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第3章 闇の奥底
ⅡⅩⅡ
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「そうですか。ま、俺も手を貸そうとはしましたけど、流石に正体をバレるのだけは出来ませんでしたからね。もし、手助けしていれば、もう少し情報を訊き出せたかもしれませんけど……」
男は大きな欠伸をする。
「いや、今はこれだけで十分だ。深入りする程、相手のいいように操られる。それこそ何の目的かもわからない集団の手掛かりを失う方が怖い」
バルトは、冷静に分析して言う。
現場保存も難しく、すぐに列車ごと、壊れたレールも撤去し、すぐに修復作業に入らなければならない。
手錠に自分の考えと、現場の状況などを書きまとめ、ポケットの中にしまう。
「あっ!」
欠伸をしていた男は、何かを思い出したかのように声を上げる。
「どうかしたのか?」
バルトはその声に反応する。
「いやー、そのですねぇ……。思っていたんですが……」
× × ×
「おーい、本当に洒落になんねぇーぞ……」
ボーデンとラミアは、列車が本日中の運転は厳しいと判断を下され、街で途方に暮れていた。
「いいんじゃないの。もしかすると、これが案外ラッキーだったりして……」
「はぁ?」
ラミアが変なことを言い出す。
「言い方が悪かったわ。もうすぐ、彼女が来るって事よ」
「彼女?」
ボーデンが首を傾げると、遠くの方から車のクラクションの音が聞こえてきた。
振り返ると、こっちに向かってくる一台の車が見える。
そこには一人の女性が運転していた。
運転の仕方に特徴があり、荒れに荒れている。見覚えがある。
「まさか、あの車は……」
ボーデンは、嫌な思いを思い出す。
車は二人の前で急ブレーキをし、エンジン音を鳴らしながら止まる。
「二人共、どうやら変なことに巻き込まれたようね」
車に乗っていたエルザが話しかけてきた。
「おかげで踏んだり蹴ったりですよ。それで何をしにきたんですか?」
ボーデンは、不服を言う。
「何って、あなた達の安否を確認しにきたのよ。まぁ、何も怪我せずにいてくれて良かったわ」
「俺達を連れて帰るとでも言うんですか?」
ボーデンはエルザに問う。
「いいえ、そんな事はしないわ。予定通りとはいかないけど、このまま旅を続けてもいいわ。追加の金額は、後で請求してくれて構わないわ」
ボーデンは意外な顔を見せる。
エルザから連れ戻されると思っていたボーデンは、それを聞いて、何の風の吹き回しかと思った。
「それはいいんだが……」
「分かっているわ。そっちの調査も進めている。何かがわかり次第、私か、少佐から連絡を入れるわ」
「頼む……」
ボーデンは悔しい顔を見せる。
「私からも一つだけ頼みごとをしてもいいかしら?」
「何でしょう?」
すると、ラミアは、懐から小さな試験管を取り出す。
中には真っ赤に染められた液体が少量入っており、小さく振るだけで赤い液体が混ざり合う。
「これは……?」
エルザは、ラミアから試験管を受け取る。
「それは私達と戦った男の血よ」
「何っ‼︎ いつの間にそんな事をしていたんだ⁉︎」
ボーデンも今になって気づく。
「戦いの最中に採血したのよ。私クラスの吸血鬼ならこれくらい余裕よ」
ラミアはドヤ顔して、ボーデンを見る。
ボーデンは、ムッとする。
「これくらいだったら何かしらの情報を得る事くらいできるでしょ?」
「はい、ありがとうございます。血液検査をすれば、調査に大きな進展があるかもしれません」
エルザは、ラミアに礼を言う。
「エルザさん、少佐は?」
「あの人なら今もあそこで調査中だと思うわ」
「そうか。ま、早く帰らないと、何かをやらかす人だからな……」
男は大きな欠伸をする。
「いや、今はこれだけで十分だ。深入りする程、相手のいいように操られる。それこそ何の目的かもわからない集団の手掛かりを失う方が怖い」
バルトは、冷静に分析して言う。
現場保存も難しく、すぐに列車ごと、壊れたレールも撤去し、すぐに修復作業に入らなければならない。
手錠に自分の考えと、現場の状況などを書きまとめ、ポケットの中にしまう。
「あっ!」
欠伸をしていた男は、何かを思い出したかのように声を上げる。
「どうかしたのか?」
バルトはその声に反応する。
「いやー、そのですねぇ……。思っていたんですが……」
× × ×
「おーい、本当に洒落になんねぇーぞ……」
ボーデンとラミアは、列車が本日中の運転は厳しいと判断を下され、街で途方に暮れていた。
「いいんじゃないの。もしかすると、これが案外ラッキーだったりして……」
「はぁ?」
ラミアが変なことを言い出す。
「言い方が悪かったわ。もうすぐ、彼女が来るって事よ」
「彼女?」
ボーデンが首を傾げると、遠くの方から車のクラクションの音が聞こえてきた。
振り返ると、こっちに向かってくる一台の車が見える。
そこには一人の女性が運転していた。
運転の仕方に特徴があり、荒れに荒れている。見覚えがある。
「まさか、あの車は……」
ボーデンは、嫌な思いを思い出す。
車は二人の前で急ブレーキをし、エンジン音を鳴らしながら止まる。
「二人共、どうやら変なことに巻き込まれたようね」
車に乗っていたエルザが話しかけてきた。
「おかげで踏んだり蹴ったりですよ。それで何をしにきたんですか?」
ボーデンは、不服を言う。
「何って、あなた達の安否を確認しにきたのよ。まぁ、何も怪我せずにいてくれて良かったわ」
「俺達を連れて帰るとでも言うんですか?」
ボーデンはエルザに問う。
「いいえ、そんな事はしないわ。予定通りとはいかないけど、このまま旅を続けてもいいわ。追加の金額は、後で請求してくれて構わないわ」
ボーデンは意外な顔を見せる。
エルザから連れ戻されると思っていたボーデンは、それを聞いて、何の風の吹き回しかと思った。
「それはいいんだが……」
「分かっているわ。そっちの調査も進めている。何かがわかり次第、私か、少佐から連絡を入れるわ」
「頼む……」
ボーデンは悔しい顔を見せる。
「私からも一つだけ頼みごとをしてもいいかしら?」
「何でしょう?」
すると、ラミアは、懐から小さな試験管を取り出す。
中には真っ赤に染められた液体が少量入っており、小さく振るだけで赤い液体が混ざり合う。
「これは……?」
エルザは、ラミアから試験管を受け取る。
「それは私達と戦った男の血よ」
「何っ‼︎ いつの間にそんな事をしていたんだ⁉︎」
ボーデンも今になって気づく。
「戦いの最中に採血したのよ。私クラスの吸血鬼ならこれくらい余裕よ」
ラミアはドヤ顔して、ボーデンを見る。
ボーデンは、ムッとする。
「これくらいだったら何かしらの情報を得る事くらいできるでしょ?」
「はい、ありがとうございます。血液検査をすれば、調査に大きな進展があるかもしれません」
エルザは、ラミアに礼を言う。
「エルザさん、少佐は?」
「あの人なら今もあそこで調査中だと思うわ」
「そうか。ま、早く帰らないと、何かをやらかす人だからな……」
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