俺のユニバーサルライフは要するにあまりいいものではなく青春的な展開などあり得ない

ゴリラ・ゴリラ・ゴリラ

文字の大きさ
35 / 46
第5章  同じ日に同じ夢を見るということは非合理的な空想論である

035  同じ日に同じ夢を見るということは非合理的な空想論であるⅧ

しおりを挟む
「でも、今とあまり変わらないのだけれど……」
 冬月は失礼なことを言ってくる。
 俺は渋々しぶしぶ、言われた通りに仕事をこなして、彼に渡した。
「それじゃあ、少し時間、かかるからあの階段《かいだん》で待っててもらえるか」
「ああ」
 やっと解放されると、思った俺は冬月と二人で冷え切った冷たい階段に座り、不本意ふほんいながら体をくっつけ合って座り、終わるのを待った。
「ねぇ、いつになったらこんなことが終わるのかしら」
「俺に訊かれてもなあ。あれから、誰からもメールが来ていないのか?」
「ええ、こちらから送ろうにもメアドが表示されていないのよ」
「これは夢だからメアドが無くても仕方が無いんじゃないのか?」
「夢だったら、こんなリアルなところまで表現はされないわ。せいぜい二次元にじげんまでよ」
「だよな……」
 確かにそれは冬月の言う通りだ。ここまで出来すぎる夢はおかしい。でも、本当にそんな世界が存在するのなら俺たちはどうやって元の世界に戻ればいいのだろう。
「ねぇ、あんたたちはどこから来たんだ?一応、言っておくけどここ、関係者以外立ち入り禁止だぞ」
 儀式ぎしきを終えたのか昔の俺はこっちに来て離れたところに座った。
「なら、お前は夜の学校に入ってもいいのか?」
「分からない。でも、夜にはルールなんて必要があるのか?」
「さーな。でも、こんな時間に夜遊びしていたら家族が心配するんじゃないのか?」
「家族……。うちの親は共働きで二つ年下の妹は……。ま、そんな感じだ」
「そうかい。俺も似たような感じさ」
「へー」
 昔の俺は興味なさそうな声で返事を返してくる。
「それで、あんたたちはカップルなのに何で寝間着ねまきなの?もしかして、同居してるの?」
「違う。でも、そうなのかもしれない」
「どっちだよ」
「分からん。しかし、お前はもういいのか?」
「ああ」
「そうか……」
「でも、最後に一つやり残していることがある」
「なんだよ」
「キスだよ」
 俺たちを見て、平然とその言葉を口にした。隣にいた冬月の顔が少し赤くなっていたのは気づかないふりをして訊き返した。
「キス?なんで、そんなのが最後にあるんだよ」
「ああ、なんとなくそんなことをノートに書いてしまってな。ま、そう言うことだ。あんたら、カップルなんだろキスぐらい簡単に出来るよな」
「な……」
 俺は言葉を失った。
「おい、どうすればいいんだよ」
「知らないわよ。天道君があんなことを言ったから……」
「あそこでああ言わないとこっちが怪しまれるだろうが……」
「はぁ……。物事はその先を考えて発言した方がいいわよ」
 俺と冬月は小声で会話をしながら、焦っていた。
「すまない。でも、どうするんだ?」
「仕方が無いでしょ。やるしかないわよ。ま、これは夢だから何ともないはずよ」
「ああ、そうだな」
 俺は頷き、冬月は恥ずかしそうに下を向く。
 それはそうだ。夢だからと言って好きでもない奴と口を合わせるのは俺でも抵抗がある。それでもやらないと元の世界には戻れないのだろう。
「分かった。お前の言う通りにしよう。それでどうすればいいんだ?」
「あそこにある祭壇さいだんの前で口と口を交わせばそれでいい」
「それだけなのか?」
「それだけ……」
 あのわけの分からない、祭壇みたいな場所で行えば気が済むらしい。言われるままに俺たちはその祭壇の前に立った。
「あ……えっと……」
「早くしなさいよ。もたもたしない。大丈夫……これは夢よ。遠慮はいらないわ……」
 言っている事とやっている事は逆で、体はとても拒否っていた。
「分かった。行くぞ」
「え、あ、ちょっ、待って……」
「もう遅い……。一瞬で済ますから我慢しろ」
「う、うん……」
 それはいつもの冷たい表情をした冬月ではなく、恥んでいる冬月はいつもより可愛く見えた。もし、これが現実だったのなら俺はここで勢いに乗って、告白でもしていたのかもしれない。そして、冬月と顔と顔の距離がものすごく近づいた時、俺は彼女と自分のくちびるを重ねた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。

遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。 彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。 ……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。 でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!? もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー! ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。) 略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)

クラスで1番の美少女のことが好きなのに、なぜかクラスで3番目に可愛い子に絡まれる

グミ食べたい
青春
高校一年生の高居宙は、クラスで一番の美少女・一ノ瀬雫に一目惚れし、片想い中。 彼女と仲良くなりたい一心で高校生活を送っていた……はずだった。 だが、なぜか隣の席の女子、三間坂雪が頻繁に絡んでくる。 容姿は良いが、距離感が近く、からかってくる厄介な存在――のはずだった。 「一ノ瀬さんのこと、好きなんでしょ? 手伝ってあげる」 そう言って始まったのは、恋の応援か、それとも別の何かか。 これは、一ノ瀬雫への恋をきっかけに始まる、 高居宙と三間坂雪の、少し騒がしくて少し甘い学園ラブコメディ。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。

エース皇命
青春
 高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。  そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。  最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。  陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。  以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。 ※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。 ※表紙にはAI生成画像を使用しています。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話

水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。 そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。 凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。 「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」 「気にしない気にしない」 「いや、気にするに決まってるだろ」 ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様) 表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。 小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。

処理中です...