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第3章  闇の奥底

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 ボーデンは、ベットから起き、トイレを済ませ、再びベットの上に座り、バッグの中から一つの小さな書物を取り出す。古く使い果たされたものであり、ページによっては汚れがついて、小さな傷や破れた所もある。

 書物の中には、原点に振り返る最初に学んだ基礎的な魔法の原理についてだ。どこにでも置いてある書物は、ボーデンにとっては長年の相棒なのだ。

 時間が来るまで読み耽る。

 十分が過ぎ、二十分が過ぎ、三十分が過ぎて行く。チラッと時間を見ると、七時十分を過ぎていた。

「げっ、もう、こんな時間になったのかよ!」

 ボーデンは慌てて書物を閉じ、ラミアの方を振り返る。

「ラミア‼︎ 朝だ、起きろ!」

 と、叫んだが、さっきまでいたはずのラミアの姿はどこにもない。

「あ、あれ?」

 ボーデンは首をかしげる。

「何叫んでいるのよ? バカじゃないの?」

 ラミアは、丁度シャワーを浴び終えた所だった。

「あ、起きてたのね?」

 ボーデンは、さっぱりとした髪を見て、安堵した。

「それにしてもさっきまで何を読んでいたの? 私が呼び掛けても何も反応しなかったじゃない」

 ラミアは髪を整えて、服を着る。

「ああ、魔法の原理についての基本的なものだ。時間があったからな、暇つぶしに読んでいただけだ」

「ふーん。ま、私には関係ないわね」

「そう言う事だ」

 ボーデンは、荷物をまとめる。

 コンコン。

 と、ドアをノックする音が聞こえてきた。

 部屋の中にエルザが軍服姿で入ってきた。左手には、書類を持ち、眼鏡をかけている。

「おはようございます。朝食の用意が出来たので呼びに来ました」

 エルザはボーデンとラミアを見る。

「あら、今日は眼鏡を掛けているのね?」

 ラミアがエルザを見て、不思議に思った。

「あ、これは……。朝は早いですからね、コンタクトをつける時間がないんですよ」
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