55 / 55
第四章 新世界編
【ジネット視点】違和感
☆ ☆ ☆
私はジネットという名前らしい。
何故疑問形なのかと言われれば、つい先日まで別名だったから。
異世界転生なんてラノベの世界の話なのかと思ったけど、まさか我が身に降りかかるなんて想像も付かなかった。
前世の私は出来のいい姉といつも比べられて、肩身の狭い想いをしてきた。
容姿、勉強、友人関係、どれを取っても姉が常に上で、平凡な私は姉に勝てないと早々に悟った。
そんな姉に期待が寄せられるのは自然なことで、両親も漏れなく姉を優遇した。
両親から与えられる物は全て姉のもので、出来の悪い私は姉のお下がりを消費するだけの存在。
両親から愛される姉を後目に、ひたすら存在を消して目立たないよう生きてきた。
そんな肩身の狭い環境から逃れるために、就職先は都会の会社を選んだ。
器量の悪い私に選べる就職先など限られていたけど、その中でも給与の良い会社を選んだ。
業務量が多いので当然のように残業を強いられる職場だったけど、いない子として扱われてきた家庭環境よりよっぽど良かった。
そんな私の癒しだったもの……それが、乙女ゲームや異世界転生物のコンテンツだった。
乙女ゲームも異世界転生物も、主人公が活躍したりちやほやされる設定のものが多い。
両親からお荷物扱いされ、オンリーワンになることも出来ない私には、疑似的にそれらを体験することで一時的に辛い体験や環境から逃避することが出来た。
身体は寝れば疲れが取れるけど、精神的な疲れはそうはいかない。
休日になると癒し養分を摂取するために、せっせと書店、コミケ、ネットサーフィン等でコンテンツ漁りをするルーティンが確立されていた。
そんなある休日、いつものように養分摂取のためアニメイトに立ち寄った帰り道でラノベを読みながら歩いていた。
これは完全に私が悪いのだが、帰り道はあまり車通りもないため、つい買ったラノベが気になりを歩きながら読んでしまったのだ。
そして、内容に夢中になってしまい注意散漫になり、気付いた時には激しいクラクションと強い車のライトが目の前にあった。
――そして目を覚ますと、ジネットという女性になっていた。
このジネット、とても地味な容姿だが見覚えがある。
私が前世でやっていた乙女ゲームのモブキャラにこんな地味目なキャラがいたのを思い出したのだ。
そこでようやく自身が異世界転生をしたことに気付いた。
ジネットは下流貴族の一人娘として育ったようだ。
ただ、ジネットは前世の私のように、あまり器量も良くなかったこともあり、心配した両親はより良い教育と人脈作りのために隣国に留学をさせることを決めたようだ。
その留学先は――乙女ゲームの舞台である学園だ。事前に確認したパンフレットを見た時にそう確信した。
この乙女ゲームは人気があり、二部構成で終わっていた記憶がある。
確か一部では一年生の進級時に悪役令嬢を婚約破棄してヒロインと結ばれるところで話が終わったはずだが、ファンの根強い声で二年生の卒業編が配信されたのだ。
昔やったゲームだし細かい内容は抜けてしまっているのだけど、確かジネットは卒業編の途中で出て来るクラスメイトの一人だったと記憶している。
モブに転生したのは残念だったけど、大好きな乙女ゲームのコンテンツに転生出来たことは素直に嬉しい。
モブの私がこの物語に関与できることはあまりないと思うけど、せめてリスペクトを込めてキャラ達の動向を間近で見て、出来れば多くのイベントスチルをこの胸に焼き付けておきたい。
ああ、どのルートで物語が進むのかしら。今からわくわくする!
そして、コンテンツから得られる養分を摂取した後は、両親の期待通りに学園を卒業して隣国へ戻るのよ。
――そう思っていたのに。何なの、この世界は。
教室に入った途端に違和感に気付いたのだけど、婚約破棄された悪役令嬢が攻略対象者のキラキラ王子の隣の席とかおかしくない?
それに、ヒロインと攻略対象者が悪役令嬢と仲良くしている……だと?
確か二部では婚約破棄された悪役令嬢は逆恨みでヒロイン虐めが激しくなっていくストーリーだったはずなのに、一体どういうことなの!?
それに、配られた教本にはギフトという文字。でも書かれている内容は魔法と一緒だわ。
確かこのゲームは魔法が出て来る世界感だったはずなのに、その魔法が出てこないなんて……。
おかしい、この世界は私の知っている乙女ゲームじゃないわ。
もしかして……何かのバグ?
これは原因を探る必要がありそうね。
はぁとため息を吐き、椅子にもたれ掛かる。
寮に戻ってから備え付けの机でしばらく考え込んでいたので、少し身体が硬くなっているようだ。
んーー、と腕を伸ばして背伸びをしながら寮の壁に立てかけてある時計に目をやるとちょうど夕食の時間にさしかかっている。
もうこんな時間か。お腹も空いてきたし、ごはんを食べたら明日からの行動を考えないと。
机の上のメモ書きを無造作に引き出しにしまうと、食堂を目指すことにした。
☆ ☆ ☆
私はジネットという名前らしい。
何故疑問形なのかと言われれば、つい先日まで別名だったから。
異世界転生なんてラノベの世界の話なのかと思ったけど、まさか我が身に降りかかるなんて想像も付かなかった。
前世の私は出来のいい姉といつも比べられて、肩身の狭い想いをしてきた。
容姿、勉強、友人関係、どれを取っても姉が常に上で、平凡な私は姉に勝てないと早々に悟った。
そんな姉に期待が寄せられるのは自然なことで、両親も漏れなく姉を優遇した。
両親から与えられる物は全て姉のもので、出来の悪い私は姉のお下がりを消費するだけの存在。
両親から愛される姉を後目に、ひたすら存在を消して目立たないよう生きてきた。
そんな肩身の狭い環境から逃れるために、就職先は都会の会社を選んだ。
器量の悪い私に選べる就職先など限られていたけど、その中でも給与の良い会社を選んだ。
業務量が多いので当然のように残業を強いられる職場だったけど、いない子として扱われてきた家庭環境よりよっぽど良かった。
そんな私の癒しだったもの……それが、乙女ゲームや異世界転生物のコンテンツだった。
乙女ゲームも異世界転生物も、主人公が活躍したりちやほやされる設定のものが多い。
両親からお荷物扱いされ、オンリーワンになることも出来ない私には、疑似的にそれらを体験することで一時的に辛い体験や環境から逃避することが出来た。
身体は寝れば疲れが取れるけど、精神的な疲れはそうはいかない。
休日になると癒し養分を摂取するために、せっせと書店、コミケ、ネットサーフィン等でコンテンツ漁りをするルーティンが確立されていた。
そんなある休日、いつものように養分摂取のためアニメイトに立ち寄った帰り道でラノベを読みながら歩いていた。
これは完全に私が悪いのだが、帰り道はあまり車通りもないため、つい買ったラノベが気になりを歩きながら読んでしまったのだ。
そして、内容に夢中になってしまい注意散漫になり、気付いた時には激しいクラクションと強い車のライトが目の前にあった。
――そして目を覚ますと、ジネットという女性になっていた。
このジネット、とても地味な容姿だが見覚えがある。
私が前世でやっていた乙女ゲームのモブキャラにこんな地味目なキャラがいたのを思い出したのだ。
そこでようやく自身が異世界転生をしたことに気付いた。
ジネットは下流貴族の一人娘として育ったようだ。
ただ、ジネットは前世の私のように、あまり器量も良くなかったこともあり、心配した両親はより良い教育と人脈作りのために隣国に留学をさせることを決めたようだ。
その留学先は――乙女ゲームの舞台である学園だ。事前に確認したパンフレットを見た時にそう確信した。
この乙女ゲームは人気があり、二部構成で終わっていた記憶がある。
確か一部では一年生の進級時に悪役令嬢を婚約破棄してヒロインと結ばれるところで話が終わったはずだが、ファンの根強い声で二年生の卒業編が配信されたのだ。
昔やったゲームだし細かい内容は抜けてしまっているのだけど、確かジネットは卒業編の途中で出て来るクラスメイトの一人だったと記憶している。
モブに転生したのは残念だったけど、大好きな乙女ゲームのコンテンツに転生出来たことは素直に嬉しい。
モブの私がこの物語に関与できることはあまりないと思うけど、せめてリスペクトを込めてキャラ達の動向を間近で見て、出来れば多くのイベントスチルをこの胸に焼き付けておきたい。
ああ、どのルートで物語が進むのかしら。今からわくわくする!
そして、コンテンツから得られる養分を摂取した後は、両親の期待通りに学園を卒業して隣国へ戻るのよ。
――そう思っていたのに。何なの、この世界は。
教室に入った途端に違和感に気付いたのだけど、婚約破棄された悪役令嬢が攻略対象者のキラキラ王子の隣の席とかおかしくない?
それに、ヒロインと攻略対象者が悪役令嬢と仲良くしている……だと?
確か二部では婚約破棄された悪役令嬢は逆恨みでヒロイン虐めが激しくなっていくストーリーだったはずなのに、一体どういうことなの!?
それに、配られた教本にはギフトという文字。でも書かれている内容は魔法と一緒だわ。
確かこのゲームは魔法が出て来る世界感だったはずなのに、その魔法が出てこないなんて……。
おかしい、この世界は私の知っている乙女ゲームじゃないわ。
もしかして……何かのバグ?
これは原因を探る必要がありそうね。
はぁとため息を吐き、椅子にもたれ掛かる。
寮に戻ってから備え付けの机でしばらく考え込んでいたので、少し身体が硬くなっているようだ。
んーー、と腕を伸ばして背伸びをしながら寮の壁に立てかけてある時計に目をやるとちょうど夕食の時間にさしかかっている。
もうこんな時間か。お腹も空いてきたし、ごはんを食べたら明日からの行動を考えないと。
机の上のメモ書きを無造作に引き出しにしまうと、食堂を目指すことにした。
☆ ☆ ☆
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(69件)
あなたにおすすめの小説
よかった、わたくしは貴女みたいに美人じゃなくて
碧井 汐桜香
ファンタジー
美しくないが優秀な第一王子妃に嫌味ばかり言う国王。
美しい王妃と王子たちが守るものの、国の最高権力者だから咎めることはできない。
第二王子が美しい妃を嫁に迎えると、国王は第二王子妃を娘のように甘やかし、第二王子妃は第一王子妃を蔑むのだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
書籍化おめでとうございます✨
※以前の感想から約二年(^_^;)
エールを贈らせていただきます٩(♡ε♡ )۶
高校生の母様
ふぁぁぁ!?コメントいただきましてありがとうございます!
書籍化に伴い大幅な改稿があり続編を出すタイミングが取れずに申し訳ない気持ちでいっぱいです(´;ω;`)
書籍に関してはまだ具体的な日付は公開できないのですが、今年にはいいお知らせが出来ると思います!
今絶賛改稿の締め切りに追われていますが、応援凄く嬉しかったです!このまま書籍化作業を頑張ります!
もうひとつの掲載サイトから参りました。
更新楽しみにいたしております!!
nihcru様
ふぁぁぁ!なろうから来て下さったのですか!?
ありがとうございます!嬉しいですぅぅ(´;ω;`)
111話イザベルちゃん復活‼️せっかくのお話なので待ち遠しいのですが、作者様が納得できる仕上がりを楽しみにしています(゚∀゚*)(*゚∀゚)ワクワク☺️。
太真様
明けましておめでとうございます!
そしていつもご感想下さりありがとうございます!!(≧∇≦)感激しながら読んでいます.°(ಗдಗ。)°.
太真様はお正月ゆっくり過ごせましたでしょうか?
さて、こちらの物語ですが、今後加筆修正が加わる可能性があるので話の続きをどう公開するか検討中となっています。
もし、加筆修正予定がなくなれば続話を投下しますが、その結果については少し先になりそうで……😭
作者としては早く作品を綺麗な形で纏め上げたいなぁと思っていますが、暫く歯切れの悪い状態が続く予定です。
太真様を始め、読者の皆様にはより良いクオリティの作品をお届け出来るよう、これからも執筆活動を続けていきますので、今後の動向を含めて見守っていただけると嬉しいですm(_ _)m
どうぞよろしくお願い致します(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)