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揺れる馬車の中で
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「これで勝ったも同然ですね!」
エリオットの声が馬車の中に弾んだ。それは普段の彼の静かな態度からは想像もつかないほど、はしゃいだものだった。目の前に座るアルフレッドも珍しく微笑みを浮かべて頷いている。
「ええ、これだけ証言が揃えば、ジュリアの嘘も通用しないでしょう。」
彼の声にも、どこか勝利を確信した響きがあった。馬車が石畳を越えるたびに小さく揺れる中、私は馬車の中央に置いたゴミ箱に軽く手を添えた。
「いいえ……まだ安心は出来ない。」
私の声に、馬車の中の空気が一瞬だけ固まる。アルフレッドとエリオットが同時に私を見つめた。その視線には明らかな戸惑いが含まれている。
「……何故ですか?」
エリオットが不思議そうに問いかける。その質問に私は軽く微笑み、ゴミ箱の蓋を押さえる手に力を込めた。
「確かに、カトリーナや他の令嬢たち、さらにはアッシュフォード夫人までもがパーティーで証言してくれる。それ自体は非常に大きな力となるでしょう。」
馬車が揺れるたびに窓から差し込む光が、エリオットの額に小さな影を落とす。彼は私の言葉を待ちながら黙っている。その静けさが、かえって彼の疑念を際立たせているようだった。
「けれど――」
私は一拍置いてから言葉を続けた。
「アッシュフォード伯爵がその証言をどう受け取るかは、また別の話でしょうね。」
「別の話、ですか?」
アルフレッドが低く呟く。その声には明らかに困惑が滲んでいる。
「ええ。」
私は頷きながら、視線を窓の外へ向けた。並木道が流れるように後ろへと消えていく。
「例えば、夫人や令嬢たちがどれだけ真実を語ってくれたとしても、伯爵がそれを“私の圧力”や“女の嫉妬”と捉えたらどうなると思う?」
「……嫉妬……?奥方様が言っているのに、ですか?」
エリオットが僅かに眉をひそめる。その表情には、信じられないといった思いが強い。
「そう。伯爵が、夫人や私がジュリアを陥れるために仕組んだ、と考える可能性は十分にあるの。」
私は視線をエリオットに戻し、彼の目をじっと見つめた。
「ジュリアは、必ず弱者という武器を使ってくる。」
「それは……どのようなものでしょうか?」
今度はアルフレッドが疑問を口にした。その声は低く静かだが、その中に小さな警戒心が見え隠れしている。
「家族に酷使され、逃げ込んだ奉公先の家でも虐げられた悲劇のヒロイン。逆恨みした元主人や、理解のない義理の母が自分を陥れようとしている。助けてお義父さま!私にはあなたしか頼れる人がいないの!彼女たちの言葉を信じないで!――」
私は軽く笑みを浮かべながら、ゴミ箱を指先でトントンと叩いた。
「私たちがどれだけ真実を語ろうとしても、伯爵が“女の僻み”と断言すれば、話は一蹴されるでしょうね。」
その言葉に、馬車の中が一瞬静まり返った。
「……では、どうすれば?」
エリオットの声が僅かに震えている。その不安を察しながら、私は軽く息を吐いた。
「そのために、証言だけではなく――伯爵家でのジュリアの行動や浪費といった明確な証拠を持ち込む。そして、それらを公の場で示すことで、伯爵が簡単に否定できない状況を作り出す。」
「なるほど……。」
アルフレッドが深く頷いた。その表情には、ようやく納得した様子が伺える。
「なので――まだ気を抜かないでね。戦いは、ここからが本番。」
私は軽く微笑みながら言葉を締めくくり、ゴミ箱をしっかりと支え直した。馬車がまた揺れるたびに、その微かな振動が手に伝わる。
――さあ、この一手をどう動かすか。それがすべてを決める鍵になる。
エリオットの声が馬車の中に弾んだ。それは普段の彼の静かな態度からは想像もつかないほど、はしゃいだものだった。目の前に座るアルフレッドも珍しく微笑みを浮かべて頷いている。
「ええ、これだけ証言が揃えば、ジュリアの嘘も通用しないでしょう。」
彼の声にも、どこか勝利を確信した響きがあった。馬車が石畳を越えるたびに小さく揺れる中、私は馬車の中央に置いたゴミ箱に軽く手を添えた。
「いいえ……まだ安心は出来ない。」
私の声に、馬車の中の空気が一瞬だけ固まる。アルフレッドとエリオットが同時に私を見つめた。その視線には明らかな戸惑いが含まれている。
「……何故ですか?」
エリオットが不思議そうに問いかける。その質問に私は軽く微笑み、ゴミ箱の蓋を押さえる手に力を込めた。
「確かに、カトリーナや他の令嬢たち、さらにはアッシュフォード夫人までもがパーティーで証言してくれる。それ自体は非常に大きな力となるでしょう。」
馬車が揺れるたびに窓から差し込む光が、エリオットの額に小さな影を落とす。彼は私の言葉を待ちながら黙っている。その静けさが、かえって彼の疑念を際立たせているようだった。
「けれど――」
私は一拍置いてから言葉を続けた。
「アッシュフォード伯爵がその証言をどう受け取るかは、また別の話でしょうね。」
「別の話、ですか?」
アルフレッドが低く呟く。その声には明らかに困惑が滲んでいる。
「ええ。」
私は頷きながら、視線を窓の外へ向けた。並木道が流れるように後ろへと消えていく。
「例えば、夫人や令嬢たちがどれだけ真実を語ってくれたとしても、伯爵がそれを“私の圧力”や“女の嫉妬”と捉えたらどうなると思う?」
「……嫉妬……?奥方様が言っているのに、ですか?」
エリオットが僅かに眉をひそめる。その表情には、信じられないといった思いが強い。
「そう。伯爵が、夫人や私がジュリアを陥れるために仕組んだ、と考える可能性は十分にあるの。」
私は視線をエリオットに戻し、彼の目をじっと見つめた。
「ジュリアは、必ず弱者という武器を使ってくる。」
「それは……どのようなものでしょうか?」
今度はアルフレッドが疑問を口にした。その声は低く静かだが、その中に小さな警戒心が見え隠れしている。
「家族に酷使され、逃げ込んだ奉公先の家でも虐げられた悲劇のヒロイン。逆恨みした元主人や、理解のない義理の母が自分を陥れようとしている。助けてお義父さま!私にはあなたしか頼れる人がいないの!彼女たちの言葉を信じないで!――」
私は軽く笑みを浮かべながら、ゴミ箱を指先でトントンと叩いた。
「私たちがどれだけ真実を語ろうとしても、伯爵が“女の僻み”と断言すれば、話は一蹴されるでしょうね。」
その言葉に、馬車の中が一瞬静まり返った。
「……では、どうすれば?」
エリオットの声が僅かに震えている。その不安を察しながら、私は軽く息を吐いた。
「そのために、証言だけではなく――伯爵家でのジュリアの行動や浪費といった明確な証拠を持ち込む。そして、それらを公の場で示すことで、伯爵が簡単に否定できない状況を作り出す。」
「なるほど……。」
アルフレッドが深く頷いた。その表情には、ようやく納得した様子が伺える。
「なので――まだ気を抜かないでね。戦いは、ここからが本番。」
私は軽く微笑みながら言葉を締めくくり、ゴミ箱をしっかりと支え直した。馬車がまた揺れるたびに、その微かな振動が手に伝わる。
――さあ、この一手をどう動かすか。それがすべてを決める鍵になる。
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