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第4章  灼熱の魔法師

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「いいのか?」

「いいんだよ。居留守にする方が悪い」

 ボーデンは、エレキに「やれ」と指示を出す。

 あまり、乗り気のしないエレキは、渋々と扉を壊そうとボーデンの前に出ようとした時。

「うるさーい! 何度もピンポン、ピンポン鳴らすんじゃなーい!」

 と、自分の家の扉を打ち壊し、ボーデンとエレキ、二人を吹っ飛ばした。

「ぎゃあ!」

「うわっ!」

 二人は階段から転げ落ち、扉の下敷きになる。

「おい、どこの誰だ⁉︎  私の睡眠を邪魔する奴は!」

 睡眠を邪魔された人物は、血相を変えた恐ろしい表情をしていた。

 口から煙が出てくるかのような勢いがあり、人間が悪魔化している感じだ。

「ああ? なんだ、お前たちは⁉︎  お前たちか! 私の眠りを邪魔した奴は!」

 黒髪のロングのストレートに乱れたワイシャツと黒ズボン姿。女性にしては高身長であり、胸は出る所出ているくらいの大きさである。

「お前か? 私の眠りを邪魔したのは?」

 女はラミアを上から睨みつけた。

「あら、貴方、昔と何一つ変わらないわね」

 ラミアは腕を組みながら、フッ、と笑みを浮かべて女に言った。

「んっ? なんだ、このちびっ子は?」

 女はラミアを見て、首を傾げた。

「へぇ、もう忘れたの? まぁ、昔の事だから貴方が忘れていても仕方ないわね」

 ラミアはポーカーフェイスで怒りを抑えながら、女に微笑んだまま言った。

「昔に……だと?」

「そう、貴方が惚けているのか、本当に忘れているのか、思い出させてあげるわ」

 ラミアは笑顔で右手に小さな赤く光の球を出した。

「さぁ、これが何かわかるかしら?」

「魔法……魔法師か!」

 女はそれを見て驚く。

「ちょっと違うわね。本当に忘れているようね。これでも喰らって思い出したらどう?」

 ラミアは女のお腹の辺りに光の球をぶつけた。

「ちょっと、痺れるわよ」

 ラミアは、ニッ、と吸血鬼の証である八重歯をチラッと見せ、瞳が赤くなる。

「くっ……」
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