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第5章 同じ日に同じ夢を見るということは非合理的な空想論である
029 同じ日に同じ夢を見るということは非合理的な空想論であるⅡ
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円周率なんかエンドレスだろ。終わりは見えないからな。
それでもこんなバカな妹でも一応、進学校に通っているのだ。
「ほら、解けたぞ」
びっしりと書き込まれた数式を見て、佑理は首を傾げながらじっと見つめていた。
「お兄ちゃん、何かいているの?落書き?それとも英語?」
本人曰く、本気で言っているのが呆れる。どこがどう見たらそう見えるのだろう。
「それが答えを導く順序と答えだよ。合っているかどうかは分からないけど、これぐらいは理解しろよ」
「ま、これを写せばいいか。お兄ちゃん、どんどん解いていこう」
「……」
このアホな妹はどうすればまともになってくれるのか。馬の耳に念仏がこいつにとってお似合いのことわざだ。
「それにしても時代が変わるごとに勉学も変わるもんなんだな」
「早く、やる」
「はいはい」
妹はやはり妹なのだ。兄を駒のように扱い、コントロールしている。こいつの将来がなんとなく怖い……。
言われるままに俺は次の問題に取り掛かり、ペンを動かしながらどんどん解いていく。解き終わった問題を佑理《ゆり》は次々と写していく作業をしているのだ。あまりお勧めできないのだが、佑理の成績が絶対に上がるとは思わない。
俺も昔は解答を写しながら見様見真似で提出していたし、ネットで英語の長文を翻訳していたな。宿題は無くてもいいと俺は思う。
「ほら、一通り終わったぞ」
「うん、ありがとう。持つべきはお兄ちゃんだね」
佑理は微笑みながら言った。
それは持つべきは友達なのでは……。それはパシリ用語になるから仲のいい友達には使うなよな。……こいつって、そもそも友達と呼べる奴いたか?
俺は隣で必死に俺が解いた答えを写している佑理を見た。
留年はするなよ……。
季節はもうすぐ梅雨シーズンに差し掛かろうとしていた。雨の日が次第に多くなってきた。俺はバス停でシャワーのように流れる雨を見つめながら、バスが来るのを待っていた。服の上が濡れている人、冷え切った体を揺する人。それぞれがまだかとまだかと思っているはずだ。朝からこんなに降っていれば気温も次第に下がり、湿度が上がっていく。こんな日が続くと洗濯物《せんたくもの》を干そうとしても干せないし、日が照り出すと熱くなる。駅前バス停は始発から通勤や通学者がどんどん乗ってくる。俺の横に座った人に話しかけられた。ああ、居るんだよな。隣の席に座ると必ず話しかけてくる奴。振り返ると善政がにやけていた。
「なんだ、お前も乗っていたのか。奇遇であるな」
俺の横に座った善政の肩は少し濡れていた。この満員バスで何かが起こる、など推理現場にしたがるような言い方をしそうな奴だな。
「善政、お前が人混みのバスに乗るって珍しくないか?」
俺は朝っぱらからニュースやアニメの話をされてこいつ疲れないのかと思っていた。
「いや、如何にも俺は人混みをあまり好きではないが……今日は仕方あるまい。邪悪なスコールのせいで濡れるのが嫌なだけだったからだ」
「けれど、肩は濡れているけれどな」
冗談だろという表情をして肩を見ると濡れていることにやっと気づいたらしい。
「そんなことより事によってはお前に相談があるだが……」
「スルーかよ。ま、いいんだけどさ……。それで……?」
俺は善政のうんちくをまた聞かされた。
「そんな非現実的な出来事があったら是非とも体験してみたいものだな。そもそも、そういう妄想は二次元や夢の中では実現できるのかもしれないが、三次元で出来るものはいくつか限られているものだ」
「確かに、お前の意見は的確だとするが、しかし、どうだろう。それを物理的変換可能なものがあればそれは二・五次元ぐらい可能な気がする」
「じゃあ、お前は錬金術や四次元ポケットがあればいいとでもいうのか?」
俺たちは何を話しているのだろうか。全く、話の主旨が分からなくなっているような気がしている。
「まあ、そんなのがあれば俺だって好きなように生きて、好きなことが出来るようになるけどさ、でも、それは違うだろ?」
そうだな。
「結局はそんな空想上のものを現実にしてしまったら、世界への破滅は進んでいくだろ」
なんちゅう言い方だ。
「中二くせぇ……」
「誉め言葉と受け取っておこう」
俺は苦笑いをした。善政が中二病みたいな発言をしているところを見ると、俺達が習ったことのある物理や化学は中二病になるための準備期間なのではと思ってしまうくらいだ。しかし、簡単に考えてみれば否定をするには早すぎる。
それでもこんなバカな妹でも一応、進学校に通っているのだ。
「ほら、解けたぞ」
びっしりと書き込まれた数式を見て、佑理は首を傾げながらじっと見つめていた。
「お兄ちゃん、何かいているの?落書き?それとも英語?」
本人曰く、本気で言っているのが呆れる。どこがどう見たらそう見えるのだろう。
「それが答えを導く順序と答えだよ。合っているかどうかは分からないけど、これぐらいは理解しろよ」
「ま、これを写せばいいか。お兄ちゃん、どんどん解いていこう」
「……」
このアホな妹はどうすればまともになってくれるのか。馬の耳に念仏がこいつにとってお似合いのことわざだ。
「それにしても時代が変わるごとに勉学も変わるもんなんだな」
「早く、やる」
「はいはい」
妹はやはり妹なのだ。兄を駒のように扱い、コントロールしている。こいつの将来がなんとなく怖い……。
言われるままに俺は次の問題に取り掛かり、ペンを動かしながらどんどん解いていく。解き終わった問題を佑理《ゆり》は次々と写していく作業をしているのだ。あまりお勧めできないのだが、佑理の成績が絶対に上がるとは思わない。
俺も昔は解答を写しながら見様見真似で提出していたし、ネットで英語の長文を翻訳していたな。宿題は無くてもいいと俺は思う。
「ほら、一通り終わったぞ」
「うん、ありがとう。持つべきはお兄ちゃんだね」
佑理は微笑みながら言った。
それは持つべきは友達なのでは……。それはパシリ用語になるから仲のいい友達には使うなよな。……こいつって、そもそも友達と呼べる奴いたか?
俺は隣で必死に俺が解いた答えを写している佑理を見た。
留年はするなよ……。
季節はもうすぐ梅雨シーズンに差し掛かろうとしていた。雨の日が次第に多くなってきた。俺はバス停でシャワーのように流れる雨を見つめながら、バスが来るのを待っていた。服の上が濡れている人、冷え切った体を揺する人。それぞれがまだかとまだかと思っているはずだ。朝からこんなに降っていれば気温も次第に下がり、湿度が上がっていく。こんな日が続くと洗濯物《せんたくもの》を干そうとしても干せないし、日が照り出すと熱くなる。駅前バス停は始発から通勤や通学者がどんどん乗ってくる。俺の横に座った人に話しかけられた。ああ、居るんだよな。隣の席に座ると必ず話しかけてくる奴。振り返ると善政がにやけていた。
「なんだ、お前も乗っていたのか。奇遇であるな」
俺の横に座った善政の肩は少し濡れていた。この満員バスで何かが起こる、など推理現場にしたがるような言い方をしそうな奴だな。
「善政、お前が人混みのバスに乗るって珍しくないか?」
俺は朝っぱらからニュースやアニメの話をされてこいつ疲れないのかと思っていた。
「いや、如何にも俺は人混みをあまり好きではないが……今日は仕方あるまい。邪悪なスコールのせいで濡れるのが嫌なだけだったからだ」
「けれど、肩は濡れているけれどな」
冗談だろという表情をして肩を見ると濡れていることにやっと気づいたらしい。
「そんなことより事によってはお前に相談があるだが……」
「スルーかよ。ま、いいんだけどさ……。それで……?」
俺は善政のうんちくをまた聞かされた。
「そんな非現実的な出来事があったら是非とも体験してみたいものだな。そもそも、そういう妄想は二次元や夢の中では実現できるのかもしれないが、三次元で出来るものはいくつか限られているものだ」
「確かに、お前の意見は的確だとするが、しかし、どうだろう。それを物理的変換可能なものがあればそれは二・五次元ぐらい可能な気がする」
「じゃあ、お前は錬金術や四次元ポケットがあればいいとでもいうのか?」
俺たちは何を話しているのだろうか。全く、話の主旨が分からなくなっているような気がしている。
「まあ、そんなのがあれば俺だって好きなように生きて、好きなことが出来るようになるけどさ、でも、それは違うだろ?」
そうだな。
「結局はそんな空想上のものを現実にしてしまったら、世界への破滅は進んでいくだろ」
なんちゅう言い方だ。
「中二くせぇ……」
「誉め言葉と受け取っておこう」
俺は苦笑いをした。善政が中二病みたいな発言をしているところを見ると、俺達が習ったことのある物理や化学は中二病になるための準備期間なのではと思ってしまうくらいだ。しかし、簡単に考えてみれば否定をするには早すぎる。
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