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ピンク髪のヒロインは告白する
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花が咲き誇る午後の庭園は、まるで絵画のようだった。
リリアーナが「ぜひ行きたいんです!」と声を上げ、フェリクスが「面白そうだ」と笑って賛成したことで、今日のピクニックが決まった。
敷物を広げ、籠から手作りのお弁当を取り出し、紅茶を淹れて――ああ、なるほど。これは確かに平和という名にふさわしい一日だった。
フェリクスは今、遠くの林で野草を見つけたらしく、「薬草かもしれない」と夢中で調べている。相変わらず、こういうときは子どもみたいに落ち着きがない。
リリアーナとわたくしは並んで座り、少し早い午後の風に吹かれていた。
彼女はスカートの裾を握ったまま、何かを迷っているように俯いている。珍しいことに、お喋りも、笑い声もなかった。
「……どうかなさいましたの?」
尋ねると、リリアーナはびくりと肩を揺らし、それから意を決したように顔を上げた。
「エレノア様。あの、もし……わたしが、とんでもなく変なことを言っても、怒らないでいてもらえますか?」
「内容次第ですわね」
そう返すと、彼女はかすかに笑い、そして、ぽつりぽつりと語り出した。
「実は、わたし……本当はここにいてはいけない人間なんです」
「は?」
突拍子もない告白に、思わず眉をひそめる。
「その……本当なら、わたしは学園中から嫌われて、追放されて、挙げ句の果てには娼館送りになって惨めに野垂れ死ぬ運命だったんです」
真剣な表情でそんなことを言い出すので、思わず言葉を失ってしまった。
「嫌われて、追放……娼館送り?あなた、それ、一体どこで仕入れてきた三流小説ですの?」
つい呆れてしまい、口調がきつくなった。するとリリアーナはますます眉尻を下げ、瞳に涙を溜めながら震える唇で続けた。
「いえ、本当にそうなるはずだったんです。わたしは……その、運命で決められた『嫌われヒロイン』なんです」
春風が止まったように感じた。
わたくしは、返す言葉を探すでもなく、ただ彼女を見つめていた。
「でも、今こうして、エレノア様とフェリクス様と一緒にいて……毎日が、あんまり楽しくて。だから怖くなるんです。こんなはずじゃなかったのに、って。誰かに罰を受けるんじゃないかって」
その声には、いつもの明るさも、誇らしげな調子もなかった。ただまっすぐな不安と、滲んだような本音があった。
思わずため息が漏れる。
「何ですか、その悲劇的で陰鬱な設定は。全然つまらないわ。よくもまあ、そんなくだらない筋書きを考えついたものですわね。発想が安直すぎます」
リリアーナは驚いた顔でこちらを見ていた。
「……でも、それが本当に運命だったら?」
彼女の声は震えている。おそらく、本気で自分のことをそう信じ込んでいるのだろう。
わたくしはゆっくりと立ち上がり、胸元で結んでいた細い紫のリボンをほどく。敢えてため息をついてから、しっかりと彼女の瞳を見据えて告げた。
「なら、その運命とやらは間違っています。あなたはそんな場所に行くべきではないし、誰かに蔑まれるような存在でもありません。好きなものを好きと言って、笑って、生きているだけ。それがどうして罰せられるのか、わたくしには理解できません。もし誰かがそれを非難するなら――」
手にしたリボンを差し出す。彼女のピンクの髪に似合うと思った、それだけの理由だ。
「――わたくしが許しません!あなたはわたくしの友達なのだから。これはその印です。わたくしの一番好きな色、受け取ってくださるかしら?」
リリアーナは手で口元を覆い、次の瞬間、大粒の涙を零し始めた。
「……わたし、わたし……!」
ああ、また面倒な方向に捉えて泣いているのだわ、この子は。でも――いい。今日は、そういう日でいい。
「ああもう、泣くほどのことでもないでしょうに。あなたはいつも元気で明るく、多少抜けているくらいで丁度良いんですから」
わたくしは苦笑しつつ、彼女の涙をハンカチで拭ってやった。
リリアーナは声を詰まらせ、そして、泣き笑いのような表情でわたくしを見上げた。
「エレノア様、わたし、あなたにお会いできて本当に良かったです」
「ええ、わたくしもですよ。あなたが転校してきてから、毎日が楽しくて仕方ありません」
そのとき、背後から呆れたような声が聞こえてきた。
「おやおや?エレノアが、リリアーナを泣かせているのかな」
振り向くと、フェリクスが手に葉っぱを持ったまま立っていた。
「人聞きの悪いことをおっしゃらないでくださいまし。わたくしは、ただ友情を示しただけですわ」
「そうなんだ。でも僕には、あの子を泣かせたようにしか見えなかったよ」
わたくしは肩をすくめ、微笑んだ。
「……人の心に触れるというのは、案外涙腺に響くものなのかもしれませんわね」
フェリクスはその言葉に笑いながら、手を差し出してきた。
「じゃあ、僕もそろそろ友情の葉っぱをあげようかな」
「結構ですわ、その葉っぱ。だって、虫がついていますもの」
「え、ほんと!?」
彼が慌てて手を離すのを見て、わたくしは思わず吹き出してしまった。
リリアーナは涙を拭きながら笑っていて、その笑顔は、花のように柔らかく、まっすぐだった。
まったく。泣いたり笑ったり忙しい子ですこと。けれどわたくしは、そんな彼女を見て、心からこう思うのです。
これからも、あなたらしく生きなさい。あなたがどんな失敗をしても、どんなに周囲から奇妙がられても、わたくしはあなたを見捨てたりはしませんわ。
この友情は、誰かに否定される必要もない、わたくしの大切な宝物なのだから。
リリアーナが「ぜひ行きたいんです!」と声を上げ、フェリクスが「面白そうだ」と笑って賛成したことで、今日のピクニックが決まった。
敷物を広げ、籠から手作りのお弁当を取り出し、紅茶を淹れて――ああ、なるほど。これは確かに平和という名にふさわしい一日だった。
フェリクスは今、遠くの林で野草を見つけたらしく、「薬草かもしれない」と夢中で調べている。相変わらず、こういうときは子どもみたいに落ち着きがない。
リリアーナとわたくしは並んで座り、少し早い午後の風に吹かれていた。
彼女はスカートの裾を握ったまま、何かを迷っているように俯いている。珍しいことに、お喋りも、笑い声もなかった。
「……どうかなさいましたの?」
尋ねると、リリアーナはびくりと肩を揺らし、それから意を決したように顔を上げた。
「エレノア様。あの、もし……わたしが、とんでもなく変なことを言っても、怒らないでいてもらえますか?」
「内容次第ですわね」
そう返すと、彼女はかすかに笑い、そして、ぽつりぽつりと語り出した。
「実は、わたし……本当はここにいてはいけない人間なんです」
「は?」
突拍子もない告白に、思わず眉をひそめる。
「その……本当なら、わたしは学園中から嫌われて、追放されて、挙げ句の果てには娼館送りになって惨めに野垂れ死ぬ運命だったんです」
真剣な表情でそんなことを言い出すので、思わず言葉を失ってしまった。
「嫌われて、追放……娼館送り?あなた、それ、一体どこで仕入れてきた三流小説ですの?」
つい呆れてしまい、口調がきつくなった。するとリリアーナはますます眉尻を下げ、瞳に涙を溜めながら震える唇で続けた。
「いえ、本当にそうなるはずだったんです。わたしは……その、運命で決められた『嫌われヒロイン』なんです」
春風が止まったように感じた。
わたくしは、返す言葉を探すでもなく、ただ彼女を見つめていた。
「でも、今こうして、エレノア様とフェリクス様と一緒にいて……毎日が、あんまり楽しくて。だから怖くなるんです。こんなはずじゃなかったのに、って。誰かに罰を受けるんじゃないかって」
その声には、いつもの明るさも、誇らしげな調子もなかった。ただまっすぐな不安と、滲んだような本音があった。
思わずため息が漏れる。
「何ですか、その悲劇的で陰鬱な設定は。全然つまらないわ。よくもまあ、そんなくだらない筋書きを考えついたものですわね。発想が安直すぎます」
リリアーナは驚いた顔でこちらを見ていた。
「……でも、それが本当に運命だったら?」
彼女の声は震えている。おそらく、本気で自分のことをそう信じ込んでいるのだろう。
わたくしはゆっくりと立ち上がり、胸元で結んでいた細い紫のリボンをほどく。敢えてため息をついてから、しっかりと彼女の瞳を見据えて告げた。
「なら、その運命とやらは間違っています。あなたはそんな場所に行くべきではないし、誰かに蔑まれるような存在でもありません。好きなものを好きと言って、笑って、生きているだけ。それがどうして罰せられるのか、わたくしには理解できません。もし誰かがそれを非難するなら――」
手にしたリボンを差し出す。彼女のピンクの髪に似合うと思った、それだけの理由だ。
「――わたくしが許しません!あなたはわたくしの友達なのだから。これはその印です。わたくしの一番好きな色、受け取ってくださるかしら?」
リリアーナは手で口元を覆い、次の瞬間、大粒の涙を零し始めた。
「……わたし、わたし……!」
ああ、また面倒な方向に捉えて泣いているのだわ、この子は。でも――いい。今日は、そういう日でいい。
「ああもう、泣くほどのことでもないでしょうに。あなたはいつも元気で明るく、多少抜けているくらいで丁度良いんですから」
わたくしは苦笑しつつ、彼女の涙をハンカチで拭ってやった。
リリアーナは声を詰まらせ、そして、泣き笑いのような表情でわたくしを見上げた。
「エレノア様、わたし、あなたにお会いできて本当に良かったです」
「ええ、わたくしもですよ。あなたが転校してきてから、毎日が楽しくて仕方ありません」
そのとき、背後から呆れたような声が聞こえてきた。
「おやおや?エレノアが、リリアーナを泣かせているのかな」
振り向くと、フェリクスが手に葉っぱを持ったまま立っていた。
「人聞きの悪いことをおっしゃらないでくださいまし。わたくしは、ただ友情を示しただけですわ」
「そうなんだ。でも僕には、あの子を泣かせたようにしか見えなかったよ」
わたくしは肩をすくめ、微笑んだ。
「……人の心に触れるというのは、案外涙腺に響くものなのかもしれませんわね」
フェリクスはその言葉に笑いながら、手を差し出してきた。
「じゃあ、僕もそろそろ友情の葉っぱをあげようかな」
「結構ですわ、その葉っぱ。だって、虫がついていますもの」
「え、ほんと!?」
彼が慌てて手を離すのを見て、わたくしは思わず吹き出してしまった。
リリアーナは涙を拭きながら笑っていて、その笑顔は、花のように柔らかく、まっすぐだった。
まったく。泣いたり笑ったり忙しい子ですこと。けれどわたくしは、そんな彼女を見て、心からこう思うのです。
これからも、あなたらしく生きなさい。あなたがどんな失敗をしても、どんなに周囲から奇妙がられても、わたくしはあなたを見捨てたりはしませんわ。
この友情は、誰かに否定される必要もない、わたくしの大切な宝物なのだから。
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