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背中を預けるには、まだ早い
16.オレの出番はなかった
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「猪が来るぞ!」
オレの言葉に町民たちは道具を放り出して町に向かって走り出したってのに、役人は呆けた顔で立ち尽くしている。
柵に向かって走り、役人の服の胸元を掴んで町の方へ押しやれば、小剣を握った男が後を引き継ぎ役人の腕を引く。
オレの耳にも微かに聞こえる足音。
柵から距離を取り、町に背を向け、矢をつがえ待つ。どこだ、どこから来る?
だがそんなオレの更に前に、大きな背中が立った。
大剣と大盾を持っているとは思えない、気負いのない姿勢。
そうだ。オレは今日、一人じゃない。
牙猪は、オレの獲物じゃない。
「ガルドさん、任せた」
「応」
小さく動く耳は牙猪の足音を正確に拾っているんだろう、ガルドさんがジリっと立ち位置を変えるのに合わせ、オレも立ち位置を変える。ガルドさんの後ろから横にずれ、東門へ続く畦道の上に陣取って柵を見つめた。
肩の力を抜き、視野を広く持つ。微かな音、風の匂い。感覚を研ぎ澄まし、矢を引いたその時。
穴を塞ごうと立てた杭を跳ね飛ばし、真っ黒な塊が突っ込んできた。
真っすぐに突進してきた牙猪を、一歩踏み込んだガルドさんの大盾が受け止めた瞬間、家でも壊れたのかという大きな音が響く。
互いの踏み込みで抉れた地面と飛び散る土が、なぜかゆっくり見える。
と、銀色の光が空から地面に刺さり、牙猪の首が地面を跳ねる。
真正面から突進を受け止めたガルドさんが体を躱し、蹈鞴を踏んだ牙猪の首を一刀両断したのだと、瞬き一つした後に理解が追いつく。
「すげぇ……」
その身体つきと経歴、まとう空気と装備から、只者ではないと思っていたが、こんなにも強いだなんて。予想以上に一方的な戦いを見せられて、オレは腕から力を抜くのを忘れて見入っていた。
「リオ」
「今そっちに行く」
結局撃つことのなかった矢を矢筒に戻し、ガルドさんの近くに駆けよると、畑の上で頭を失った牙猪の身体が痙攣していた。
「左の牙、短い。間違いない」
「確かに。これで今日の仕事は終わりか」
地面を跳ねて転がった頭を見下ろせば、確かに左右の牙の長さが違う。依頼にあった牙猪で間違いないだろう。
「ガルドさんの腕は大丈夫か? 盾は?」
「問題ない。盾、素晴らしい」
傷も凹みもない大盾を見せられ、あまりに簡単に終わった仕事に拍子抜けしていると、後ろから声がかかった。
「おおい、あんたら! 大丈夫か?!」
「あー、大丈夫。終わったよ」
「獣人はすげえな。あの牙猪を一人でやっちまうなんて。ありがてぇ、ありがてぇ!」
「ガルドさんの腕が良いんだよ」
小剣を鞘に納めた男は、仇を討ってくれてありがたいとオレとガルドさんの肩や背中を叩いて何度も感謝の言葉を口にする。
「しっかし、予想はしてたけど、オレの出番なかったな」
「リオ、討伐希望?」
「オレは今回控えだから、これで正解。な、これでハッキリしたろ。ガルドさんには、こういう依頼が良いんだって」
「リオ、間違いない」
外壁の東門が開き、役人や町人がこちら目掛けて走ってくる中、オレ達は笑いあった。
オレの言葉に町民たちは道具を放り出して町に向かって走り出したってのに、役人は呆けた顔で立ち尽くしている。
柵に向かって走り、役人の服の胸元を掴んで町の方へ押しやれば、小剣を握った男が後を引き継ぎ役人の腕を引く。
オレの耳にも微かに聞こえる足音。
柵から距離を取り、町に背を向け、矢をつがえ待つ。どこだ、どこから来る?
だがそんなオレの更に前に、大きな背中が立った。
大剣と大盾を持っているとは思えない、気負いのない姿勢。
そうだ。オレは今日、一人じゃない。
牙猪は、オレの獲物じゃない。
「ガルドさん、任せた」
「応」
小さく動く耳は牙猪の足音を正確に拾っているんだろう、ガルドさんがジリっと立ち位置を変えるのに合わせ、オレも立ち位置を変える。ガルドさんの後ろから横にずれ、東門へ続く畦道の上に陣取って柵を見つめた。
肩の力を抜き、視野を広く持つ。微かな音、風の匂い。感覚を研ぎ澄まし、矢を引いたその時。
穴を塞ごうと立てた杭を跳ね飛ばし、真っ黒な塊が突っ込んできた。
真っすぐに突進してきた牙猪を、一歩踏み込んだガルドさんの大盾が受け止めた瞬間、家でも壊れたのかという大きな音が響く。
互いの踏み込みで抉れた地面と飛び散る土が、なぜかゆっくり見える。
と、銀色の光が空から地面に刺さり、牙猪の首が地面を跳ねる。
真正面から突進を受け止めたガルドさんが体を躱し、蹈鞴を踏んだ牙猪の首を一刀両断したのだと、瞬き一つした後に理解が追いつく。
「すげぇ……」
その身体つきと経歴、まとう空気と装備から、只者ではないと思っていたが、こんなにも強いだなんて。予想以上に一方的な戦いを見せられて、オレは腕から力を抜くのを忘れて見入っていた。
「リオ」
「今そっちに行く」
結局撃つことのなかった矢を矢筒に戻し、ガルドさんの近くに駆けよると、畑の上で頭を失った牙猪の身体が痙攣していた。
「左の牙、短い。間違いない」
「確かに。これで今日の仕事は終わりか」
地面を跳ねて転がった頭を見下ろせば、確かに左右の牙の長さが違う。依頼にあった牙猪で間違いないだろう。
「ガルドさんの腕は大丈夫か? 盾は?」
「問題ない。盾、素晴らしい」
傷も凹みもない大盾を見せられ、あまりに簡単に終わった仕事に拍子抜けしていると、後ろから声がかかった。
「おおい、あんたら! 大丈夫か?!」
「あー、大丈夫。終わったよ」
「獣人はすげえな。あの牙猪を一人でやっちまうなんて。ありがてぇ、ありがてぇ!」
「ガルドさんの腕が良いんだよ」
小剣を鞘に納めた男は、仇を討ってくれてありがたいとオレとガルドさんの肩や背中を叩いて何度も感謝の言葉を口にする。
「しっかし、予想はしてたけど、オレの出番なかったな」
「リオ、討伐希望?」
「オレは今回控えだから、これで正解。な、これでハッキリしたろ。ガルドさんには、こういう依頼が良いんだって」
「リオ、間違いない」
外壁の東門が開き、役人や町人がこちら目掛けて走ってくる中、オレ達は笑いあった。
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