吸血鬼と異世界人

ゴリラ・ゴリラ・ゴリラ

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第3章  闇の奥底

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 二人は、列車の最前列の方へ視線を向ける。

「いやいや、まぁ、別に怪我を負わせなくともこちらとしては、これさえ走行不能にすればいい話なんですけどね……。私としたことが、ずいぶん遊び過ぎてしまいました」

 声は聞こえにくいが、風によってかすかに聞こえてくる。

 男がいるのは、最前列の運転車両の上。

「ちっ、あの男、運転車両を破壊するつもりよ!」

「クソ野郎!」

 二人は同時に飛び出し、男のいる最前列を目指す。

 向かい風が強く、思ったように足が前へ進まない。

「おやおや、そこまで頑張らなくとも、もう、終わっていますよ」

 男は両手を上げると、運転車両は一刀両断に真っ二つに割れ、線路の外に出ると、そのまま爆発した。

 男は一両車両に飛び移り、不安定な状態になった列車の上で、体勢を崩す二人に言う。

「それでは、御機嫌よう。御武運を願ってますよ」

 そのまま消え去ったが、列車は運転車両が無くなったおかげで、スピードが安定しなく、今にも脱線して倒れそうだ。車内からは、乗客の悲鳴が無数に聞こえてくる。砂埃が舞い、残された車両は、一列目から左へと徐々に傾き始めた。

「まずいぞ。このままじゃ、死傷者が出ちまう」

 ボーデンは必死に屋根にしがみつき、叫んだ。

「余計な事をしてくれたわね。仕方がないわね。ボーデン、そのままの体勢で踏ん張ってて!」

 ラミアはボーデンの背中にしがみつき、ぴったりと体を重ねた。

「おい、一体何をするつもりだ⁉︎」

 あと少しで、車両が崩れる。

「助かりたかったらジッとしてて!」

 ラミアは、そのまま首筋くびすじにかぶりつく。

いてぇ‼︎  こんな時に噛み付いてんじゃねぇ!」

 ボーデンは、痛みと必死さを交互に感じながら、生死をさまよっている最中だった。

 ラミアは、ボーデンの生き血をたっぷりと吸い上げると、口を放す。

「ありがとう。これで何とかなるわ」

 ラミアはスピードが不安定な列車から飛び降り、地面を削りながら着地する。

 そのまま次の動作に移る。

動きよ、止まれモーツス・フィーネム

 ラミアは、右手だけで全車両の動きを止め、脱線を防ぐ。

 列車は、ゆっくりと線路の上に戻り、乗客の命を守った。
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