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第3章  闇の奥底

ⅩⅨ

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「まーな。退屈せずに済みそうな事だけは、保証されているだろうよ」

 話しているうちに列車が停車しているはずの次の駅が見えてくる。

「どうやら次の駅には着いたようね」

「そうだな。あそこの一キロ手前の場所でいいか?」

「そうね。私もだいぶ回復はしているからそれくらいは大丈夫よ」

 ボーデンたちは、次第に速度を落としながら地上へと近づいて行く。ゆっくりとキューブレーキを掛け、地上へと舞い降りる。

「––––と、着いたものはいいものの……。次の駅で折り返しの列車が来なかったら終わりだぞ」

 ラミアは、背中から降りると、隣を歩き始める。

「その時は泊まるしかないでしょ。でも、まずは電話よ」

「分かってはいるが、軍に繋ぐ電話回線は話を盗聴される可能性が高い。こればかりはどうにかして誤魔化すしかないんだよな」

 ボーデンは悩んでいる。

 事故現場から次の駅まで結構な時間がかかり、太陽が西に傾き、夕方になりつつある。

 二人の影が東に長く伸び、歩くたびに一定の長さを維持する。

 近づくたびに街の駅が見えてくる。駅のホームには、人だかりが出来ている。

「おいおい……。もう、噂が広まっているんじゃないだろうな?」

「そう見たいね。だって、予定の時刻に到着してないのよ。それに列車内の電話は壊されているし、向こうの状況すら把握できていないと思うわ」

「だとするなら、換えの列車はまだ、到着していないと見ていいな」

「そのようね」

 二人が街に到着すると、駅へと一直線へ向かう。

 駅のホーム内は騒がしかった。

「おい、一体いつになったら来るんだ⁉︎」

「早くしてくれよ!」

「何時間、待たされるんだ⁉︎」

 人々が駅員に文句を言っていた。

「お、落ち着いてください‼︎  今、こちらで事情を調べておりますので、もうしばらくお待ちください!」

 と、対応に追われていた駅員人々に囲まれ、困っていた。

「いや、これは結構な時間が掛かるんじゃねぇーの?」

「そうしか言いようがないわね……」

 二人はその光景を見て、落胆する。

 騒ぎは次第に大きくなっていく。
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