俺のユニバーサルライフは要するにあまりいいものではなく青春的な展開などあり得ない

ゴリラ・ゴリラ・ゴリラ

文字の大きさ
21 / 46
第4章  幼馴染と言うものはそれ以上、それ以下でもない

021  幼馴染と言うのはそれ以上、それ以下でもないⅢ

しおりを挟む
「さあ、感想戦かんそうせんを始めようか。時間はたっぷりある。日没になるくらいまで付き合ってもらうぞ」
「……はあ?やっぱり、そうなるのかよ……」
 俺は善政よしまさから目をそらして小声で言い、溜息をついた。頭をガクンと下に向け目を少しつぶった。
 ああ……。
 鞄を開け何かを探している善政はいくつにも束ねられたA4用紙を重そうに鞄から取り出して、ドンッ、と音を立てながら床に置いた。
 身を乗り出してその束の内容を見ると、今までのそれぞれ対局した棋士との棋譜きふが全てつづられていた。
 一番上には将棋界のトップ棋士、羽田はねだ四冠の名前が書いてあった。
「うわぁ……何、これ……」
 夏目はそれを見てドン引きしていた。
「これは公式戦、非公式戦、その他の対局の記録の一部だ。これはそうだな……三冊目と言ったところか?」
「よう、こんなものを持ち運ぶ気になるな。パソコンにファイルでも作ってデータを作ればいいのにそうすれば今までの全ての棋譜が見れるだろ」
 棋譜を初手から一つずつ見ながら俺は意見すると、善政は何も言わずに首を縦に振らず、横に振った。この時代、アナログより地デジですよと言っているようなものなのだが、聞こうとしなかった。
「俺は自分で書いた方がいい。パソコンはいつデータが消えてしまったら困るし、それにパソコンはAIとするために使うものだ。棋譜は棋士きしにとっては重要なもの手書きで書いて保存しておいた方がいい」
「そう言うものなのか。運営に頼んでコピーでも頼めばいいのに……」
「それはだめだ。しっかりと|模写もしゃしながら頭の中に盤上ばんじょうを浮かべ、記録するのが最適なんだ」
 善政は自分の意志はしっかりと持ち、お茶を少し飲みながら俺の方を睨みつけた。
 それにしても凄い量だ。普通の棋士でも持ち運びはまずしないはずだ。しっかりと作戦を練った準備をしてくる。
「俺が将棋を習い始めたのはテレビを見た時、丁度羽田先生が七冠を達成した時だ。初めは、遊びで始めたが研究会に入り、棋譜や詰め将棋の記録をつけた。それから、今まで付けてきた。今回の対局は絶対に負けられない」
 声、でけぇ……。
 まあ、こいつは小学校の頃から友達とは遊ばず。暇があれば、うちに来るか、家で引きこもっていたし、もう一人は……今はやめておこう。
 その時、扉の方からホックする音が聞こえて、一人の少女がゆっくりと扉を開きながら研究室に入って来た。
「あ……やっぱりここにいた」
 俺は溜息をついて、善政は嫌そうな表情を浮かべた。そいつは俺たちの前まで来ると怒った表情で言った。
「二人ともそこで何をしているの?」

 研究室に入って来た少女――桜井春さくらいはる。俺と善政の女幼馴染で教育学部初等教育学科一年。姿は左髪を一結びしており端正な顔立ちで気が強く野生のように自分の感で動く少女だ。簡単に言えば、冬月の劣化版れっかばんだ。
「どちら様でしょうか」
「はぁ?どちら様って……春なんですけどこの顔忘れたんじゃないんでしょうね」
「ど、どうかな……善政は記憶があるか?」
「うむ。俺には信司しか知り合いがいなかったはずだ。どうも、記憶が混乱しているようだ」
 俺たち二人はとぼけながら春の話を水に流そうとしていた。こいつと関わると善政以上にロクな目に遭わない
 こいつは女だが歩く凶器きょうきだ。今にでも襲ってきそうな勢いで言ってくる。
「なるほどね。二人とも記憶がないんじゃ仕方ないよね。なら、今に思い出させてあげましょうか?」
 指をボキボキと鳴らしながら春は完璧に怒る寸前まで来ていた。
「あ、思い出した。な、善政」
「あ、ああ。この俺が忘れることが無いだろ。棋士は記憶力がいいからはっきりと覚えている……。うん、覚えている」
 善政は冷や汗をかきながら苦笑いをしていた。
 お陰で今日はとんだ一日だ。春に用件を聞くと俺ら二人を探していたらしい。理由は話さなかった。
「それで桜井さんは天道君たちを監視してどうするつもりなのかしら」
 冬月は冷たい視線で春の方を見ると彼女は後ずさりをしながら尋ねた。
「何で、私の名前を知っているの?一度もあったことないよね」
「だって、あなた入学式、新入生代表で祝辞しゅくじを述べていたでしょ」
「た、確かにそうだけど……。よく、そんなこと覚えているわね」
 春は関心しながら、冬月をまじまじと見つめると隣の夏目の方も見つめていた。研究室は静まり、俺らは小声で話していた。
「ええと、吉井善政と桜井春と言ったかな。どうだ、お前ら二人も我が研究室に入ってみてはどうかな。人数が多いほど、それはいいことがある」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。

遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。 彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。 ……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。 でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!? もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー! ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。) 略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)

クラスで1番の美少女のことが好きなのに、なぜかクラスで3番目に可愛い子に絡まれる

グミ食べたい
青春
高校一年生の高居宙は、クラスで一番の美少女・一ノ瀬雫に一目惚れし、片想い中。 彼女と仲良くなりたい一心で高校生活を送っていた……はずだった。 だが、なぜか隣の席の女子、三間坂雪が頻繁に絡んでくる。 容姿は良いが、距離感が近く、からかってくる厄介な存在――のはずだった。 「一ノ瀬さんのこと、好きなんでしょ? 手伝ってあげる」 そう言って始まったのは、恋の応援か、それとも別の何かか。 これは、一ノ瀬雫への恋をきっかけに始まる、 高居宙と三間坂雪の、少し騒がしくて少し甘い学園ラブコメディ。

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。

エース皇命
青春
 高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。  そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。  最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。  陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。  以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。 ※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。 ※表紙にはAI生成画像を使用しています。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話

水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。 そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。 凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。 「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」 「気にしない気にしない」 「いや、気にするに決まってるだろ」 ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様) 表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。 小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。

処理中です...