吸血鬼と異世界人

ゴリラ・ゴリラ・ゴリラ

文字の大きさ
49 / 57
第3章  闇の奥底

ⅡⅩⅡ

しおりを挟む
「そうですか。ま、俺も手を貸そうとはしましたけど、流石に正体をバレるのだけは出来ませんでしたからね。もし、手助けしていれば、もう少し情報を訊き出せたかもしれませんけど……」

 男は大きな欠伸をする。

「いや、今はこれだけで十分だ。深入りする程、相手のいいように操られる。それこそ何の目的かもわからない集団の手掛かりを失う方が怖い」

 バルトは、冷静に分析して言う。

 現場保存も難しく、すぐに列車ごと、壊れたレールも撤去し、すぐに修復作業に入らなければならない。

 手錠に自分の考えと、現場の状況などを書きまとめ、ポケットの中にしまう。

「あっ!」

 欠伸をしていた男は、何かを思い出したかのように声を上げる。

「どうかしたのか?」

 バルトはその声に反応する。

「いやー、そのですねぇ……。思っていたんですが……」



    ×     ×     ×



「おーい、本当に洒落になんねぇーぞ……」

 ボーデンとラミアは、列車が本日中の運転は厳しいと判断を下され、街で途方に暮れていた。

「いいんじゃないの。もしかすると、これが案外ラッキーだったりして……」

「はぁ?」

 ラミアが変なことを言い出す。

「言い方が悪かったわ。もうすぐ、彼女が来るって事よ」

「彼女?」

 ボーデンが首を傾げると、遠くの方から車のクラクションの音が聞こえてきた。

 振り返ると、こっちに向かってくる一台の車が見える。

 そこには一人の女性が運転していた。

 運転の仕方に特徴があり、荒れに荒れている。見覚えがある。

「まさか、あの車は……」

 ボーデンは、嫌な思いを思い出す。

 車は二人の前で急ブレーキをし、エンジン音を鳴らしながら止まる。

「二人共、どうやら変なことに巻き込まれたようね」

 車に乗っていたエルザが話しかけてきた。

「おかげで踏んだり蹴ったりですよ。それで何をしにきたんですか?」

 ボーデンは、不服を言う。

「何って、あなた達の安否を確認しにきたのよ。まぁ、何も怪我せずにいてくれて良かったわ」

「俺達を連れて帰るとでも言うんですか?」

 ボーデンはエルザに問う。

「いいえ、そんな事はしないわ。予定通りとはいかないけど、このまま旅を続けてもいいわ。追加の金額は、後で請求してくれて構わないわ」

 ボーデンは意外な顔を見せる。

 エルザから連れ戻されると思っていたボーデンは、それを聞いて、何の風の吹き回しかと思った。

「それはいいんだが……」

「分かっているわ。そっちの調査も進めている。何かがわかり次第、私か、少佐から連絡を入れるわ」

「頼む……」

 ボーデンは悔しい顔を見せる。

「私からも一つだけ頼みごとをしてもいいかしら?」

「何でしょう?」

 すると、ラミアは、懐から小さな試験管を取り出す。

 中には真っ赤に染められた液体が少量入っており、小さく振るだけで赤い液体が混ざり合う。

「これは……?」

 エルザは、ラミアから試験管を受け取る。

「それは私達と戦った男の血よ」

「何っ‼︎  いつの間にそんな事をしていたんだ⁉︎」

 ボーデンも今になって気づく。

「戦いの最中に採血したのよ。私クラスの吸血鬼ならこれくらい余裕よ」

 ラミアはドヤ顔して、ボーデンを見る。

 ボーデンは、ムッとする。

「これくらいだったら何かしらの情報を得る事くらいできるでしょ?」

「はい、ありがとうございます。血液検査をすれば、調査に大きな進展があるかもしれません」

 エルザは、ラミアに礼を言う。

「エルザさん、少佐は?」

「あの人なら今もあそこで調査中だと思うわ」

「そうか。ま、早く帰らないと、何かをやらかす人だからな……」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

R・P・G ~女神に不死の身体にされたけど、使命が最低最悪なので全力で拒否して俺が天下統一します~

イット
ファンタジー
オカルト雑誌の編集者として働いていた瀬川凛人(40)は、怪現象の現地調査のために訪れた山の中で異世界の大地の女神と接触する。 半ば強制的に異世界へと転生させられた凛人。しかしその世界は、欲と争いにまみれた戦乱の世だった。 凛人はその惑星の化身となり、星の防人として、人間から不死の絶対的な存在へとクラスチェンジを果たす。 だが、不死となった代償として女神から与えられた使命はとんでもないものであった…… 同じく地球から勇者として転生した異国の者たちも巻き込み、女神の使命を「絶対拒否」し続ける凛人の人生は、果たして!? 一見頼りない、ただのおっさんだった男が織りなす最強一味の異世界治世ドラマ、ここに開幕!

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

コンバット

サクラ近衛将監
ファンタジー
 藤堂 忍は、10歳の頃に難病に指定されているALS(amyotrophic lateral sclerosis:筋萎縮性側索硬化症)を発症した。  ALSは発症してから平均3年半で死に至るが、遅いケースでは10年以上にわたり闘病する場合もある。  忍は、不屈の闘志で最後まで運命に抗った。  担当医師の見立てでは、精々5年以内という余命期間を大幅に延長し、12年間の壮絶な闘病生活の果てについに力尽きて亡くなった。  その陰で家族の献身的な助力があったことは間違いないが、何よりも忍自身の生きようとする意志の力が大いに働いていたのである。  その超人的な精神の強靭さゆえに忍の生き様は、天上界の神々の心も揺り動かしていた。  かくして天上界でも類稀な神々の総意に依り、忍の魂は異なる世界への転生という形で蘇ることが許されたのである。  この物語は、地球世界に生を受けながらも、その生を満喫できないまま死に至った一人の若い女性の魂が、神々の助力により異世界で新たな生を受け、神々の加護を受けつつ新たな人生を歩む姿を描いたものである。  しかしながら、神々の意向とは裏腹に、転生した魂は、新たな闘いの場に身を投じることになった。  この物語は「カクヨム様」にも同時投稿します。  一応不定期なのですが、土曜の午後8時に投稿するよう努力いたします。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...