって話しかけた。
「イザベル様、食事の支度が終わるまで自室で待機するよう指示が出ております。お部屋で温かいお茶を用意致しますので、まずは私と共に参りましょう」
「は、はい」
私は席を立ち、侍女の後について行くことにした。
「その威勢の良さ、気に入った」
「んぶふっ!!」
「我は抵抗する者程服従させたくなる性分でな。イザベル、お前を我の虜にさせてみせよう」
ラウルは顔の潰れた私の顔を見ながらふっと鼻で笑った。
「公爵令嬢もこうやって潰れた顔をすると、そこら辺の小娘と大して変わらんな」
私はラウルの手を引っ剥がすと、キッと睨み付けた。
「ぶっ、はぁ! 淑女の顔になんて事をっ!」
「お前みたいなじゃじゃ馬が淑女だと? はっ、笑わせる」
「じゃ、じゃじゃ馬ですって!? 失礼な!」
「お前みたいな女をじゃじゃ馬と表現して何が悪い。それより、話は終わったことだし、さっさと思考遮断の魔術を教えるぞ。一度しか教えんから死ぬ気で覚えろ」
はぁ!? 初めて習うのに、たったの一度だけで覚えろですって!?
そんなの無理よ!
「初めから出来ぬと思っていたら覚えられんぞ。我もイザベルの思考が煩くて敵わんから、一発でマスターせよ」
ラウルはスッとその場に立ち上がるとその場で魔術を教え始めた。
「イザベルはただでさえ脆弱な魔力なのだ、まずは魔力の流れに集中しろ。目を閉じ、鼓動を意識していれば己の中に眠る熱を感じるはずだ。その熱がお前の持つ魔力だ」
その教え方……! リュカ先生も同じ事を言っていたわ。
「リュカ・エスタも闇の魔力の保持者ゆえ、発動方も似通っているのだろうな。あの男も思考遮断の魔術くらい教えてやれば良かろうに、全く面倒事を増やしおって。さ、話を戻すぞ」
「は、はい」
「熱を感じたら、それを己の身体に纏う様なイメージを持て。そして、己の意識を外部と遮断するように、熱の層を作るのだ」
熱……これね。これを全身に広げて、外から守るようなイメージ……
「ほう、初めてにしては筋が良い。だが、層がまだ薄い、もうニ、三重に纏うイメージを持て」
え、もう熱を出し切ってしまったのだけど。
「意識をすればまだ奥に熱があるだろう。それを引っ張り出して纏え」
熱、熱……あ、これか。これを、更に纏う……。
「それで完成だ。我が言ったとおり、出来ただろう?」
「は、はい」
凄い、たった一度教えて貰っただけで……
「この部屋程度の距離にいると、お前の思考が勝手に入ってくる。我に思考を読まれたく無ければ、この距離に我がいる時は思考遮断の魔術を使え」
「はい」
「よし、よく出来たな」
ラウルはふっと柔らかい笑みを浮かべると、冷たくて大きい手でそっと私の頭を撫でた。
ちょっ! 私は子供じゃないのに!!
「思考が読めずとも、イザベルはすぐ顔に出るから分かりやすいな。では、我は一旦自室に戻る。食事の用意が出来たら呼ぶから、お前も自室に戻れ」
くっ、いちいち癪に障る奴ね!
私はラウルをキッと睨み付けたが、ラウルはそんな事などお構いなしにさっさと部屋を出て行ってしまった。
すると入れ違うように先程の侍女が入ってきて私に向かって話しかけた。
「イザベル様、食事の支度が終わるまで自室で待機するよう指示が出ております。お部屋で温かいお茶を用意致しますので、まずは私と共に参りましょう」
「は、はい」
私は席を立ち、侍女の後について行くことにした。
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