厨二病だった高校一年生に描いた「堕天の殺戮者:キリアン・フランヴェルジュ・ブラッドレイ」が、社会人になった私の召喚に応じてくれたので

松本雀

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始まらないまま、終わりを知る

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「私は、始まらないまま、終わっている。」

毎朝、眠りの浅いまま布団を蹴り出し、洗面台の鏡に映る自分を睨みつける。寝癖も無気力な表情もそのままで、私を見返す顔には、希望の欠片も映っていない。化粧なんてしたところで、何かが変わるわけじゃない。誰が見ているわけでもないし、そもそも見て欲しいとも思わない。

会社のデスクに座れば、机の上にこれから打ち込む発注書や問い合わせ依頼票がずらりと並んでいる。何もかもがいつもと同じ、同じ、同じ。変わることのないルーティンが、ただただ繰り返されるだけ。
ある日、急に自分が消えたところで、誰かが困ることもないし、気づかれすらしないだろう。替わりなんていくらでもいる。
事務職なんて、そんなものだ。何かに貢献する喜びも、自分の価値を感じる瞬間も、どこにもない。私がそこにいてもいなくても、歯車は変わらず回り続ける。

友達?そんなもの、もう必要だとは思わない。むしろ、その言葉を聞くだけで苛立ちが湧く。一人でいることの何が悪いの?何故、友達がいないと駄目なの?どうせ誰も私のことを知ろうとしないし、知ったところで寄り添ってくれるわけじゃない。家族ですらも、私がどんな人間か理解していないし、理解する気もない。友達なんて、きっと私が本当に求めていたものではなかったのだ。

恋愛?そんなの、夢物語に過ぎない。煌びやかなドラマや小説の中でしか存在しない「愛」や「運命」。私には縁がなかったし、これからも縁があるはずもない。誰も私を必要としないし、私も誰かを必要とする自分が想像できない。だから、部屋に戻っても、中で待っているのは散らかった服や本と、使い古された家具だけ。そこには温もりなんて微塵もなく、ただ、埃と沈黙が居座っている。

未来?何それ。そんなものは私にはない。今あるのは、今日をどう乗り切るかだけ。人生の目的なんて考えたこともないし、考えようとすると、深い暗闇に引きずり込まれそうで恐ろしい。どこかで何かが間違っていたのかもしれない。でもそれを探る気力もないし、立ち返る場所もない。ただ虚しいだけの、何もない場所に、私は立っている。

私の人生は、始まらないまま終わって、ただ朽ちていくのだろう。ただ、ただ、ぼろぼろと崩れていくだけの、どうしようもない存在。もがく気力も、立ち直る意欲も、どこにもない。

――こうして、私は一人ぼっちで、無意味な毎日を繰り返し続ける。

生きているのか、ただ生き延びているのか、その違いすらも曖昧で、もうどうでもよくなってしまった。

そんな私が、何かを成し遂げる未来なんて、あるはずがないのだから。
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