婚約破棄を言い渡された悪役令嬢は酔った勢いで年下騎士と一夜を共にする

兎束作哉

文字の大きさ
20 / 45
第2章 ヒロイン襲来

09 姉妹の過去を断ち切って




「何よ! 私を憐れみに来たの! 悪役令嬢のくせに! 私を不幸にして、何が面白いの!?」
「全く、ずっとこの調子だよ」


 地下牢に入れられても尚、反省していない様子のキールは私の姿を見るとギャンギャンと犬のように吠えてきた。美しいドレスもはぎ取られて、見窄らしい白い服装に着替えさせられていた。まあ、元が聖女っていう設定だったんだから、純粋に白い服でも可笑しくないなあ、と私の中の聖女像が他とずれていると感じつつも、彼女を見る。
 私の隣には、キャロル様がいて、彼は手のつけようがないと、肩をすくめていた。まあ、妹が罪を正直に認めて改心するって、私は思っていないし。何よりも、彼女は自分が間違ってるっていうのを認めるのが嫌いだったから、予想はついていたけれど。ここまで、自分のしたことを何一つ反省していなくて、悪いと思っていない彼女は異常だった。いつから、こんな風になったんだろうか。
 因みに、殿下ではなく何故キャロル様なのかといえば、殿下はよほどキールのこがショックだったようで、部屋に引きこもってしまったらしい。まあ、これに懲りて、女性を外見だけで見るのをやめてくれれば良いのだけど……


「貴方は、自分が悪いことをした自覚無いの?」
「はい!? 悪いことって何よ。全部、アンタのせいじゃない」
「話にならないわ」


 ここに来たのは、彼女が改心していれば、彼女とゆっくり話す機会を貰おうと談判しようか考えてきたのに、この調子じゃ話すだけ無駄だと持ってしまう。
 前世から散々彼女には酷いことをされてきたし、仕返しをしても……と考えたが、彼女と同じレベルに堕ちるのだけは嫌だった。私と、彼女は違うと。
 私が愛されないなんて、誰が決めつけたのだと、そう彼女に証明したかった。彼女が羨ましくなかったわけじゃない。私の好きな人を奪って、私の好きなものを奪って。奪われてばかりの人生だった。私が、頑張れば頑張るほど、彼女がそれら全てを奪って輝いて。そんなことの繰り返しだった。
 だから、この世界で自分の幸せを掴もうとしたのだ。奮闘して、でも悪役令嬢として名の広まってしまた私には、それを覆すのが難しくて。そして、矢っ張り、この子に全てを奪われてしまった。
 私の最愛人も。


「何で、私がこんな所に入れられなきゃいけないのよ。全部アンタのせいでしょ。アンタが、皆に嘘広めたんでしょう」
「はあ……第二皇子の誕生パーティーを滅茶苦茶にした本人が何を言っているの。危うく、キャロル様は命を落しかけた。そして、貴方の親友だったアドニスも傷つくところだった」


 実際傷ついていた。
 アドニスは、ゲームの設定上、キールの親友だった。だから、キールはそれを利用して、アドニスに罪を被せようとしたり、彼女を駒として使い捨てようとしたりと、散々彼女をこき使ってきた。挙げ句、彼女を脅して、キャロル様を彼女から奪おうとしていた。

 自らの手を汚さず指示をした、お茶会での令嬢の毒殺未遂や、私を誘拐し、その先で強姦しろと男達に指示していたこと、あとは帝国で禁止されている人身売買に荷担していたこと。大々的にはここら辺があげられるのだが、私が許さないのは、私の婚約者まで奪おうとしたことだ。勿論、それは私の私情だし、前者が最も彼女が罪に問われることなんだろうけれど、私からしたら、婚約者を奪われそうになったことが一番許せなかった。だって、キールは私の推しと結婚が決まっていたのに、そして、新たに掴んだ私の婚約者を、本物の愛までも踏みにじったのだから。
 それが、許せなかった。嫌だった。

 キールは、私が怒っても尚、自分は悪くないと主張する。何処までも我儘で救いよう無いと思った。もう、決まっているけれど、このまま国外追放で、厳しい規律のある修道院送りになってしまっても、私は同情しないと。


「最後に聞かせて、キール。貴方は、ロイとどういう関係だったの?」
「は? 何よ、今更。ロイ君とどんな関係だったかなんて? 聞いたら、きっと絶望するわよ」


と、彼女は下品に笑う。ヒロインの身体でそれをされると、これまでヒロイン視点で話を読んできたため、凄く不快な気持ちになった。

 そんな風にしか笑えないし、最後まで私を笑いたいんだと私は、ため息をつく。
 キールは思い込みが激しいところがあるし、思えば、彼女は過剰な自信家だった。だから、彼女視点ではそう見ているのかもだけど、実際どうか分からない。だから、一応参考までに聞こうと思ったのだ。ロイとどんな関係だったか。この後、ロイに会う予定があるから。


「ロイ君にね、格好いい騎士ですね~っていったら、何か気をよくしちゃってぇ。それから話し込んじゃって、ロイ君がもっと一緒にいたいですっていったから、抱かせてあげたのよ。そしたら、アンタよりも良いっていわれてぇ。私って罪な女よね。アンタの婚約者は、私にメロメロなの。アンタなんてもう抱けないわよ。早く婚約破棄されることね」
「分かったわ、ありがとう」
「可哀相ね~ハハッ! 私を陥れた罰よ。アンタは一生幸せになれないのよ……ッ!?」


 ためらいなんて無かった。
 バシンッと地下牢に響く乾いた音。目を丸くし、何度も瞬きをした彼女は、恐る恐る私に顔を向けた。そして「ひっ」と短い悲鳴を漏らし、ガタガタと震える。そこまで、怯えなくても良いじゃない。


「シェリー嬢」
「ごめんなさい。謹慎処分でも何でも受けるわ」
「いや、良いんだよ。君の気が済むなら……僕も、頭にきちゃったからね」


と、キャロル様は私を擁護してくれた。

 私は、キールをもう一度睨み付ける「何よ……」と威勢を無くした、キールが私を見る。まるで、私が悪役だといわんばかりに。


(そうね、貴方にとって私は、貴方を輝かせるための創り上げられた悪役だったかも知れない。でも、違う)


 私の物語の主人公は、私だ。


「地獄に堕ちるのは貴方よ、キール。しっかり反省しない。これまでの私から奪った人生の全てを」


 じゃあ、と私は彼女に言い残し、踵を返す。
 後ろから「悪かったから! 謝るから! 許して!」と彼女の泣き叫ぶ怖えが聞えたが、私はもう彼女の言葉に何も耳を貸さなかった。まずは、ロイの真意を、真相を聞かないと、と彼女のことはもう終わったこととして、私はロイの元へ急いだ。
 もし、先ほどキールがいったことが全て本当だったら。


(そんな、わけ……ないわよね)


 少し、手が震えていたのを、私は気づかないフリをした。


感想 2

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

誘拐された公爵令嬢ですが、なぜか皇帝に溺愛されています』

富士山麓
恋愛
舞踏会で王太子から婚約破棄を告げられそうになった瞬間―― 目の前に現れたのは、馬に乗った仮面の皇帝だった。 そのまま攫われた公爵令嬢ビアンキーナは、誘拐されたはずなのに超VIP待遇。 一方、助けようともしなかった王太子は「無能」と嘲笑され、静かに失墜していく。 選ばれる側から、選ぶ側へ。 これは、誰も断罪せず、すべてを終わらせた令嬢の物語。

【完結】✴︎私と結婚しない王太子(あなた)に存在価値はありませんのよ?

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
恋愛
「エステファニア・サラ・メレンデス――お前との婚約を破棄する」 婚約者であるクラウディオ王太子に、王妃の生誕祝いの夜会で言い渡された私。愛しているわけでもない男に婚約破棄され、断罪されるが……残念ですけど、私と結婚しない王太子殿下に価値はありませんのよ? 何を勘違いしたのか、淫らな恰好の女を伴った元婚約者の暴挙は彼自身へ跳ね返った。 ざまぁ要素あり。溺愛される主人公が無事婚約破棄を乗り越えて幸せを掴むお話。 表紙イラスト:リルドア様(https://coconala.com/users/791723) 【完結】本編63話+外伝11話、2021/01/19 【複数掲載】アルファポリス、小説家になろう、エブリスタ、カクヨム、ノベルアップ+ 2021/12  異世界恋愛小説コンテスト 一次審査通過 2021/08/16、「HJ小説大賞2021前期『小説家になろう』部門」一次選考通過

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる

葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。 アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。 アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。 市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜

桐生桜月姫
恋愛
 シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。  だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎  本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎ 〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜 夕方6時に毎日予約更新です。 1話あたり超短いです。 毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。