34 / 46
第5章 同じ日に同じ夢を見るということは非合理的な空想論である
034 同じ日に同じ夢を見るということは非合理的な空想論であるⅦ
しおりを挟む
周囲は明かりぽつぽつと何軒か点いていた。
「ここから脱出するにはどうすればいいのか。一つも明からないのか……」
「でも、そうでもないのかもしれないわ」
冬月はスマホを操作して、一件のメールを見せた。
ここから見える県立高校に現れる者に力を差し伸べよ。そうすれば、道は開かれる。しかし、忘れるな。深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ。
何だよ、これ……。特に最後の方は誰かの言葉じゃないか。それに誰がここに来るんだよ……。
「……と、言うわけなのよ。それにしても誰がここに来るのやら……」
「……待てよ。ここが北校だとすると……」
「なにか、分かったの?」
「いや、何でもない」
この状況はまずい。もしかすると……。いや……でも……まさかな……。
すると、運動場に人影の姿が見えた。俺はそれに気づくと門をよじ登って確認した。
黒い学ランを身にまとって、右手にはノートを持っている。俺はこれが誰なのか分かった大体の想像がついた。
「ねぇ、あの子まさかだとは思うけど……」
「…………」
「どう見ても、天道君よね……」
冬月は柱の隙間から運動場を見ていた。
この時期、俺には夜の学校に来た覚えがある。だとすれば、これは冬月に見せるのはまずいのかもしれない……。あれは、確かに俺の知る人物だ。
「行くわよ。メールの通りにしないとこの夢からは出ることは出来ないわ」
冬月は門をよじ登ろうとしていた。
そこまで来たのならもう仕方が無い。俺も覚悟の上で行くとしよう。
「誰だ?」
そいつは俺たちに気づいて行った。
「ああ、通りすがりの若いカップルと言ったところかな。な……」
「ちょっ、放しなさいよ」
俺は冬月の肩に手を回すと、それを放そうとする。
「少しは話を合わせようとしろよ。ここだけだから心配するな」
小声で冬月の耳元で話すと、小さく頷き承諾してくれた。
「あ、そう。なら、早く帰れよな。ここにいると危ないぞ。邪悪な気が集まってきているからな」
やっぱりだ。幼い声だがどう見てもこの男子の声は聞き覚えがある。いや、これは昔の俺だ。それも高校に入学した頃だ。しかし、なんで夢の中で俺の高校時代が出てくるのだろうか。まあ、それは置いといて、話を進めよう。
「何をしているんだ?邪悪な気ってなんだよ……」
「そのままの通りだ。これから俺は儀式をやるんだ。なんなら、お前らも見ていくか?」
ああ、これは痛い。痛すぎる。今の俺には程遠い存在だがこれは人に見せられるようなもんじゃない。
俺(高校時代の中二病の俺)は、せっせと何やら道具を持って来て、何かをやり始めた。複数の石に、小さな机、みかん、ロウソク、マッチ、チョークを袋の中から取り出した。
「これで邪悪な気を押さえるんだ」
「あなた、それをやってもどこにそんなものがいるのか私たちには分からないわよ」
冬月は馬鹿馬鹿しいほどにも程度があると思いながら額に手を当てて、呆れていた。それは否定できないが、言いすぎだぞ。この頃の子供にはこれくらいふつうだって……。あれ、普通なのか?
「うるさいなあ。おばさんは黙ってろよ。何もしないなら帰れよ」
「お、おば、おばさん……」
小声で怒りを爆発させている誰かさんは、周りの気がみるみる燃え上がっているようだ。どうやら、さっきの発言がまずかったのかもしれない。
「お、おい。ここは堪えろ、騒ぎを大きくするなよ」
「ええ、なんとなく。昔のあなたがどういう人間だったのか、少しずつ見えてきた気がするわ」
すみませんね。でも、これは夢であって、過去の俺に何と言おうが見知らぬ俺たちが言ったところで何もならない気がするけどな……。
「それで、俺らは何をすればいいんだ?」
俺は俺に尋ねる。
「そうだな。じゃあ、このノートに書いてある奴の通りにこの紙の上に書いてくれ」
持っていたノートと大きな画用紙に赤いチョークを渡した。
「あ、うん……」
「俺は準備で忙しいから早めにやってくれよ」
そう言って、高校時代の俺は他の準備をしていた。
「天道君、あなたの高校時代ってこんな感じだったの?」
俺の服を引っ張りながら、冬月は後ろから話しかけてきた。
「ああ、最初の頃はそんな感じだった。でも、すぐに現実を見て今に至るってわけだ」
「ここから脱出するにはどうすればいいのか。一つも明からないのか……」
「でも、そうでもないのかもしれないわ」
冬月はスマホを操作して、一件のメールを見せた。
ここから見える県立高校に現れる者に力を差し伸べよ。そうすれば、道は開かれる。しかし、忘れるな。深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ。
何だよ、これ……。特に最後の方は誰かの言葉じゃないか。それに誰がここに来るんだよ……。
「……と、言うわけなのよ。それにしても誰がここに来るのやら……」
「……待てよ。ここが北校だとすると……」
「なにか、分かったの?」
「いや、何でもない」
この状況はまずい。もしかすると……。いや……でも……まさかな……。
すると、運動場に人影の姿が見えた。俺はそれに気づくと門をよじ登って確認した。
黒い学ランを身にまとって、右手にはノートを持っている。俺はこれが誰なのか分かった大体の想像がついた。
「ねぇ、あの子まさかだとは思うけど……」
「…………」
「どう見ても、天道君よね……」
冬月は柱の隙間から運動場を見ていた。
この時期、俺には夜の学校に来た覚えがある。だとすれば、これは冬月に見せるのはまずいのかもしれない……。あれは、確かに俺の知る人物だ。
「行くわよ。メールの通りにしないとこの夢からは出ることは出来ないわ」
冬月は門をよじ登ろうとしていた。
そこまで来たのならもう仕方が無い。俺も覚悟の上で行くとしよう。
「誰だ?」
そいつは俺たちに気づいて行った。
「ああ、通りすがりの若いカップルと言ったところかな。な……」
「ちょっ、放しなさいよ」
俺は冬月の肩に手を回すと、それを放そうとする。
「少しは話を合わせようとしろよ。ここだけだから心配するな」
小声で冬月の耳元で話すと、小さく頷き承諾してくれた。
「あ、そう。なら、早く帰れよな。ここにいると危ないぞ。邪悪な気が集まってきているからな」
やっぱりだ。幼い声だがどう見てもこの男子の声は聞き覚えがある。いや、これは昔の俺だ。それも高校に入学した頃だ。しかし、なんで夢の中で俺の高校時代が出てくるのだろうか。まあ、それは置いといて、話を進めよう。
「何をしているんだ?邪悪な気ってなんだよ……」
「そのままの通りだ。これから俺は儀式をやるんだ。なんなら、お前らも見ていくか?」
ああ、これは痛い。痛すぎる。今の俺には程遠い存在だがこれは人に見せられるようなもんじゃない。
俺(高校時代の中二病の俺)は、せっせと何やら道具を持って来て、何かをやり始めた。複数の石に、小さな机、みかん、ロウソク、マッチ、チョークを袋の中から取り出した。
「これで邪悪な気を押さえるんだ」
「あなた、それをやってもどこにそんなものがいるのか私たちには分からないわよ」
冬月は馬鹿馬鹿しいほどにも程度があると思いながら額に手を当てて、呆れていた。それは否定できないが、言いすぎだぞ。この頃の子供にはこれくらいふつうだって……。あれ、普通なのか?
「うるさいなあ。おばさんは黙ってろよ。何もしないなら帰れよ」
「お、おば、おばさん……」
小声で怒りを爆発させている誰かさんは、周りの気がみるみる燃え上がっているようだ。どうやら、さっきの発言がまずかったのかもしれない。
「お、おい。ここは堪えろ、騒ぎを大きくするなよ」
「ええ、なんとなく。昔のあなたがどういう人間だったのか、少しずつ見えてきた気がするわ」
すみませんね。でも、これは夢であって、過去の俺に何と言おうが見知らぬ俺たちが言ったところで何もならない気がするけどな……。
「それで、俺らは何をすればいいんだ?」
俺は俺に尋ねる。
「そうだな。じゃあ、このノートに書いてある奴の通りにこの紙の上に書いてくれ」
持っていたノートと大きな画用紙に赤いチョークを渡した。
「あ、うん……」
「俺は準備で忙しいから早めにやってくれよ」
そう言って、高校時代の俺は他の準備をしていた。
「天道君、あなたの高校時代ってこんな感じだったの?」
俺の服を引っ張りながら、冬月は後ろから話しかけてきた。
「ああ、最初の頃はそんな感じだった。でも、すぐに現実を見て今に至るってわけだ」
0
あなたにおすすめの小説
彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。
遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。
彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。
……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。
でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!?
もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー!
ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。)
略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)
クラスで1番の美少女のことが好きなのに、なぜかクラスで3番目に可愛い子に絡まれる
グミ食べたい
青春
高校一年生の高居宙は、クラスで一番の美少女・一ノ瀬雫に一目惚れし、片想い中。
彼女と仲良くなりたい一心で高校生活を送っていた……はずだった。
だが、なぜか隣の席の女子、三間坂雪が頻繁に絡んでくる。
容姿は良いが、距離感が近く、からかってくる厄介な存在――のはずだった。
「一ノ瀬さんのこと、好きなんでしょ? 手伝ってあげる」
そう言って始まったのは、恋の応援か、それとも別の何かか。
これは、一ノ瀬雫への恋をきっかけに始まる、
高居宙と三間坂雪の、少し騒がしくて少し甘い学園ラブコメディ。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。
【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。
エース皇命
青春
高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。
そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。
最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。
陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。
以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。
※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。
※表紙にはAI生成画像を使用しています。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話
水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。
そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。
凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。
「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」
「気にしない気にしない」
「いや、気にするに決まってるだろ」
ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様)
表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。
小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる