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第5章 同じ日に同じ夢を見るということは非合理的な空想論である
028 同じ日に同じ夢を見るということは非合理的な空想論であるⅠ
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「はぁ……」
小さな溜息がリビングに大きく聞こえた。朝から目の前の紙に向かって、うだうだと駄々をこねながら妹の佑理は言った。
「お兄ちゃん、この問題が解けないよ。この高校、宿題のレベルが高いんだよね……」
こたつ用のテーブルには大量のプリント用紙と教科書が散乱《さんらん》している。
「それにさあ、部活動生に休日出勤もあるんだからもう少し少なくてもいいんじゃない」
「休日出勤は教員の方だろ。それに部活は自主性だから責められるもんじゃないぞ。皆、通る道だからな……」
佑理に愚痴をダラダラと聞かされると、俺は冷蔵庫からオレンジジュースを取り出してコップに注いだ。
「お兄ちゃんのケチ……。少しは困っている妹のために手伝ってくれてもいいんじゃないの?」
その手伝ってという単語は死語であり、最終的には俺がやる羽目になりそうだ。そもそも妹がお願いすることは大抵がこれである。
佑理の通う宮崎県立延岡北高校は、普通科と理数科に分かれている。偏差値は普通科60、理数科68と県内では五本の指に入るくらいの高校である。
その中で佑理は普通科に所属いる。
高校生は毎日のように各教科から宿題が出たり出なかったりするが休日になると毎回のように一定の量で宿題が出される。
進学校ではこれは当たり前の事であり、この時期からほとんどの高校生は大学進学に向けて考え始める。
俺の妹が今、取り掛かっているのは数学Ⅱだ。
数Ⅱはセンター試験でもいくつか取り上げられ、私立の入試では必ず出題される。しかし、数Ⅱはまだ前兆であり、本当に怖いのは数Ⅲである。あれはもう、化け物並みの理解不能な公式ばかりがうじゃうじゃと次から次に出てくる。
問題を読んでみると複素数と方程式の問題が数問出されていた。チャート開きながら解いているのが分かるがこれは教科書さえ見ておけば簡単に解けるレベルだ。
「佑理。これって教科書だけで解ける問題ばかりじゃないのか?」
「そお?私、数学と化学がダメなんだよね」
佑理はテーブルに顔を引っ付けて、やろうという気力が全く感じられない。
「ダブルチーズバーガーセットなら、手伝ってやる」
数学が出来なければこの世の中は生きてはいけない。例えば、お金の計算とか、仕事のグラフや経理など色々とある。数学が出来なければ人として普通の生活を送るのは困難だということである。
「……高い。せめて、百円マッグを二つとフライドポテトMサイズ」
「……分かった。その頭の回転の速さを勉強に使えよ」
そう言って電気コードを繋げて、自分のスマホを充電すると佑理に「教科書貸せ」と言って、その場で借りた。パラパラとページをめくるとページごとに何も書かれていない新品のままに少し切なさを感じた。
一通り読み終わると、佑理の横に座った。
「何でお兄ちゃんが隣に座るの?」
「教えるのに向かい側にいたら面倒なんだよ」
この年頃の女は兄と一緒にいると反抗的であると、全国の兄貴が泣いているんだろうな。
俺はプリント用紙を取り上げると、早速、自由帳に問題を解き始めた。
問一.次の答えに答えろ。
2乗すると8iになるように複素数z=x+yi(x、yは実数)はちょうど2つ存する。このzを求めよ。
最初から面倒な問題を出題するのはさすが進学校と、関心した。
「なるほど……これは……お前が最初から手が止まるのも仕方が無いな」
「でしょ、それに解答なんて月曜日にしか配られないんだよ」
「お前の担当って誰だっけ……」
「花村……」
「その……、なんかすまん……」
「うん」
リビングは微妙な空気になり、気まずかった。
俺はペンを走らせながら、少しずつ解いていく。
「なんで、数学に数字のないものが問題として出されるんだろうね」
「それが数学なんだろ」
そう、昔はアインシュタインとかニュートンさんみたいな偉人がいたから現代社会がここまで発展したんだろうが……。
空を飛びたいと思ったから飛行機が出来たし、隣町まで行きたいと思ったから車や電車が生まれたのである。
それらの中心にあるのが数学であって、全ての原点と言っても過言ではない。
「ふーん、でもさ、どうしてだろうね。ほら、円周率とか永遠に続いているでしょ」
「そこは俺に訊かれても分からないが、そうじゃないのか?」
小さな溜息がリビングに大きく聞こえた。朝から目の前の紙に向かって、うだうだと駄々をこねながら妹の佑理は言った。
「お兄ちゃん、この問題が解けないよ。この高校、宿題のレベルが高いんだよね……」
こたつ用のテーブルには大量のプリント用紙と教科書が散乱《さんらん》している。
「それにさあ、部活動生に休日出勤もあるんだからもう少し少なくてもいいんじゃない」
「休日出勤は教員の方だろ。それに部活は自主性だから責められるもんじゃないぞ。皆、通る道だからな……」
佑理に愚痴をダラダラと聞かされると、俺は冷蔵庫からオレンジジュースを取り出してコップに注いだ。
「お兄ちゃんのケチ……。少しは困っている妹のために手伝ってくれてもいいんじゃないの?」
その手伝ってという単語は死語であり、最終的には俺がやる羽目になりそうだ。そもそも妹がお願いすることは大抵がこれである。
佑理の通う宮崎県立延岡北高校は、普通科と理数科に分かれている。偏差値は普通科60、理数科68と県内では五本の指に入るくらいの高校である。
その中で佑理は普通科に所属いる。
高校生は毎日のように各教科から宿題が出たり出なかったりするが休日になると毎回のように一定の量で宿題が出される。
進学校ではこれは当たり前の事であり、この時期からほとんどの高校生は大学進学に向けて考え始める。
俺の妹が今、取り掛かっているのは数学Ⅱだ。
数Ⅱはセンター試験でもいくつか取り上げられ、私立の入試では必ず出題される。しかし、数Ⅱはまだ前兆であり、本当に怖いのは数Ⅲである。あれはもう、化け物並みの理解不能な公式ばかりがうじゃうじゃと次から次に出てくる。
問題を読んでみると複素数と方程式の問題が数問出されていた。チャート開きながら解いているのが分かるがこれは教科書さえ見ておけば簡単に解けるレベルだ。
「佑理。これって教科書だけで解ける問題ばかりじゃないのか?」
「そお?私、数学と化学がダメなんだよね」
佑理はテーブルに顔を引っ付けて、やろうという気力が全く感じられない。
「ダブルチーズバーガーセットなら、手伝ってやる」
数学が出来なければこの世の中は生きてはいけない。例えば、お金の計算とか、仕事のグラフや経理など色々とある。数学が出来なければ人として普通の生活を送るのは困難だということである。
「……高い。せめて、百円マッグを二つとフライドポテトMサイズ」
「……分かった。その頭の回転の速さを勉強に使えよ」
そう言って電気コードを繋げて、自分のスマホを充電すると佑理に「教科書貸せ」と言って、その場で借りた。パラパラとページをめくるとページごとに何も書かれていない新品のままに少し切なさを感じた。
一通り読み終わると、佑理の横に座った。
「何でお兄ちゃんが隣に座るの?」
「教えるのに向かい側にいたら面倒なんだよ」
この年頃の女は兄と一緒にいると反抗的であると、全国の兄貴が泣いているんだろうな。
俺はプリント用紙を取り上げると、早速、自由帳に問題を解き始めた。
問一.次の答えに答えろ。
2乗すると8iになるように複素数z=x+yi(x、yは実数)はちょうど2つ存する。このzを求めよ。
最初から面倒な問題を出題するのはさすが進学校と、関心した。
「なるほど……これは……お前が最初から手が止まるのも仕方が無いな」
「でしょ、それに解答なんて月曜日にしか配られないんだよ」
「お前の担当って誰だっけ……」
「花村……」
「その……、なんかすまん……」
「うん」
リビングは微妙な空気になり、気まずかった。
俺はペンを走らせながら、少しずつ解いていく。
「なんで、数学に数字のないものが問題として出されるんだろうね」
「それが数学なんだろ」
そう、昔はアインシュタインとかニュートンさんみたいな偉人がいたから現代社会がここまで発展したんだろうが……。
空を飛びたいと思ったから飛行機が出来たし、隣町まで行きたいと思ったから車や電車が生まれたのである。
それらの中心にあるのが数学であって、全ての原点と言っても過言ではない。
「ふーん、でもさ、どうしてだろうね。ほら、円周率とか永遠に続いているでしょ」
「そこは俺に訊かれても分からないが、そうじゃないのか?」
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