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第3章  闇の奥底

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「ラミア!」

 ボーデンは立ち上がり、辺りを見渡す。

 ラミアも起き上がって、体半分横になったまま、相手の殺気を追う。

「気をつけた方がいいわよ。向こうからわざわざ仕掛けて来てくれるみたい」

「それならそれで、やりやすいってもんだ‼︎」

 ボーデンは、ポケットから自分がさっき描いた魔法陣を取り出し、呪文を唱える。

移動モタス!」

 ボーデンの体は、車内から姿を消した。

 車内に取り残されたラミアは、周りの客を見た。

 周囲におかしな所は見当たらない。

 だが、何かしらの魔法を使ったのは確かだ。ただのボーデンを呼び寄せるだけの魔法だけではないはずだ。力は良好。いつでも魔法を発動できる。

「いやいや、この私がちょっとばかり本気を出さないといけないとは……ボーデン、気を付けなさいよ。敵は思った以上にやり手よ」

 ラミアの瞳が赤くなる。



「おやおや、こんなお子様な手に乗ってくれるとは、国際魔法師であるお方がわざわざ、どちらへ行かれるのですか?」

 男は、目の前に現れたボーデンに話しかけた。

「さーな……。俺も丁度暇していた所だ。相手になってやるって言っているんだよ」

 ボーデンは、男を睨みつける。

「そうですか。十五歳にして国家魔法師、そして、同年に国際魔法師の資格まで取った神童」

「何が言いたい⁉︎」

「単なる昔話ですよ。なぜ、そこまでして若くありながら国際魔法師の資格が必要だったのか。同じ魔法使いだったらきになるものでしょ?」

「俺は気にならないね。誰がどんな物を追い求めようと、俺は俺自身の道を行くだけだ。他人の事など、構っている暇なんてない」

 ボーデンは、男の動きを見ながら慎重に話を進める。

「そうですか。でも、私は、今、ここであなたを足止めしなくてはなりません。嫌、と言われても付き合ってもらいますよ」

「だったら、俺はてめぇーを倒して、洗いざらい吐いて貰うぞ!」

 二人は戦闘態勢に入る。

「良いのですか? お連れの方を守らなくても?」

 こんな時に他の話を入れてくる。
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