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第2章  二人の旅人

ⅩⅥ

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「…………」

「どうせ、何も知らないんだろ? 吸血鬼だから、少し見栄を張ってみたってか? そんなのはどうだっていいんだよ。知らないなら知らないとはっきりと言ったらどうだ? これだから、女っていう生き物は面倒臭いんだよ」

「…………」

 ラミアはイライラが募った。

 そして、その怒りは及第点きゅうだいてんを過ぎ、爆発した。

「うるさい……」

「はぁ? 何が……?」

「うるさいって言ってるのよ……」

 静かに怒りが増してくる。

 テーブルの上に置いてあったコップがカタカタと小さな音を立てて、ラミアが起き上がると、髪の毛がフワッと、宙に浮く。

 キィーン!

 耳触りがする。

 これはラミアから発せられる音だ。彼女が自発的に出しており、目がボーデンを瞬殺する勢いのある殺気を放っている。

「え? ラ、ラミア?」

 ボーデンは、その様子を見て、焦りが激しくなる。

 手をボキボキと音を鳴らし、牙を出し、瞳が赤くなる。

 一歩ずつ、前へ近づいていき、ボーデンの前まで来ると、右手拳を奮え立たせて、そのまま目の前に座っているボーデンを狙う。

「ヒィッ‼︎」

 拳は、顔の左側を擦り、突き破る。

 怖かった。今までで、彼女の怒っている表情が何よりも殺気立っていた。それは相棒あいぼうであるボーデンに対しても容赦ない怒った表情。

 女は怒らせると怖いと言うが、ラミアは別格だ。昔、エルザに怒られた時以上、本当に怖かったのだ。

「今度、変な事を言ったら、ただの擦り傷では済まないわよ。よく覚えておいて……」

 ニコッと笑ってみせる。

「は、はい……」

 ボーデンは、震え声で返事をした。

 ほおかすり傷から流れる血など、何も痛みを感じなかった。

「知ってる? 私があなたを殺さないでいる理由を? それが何なのか? よく覚えておいておきなさい……」
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