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第3章  闇の奥底

ⅡⅩⅠ

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「それは俺が相手であってもか?」

 バルトは男を睨みつける。

「ま、一人だったら苦戦するでしょうね。あんた、時々やらかすから……」

「……」

 バルトは、言い返す言葉がない。

「少佐‼︎  こちらの移動は終わりましたので、この後、どうしますか?」

 乗客の誘導を終えたエルザが、下の方から呼びかけてきた。

「もう少しだけ、調べてみる。君は、彼らがいると思われる次の駅に向かってくれ。俺も後で追いつく」

「分かりました。では、先に行っていますね」

「ああ、頼む」

 エルザは、自分の車に乗り込み、次の駅へと向かった。

「いいんですか?」

「何がだ?」

 男は、バルトを心配して訊く。

「彼女がいなかったらあんたはただの無能ですよ」

「ほう?  俺のどこが無能だと言いたいのかね?」

「それですよ。それ……」

 男はバルトを指差す。

「彼女は優秀のくせにあんたの下で働き続けている。もし、彼女がいなかったら俺らの隊は、一番下の弱小ですよ」

「それを本人の前で言うか?」

「言いますよ。だって、信用されてないんですから……」

「……」

 再び黙るバルト。

 男の言う通り、エルザがそばに居ないとほとんどの行動範囲が狭まるバルトであり、彼の持つ魔法は、元を言えば、彼女のおかげでもある。

 事故現場は、激しい戦いを繰り広げられた事は、魔力の強い魔法使いにとっては、見ればすぐに分かる。

(派手にやってくれたようだが……。なるほど、その割には乗客のことを考えての戦い方だったか……)

 バルトは屋根から飛び降りる。

「それでどうでしたか?  何か得るものなどは……?」

「いや、何もなかったが……。この先、彼らの行く手に奴らがいる事だけが、今の手がかりだな」
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