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第4章
10 もう一度あの夜のやり直しを◇
しおりを挟む「最高の夜だな」
「はい。昨日の今日であんなことがあったのに、しっかりとパーティーも行われましたし、それに、ゼインが次期皇帝に……」
「即位式はもう少し先だろう。それと、貴様も俺の妻になるのだから、その自覚も持ってほしいものだな」
「持っています! その、うれしくなっちゃって。私が、ずっと夢見てきたというか、ゼインが皇帝になるのを夢見てきたので」
誕生日パーティーは滞りなく終わり、私たちは祝福に包まれながら部屋に戻ってきた。
慣れないヒールでずっといたせいか、足が痛くてすぐに脱いでしまったのがもったいなかったが、ドレスもすべて可愛いと言ってくれて、それが何よりもうれしかった。
殿下もまんざらでもない顔でそうだな、とあの時の誓いを思い出すように笑い、ベッドサイドに腰かける私の横に腰を下ろすと、私の手に自身の手を重ねてきた。
「ペチカ、覚えているか」
「何をですか? 誓いのことなら……」
「そ、そうじゃない。その、俺が貴様に少し前に言ったことだ」
と、殿下は顔を染めて言うのではて? と首を傾げたら、殿下は我慢ならないというように私の手を掴んで叫ぶ。
「一年の間に俺に惚れなかったら、婚約破棄しようという話だ。その、貴様は俺に惚れただろ」
「その言い方好きじゃないです。けど、まあ、そうですね」
何を言い出すかと思えば、ずいぶんと昔のことだった。殿下は、はあ……とため息をついて「覚えていないだろ」と言いながら私をちらりと見る。確か、私が一人二役がばれるのが怖くて婚約破棄したくてというところから始まって、それで……
「あっ」
と、そこまで思い出し、この賭けで殿下が勝ったら何を所望されるか思い出し、私はあご先から頭のてっぺんまで徐々に赤くなって殿下を見た。殿下はやっと思い出したか、とフンと鼻を鳴らす。
「胸をもませろといった」
「そ、そういえば……そうでしたね。でも、もうすでに揉んでいるのでは?」
「そ、それはそうだが。そうじゃなくて、あれは治療の一環でだな。だから、その、ようやく、というか」
殿下がどんどん小さくなっていくのでおかしくなった。
確かにもう何度も揉まれたし、必要以上にもまれた気がするし、おかげで大きくなった気もするのだが、そういう賭けの報酬とかは一切考えずにだったので、この際その賭けの報酬をプレゼントとして殿下に送るのもいいかと思った。まあ、私の負けなのだが。
(そんなところから始まったのに、こんなふうになるなんて思いもしなかった……)
ずいぶんと昔のことのようにも思える。でも、今でも思い出そうと思えば、その時のことをはっきりと思いだせるというか、殿下の変わっていく表情を、変わっていく自分を。
殿下のほうを見れば、だめか? と押してくるような顔で私を見つめていた。それがかわいくて、思わず笑みがこぼれてしまう。
「いいですよ。惚れてしまった私の負けですし」
「こうなる運命だったんだ。受け入れろ」
そう言って殿下は私を押し倒す。ボフンとベッドが私たちを受け止め、殿下は黄金の髪をかき上げる。耳から越智ら髪の毛を目で追いながら、私は今から抱かれるんだと胸の前で手を交差する。
「……今から貴様を抱く、ペチカ」
「はい」
「…………やっと、貴様にやさしくできるな」
「いつも優しいじゃないですか」
「そうか、そうか?」
「そうですよ」
そう言い合った私たちは、唇を重ねる。
殿下は私を抱くときひどくしたことなんて一度もない。私の同意を得て触るし、私が嫌がることは一度もしたことがなかった。ただ、胸への口づけは執拗以上だったのだがそれ以外は、まるで壊れ物を扱うように丁寧に暴いていく。その手で何人人を殺したのだとか、考えてしまうけれど、そんな人の手とは思えないくらい優しくて、溶けてしまうような手つきで。
離れていく唇が名残惜しい。私たちをつなぐ銀色の意図がぷつんと切れて、殿下は悩まし気に吐息を漏らす。
「胸に、触れてもいいか……?」
「は、はい。あの、ゼインはなんで私の胸が好きなんですか?」
「ん? なんでだろうな……貴様が初めて俺に触れさせてくれた部分だからか?」
と、殿下はあいまいに答える。確かにあの時は婚約破棄をと囚われて、嫌われようと触れさせたが殿下がそんなふうに思っているなんて知らなかった。また、そんなふうに執着するようになるなんても思わなかったし。さらしでつぶしていた胸がやわらかくて気持ちいとかそんなことを言ってくれるのは殿下だけだろう。
殿下は、恥ずかしそうにそう言った後、我慢できないと、私の下着を剥ぎ取って、胸に向かって手を伸ばす。外気のひんやりとした空気に触れ、私の胸の先端はツンと主張する。それが彼に触ってほしいと言っているようで恥ずかしく隠したくなったが、その前に殿下の手が到達して、弧を描くようにもみ上げる。
「んんんっ」
「大きくなったな」
「誰のせいだと」
「俺だな」
「あっ」
殿下は、やわやわと胸を触りながらその先端をつまむ。私は思わず声を漏らして口を押えるが殿下はそれを許してくれない。
「声を聞かせろ」
「で、でもっ……恥ずかしい……」
「貴様のすべてを知りたいんだ。だから、我慢するな。俺にすべて見せろ」
「んぁっ!」
胸の先端をぎゅっと摘ままれて、私の口からあられもない声がこぼれた。殿下に散々いじられたそこは敏感になっていて、少しの刺激もすくいあげ体に伝っていく。殿下はそれに気をよくして、口に含み、器用な舌先でころころと転がし、優しく噛んだ。
「あぁっ! だ、だめっ」
「ハッ、どの口が言う。俺にこうされるのが好きなくせに」
誰のせいだと、と言いたかったが、口から洩れるのは喘ぎ声で、殿下は口に含み舌で転がして甘噛みして私の胸を余すことなく刺激していく。私はもう最初の恥ずかしがっていた自分は忘れ、もっと気持ちよくしてほしいと殿下に懇願するように腰を揺らした。
「そんなに欲しがって、ペチカはそんなエッチな女の子だったか?」
「エッチな女の子とか言わないでください。日に日に卑猥になっていってます。ゼイン」
「言葉でなぶられるのが嬉しいくせに……ほら、こんなに溢れてる」
殿下はそう言って、胸への刺激を続けながらもう片方の手で下着の上からその指先を当てる。そこはもうすっかりと濡れていて、殿下は足から抜き取った下着に絡みつく銀糸を見て悪い顔をする。
くちゅりとえっちな音がして、私はそれに恥じらい顔を背けた。だが、それが殿下の加虐心を煽ったのか、ぬぷりと指を沈みこませ、すぐに二本目と本数を増やし、ばらばらに動かし始めた。
「い、やっ、ああっ」
いきなりやってきた刺激に私は思わず腰が浮き、快感を逃そうと腰を動かすが、殿下はそうさせてくれず、私の腰を押さえつけてさらに深く指を沈みこませる。長い指は奥へ奥へと侵入し媚肉を刺激する。くちゅくちゅと水音が大きくなっていくのが恥ずかしくて耳を塞ぎたいのに、殿下はそれを許してくれない。それどころか、もっと聞かせろと言わんばかりに指の動きを速める。それに呼応するように私の腰の動きも激しくなり、もう何が何だか分からなくなってきた。
「も、ゼイン、や……ゼインの」
「かわいいおねだりだな。なら、応えてやらなければならないな」
じゅぷっ、と音を立てながら彼は指を引き抜き、自身の熱くなったそれを掲げ私に見せつけてきた。反り立つそれは、やはり槍のようで、太く赤黒くグロテスクだ。いつもこれが私の中に入っているのだと思うと、おなかの奥がきゅんと疼く。もうすっかり、彼のそれに夢中になってしまっているのだ。
殿下は、それを数回しごいた後、私の秘所にあてすぐに入れず、ぬちゃぬちゃと塗り付けるようにじらす。小さな蕾を執拗に刺激すれば、私の体はすぐに反応して、膣口をひくつかせる。
「ほしいといえ。そしたらくれてやる」
「なんで、上から」
「いらないのか?」
「…………い、るから。ほしい、ほしいの、ゼインのすべては、私のものだから!」
「ハッ、貴様も傲慢だな、ペチカ」
殿下のお気に召したようで、彼はゆっくりと熱い剛直を沈みこませる。先が入ってしまえばそれからは飲み込んでいくように、中へ中へと入ってくるそれに私は思わず息をのんだ。指よりもさらに大きな質量に体が悲鳴を上げるが、その痛みも快感となって私を襲う。もう何度も受け入れたそれは、すぐに私の最奥に到達してこつんと子宮口を叩いた。
「あぁあっ! おくっ、ふか」
「ああ、ここが、ペチカの奥だ。俺の形になじんでるな、いい子だ」
と、殿下は言い終えないうちに腰を振り始める。奥をガンガンとえぐられていく快感に私は何も考えられなくなり、ただ喘いで中にあるものを強く締め付けることしかできなかった。その状態で何度も中へと穿たれればあられもない声をあげ、殿下を喜ばせる。
優しくするといっているのに、その腰使いは激しくなっていくばかりで、でも、幸せそうな殿下を見ているとこっちまで胸がいっぱいになって満たされる。
「あぁっ、あ! んっ、ああっ」
「ん……そんなに締め付けるな」
「そ、んなのっできなっ……! あぅ!」
先ほどとは比べ物にならないくらい中がきゅううと収縮し、殿下に絡みつく。それを振り払うように彼は腰を動かし続ければ、私はまた大きな声をあげながら達した。何度も達していれば、もう達するのがつらいと、けれども中を擦られれば嬉しそうに甘くわななく。
「あ、あああっ。ひっ、あんっ、やあっ」
どれだけ、もう苦しいくらい気持ちいといおうとしても、口から洩れるのは母音ばかりで、伝わっていない殿下は止まってくれなくて何度も腰を打ち付けられる。もう何度イったか分からなくなってきて、行き過ぎた苦しさも、すべてが開館となって遅い、私はもっともっとと強請るように腰を揺らした。
「あ! あんっ! ああぁ!」
「かわいいな、ペチカ……」
「ひゃああっ! あああっ」
ぐちゅんっと子宮口を強く突かれて私の頭が真っ白になる。きもちいいことしか考えられなくなり、殿下にもっとたくさん突いてほしくて足を彼の腰に絡ませる。それに気をよくしたのか、彼はさらに激しく腰を打ち付け始めた。ぱんっぱんっと肌のぶつかりあう音と水音が混じり合い、もう羞恥心なんて微塵もなく私はただ殿下を求める。もっと気持ちよくなりたい、突いてほしいと淫らなおねだりをして彼のものに絡みつく。
「あ! ああぁ! ゼインっ」
「ああ、ペチカ……俺の……」
「もぅ、だめっ……! イっちゃ……!!」
もう何度目になるかわからない絶頂が私を襲う。中が痙攣して彼を締め付ける。それに呼応するように彼も私の最奥に精を吐き出した。熱いものが中に注がれて、その感覚に体が震える。殿下はすべてを吐き出すように緩く腰を振り、何度かそこを押した。避妊魔法は繰り返しかけているが、そのうちそれらもいらなくなる。でも、そんなこと関係ないというように殿下は最後の一滴まで私の中に擦り付けて、ゆっくりと腰を引いて出ていく。
ぬぽんと彼の熱が抜け、中から大量の白濁があふれ出す。それがなんだか悲しくて、まだ中にいてほしくて、すりっとおなかを撫でれば、殿下がごくりと喉を鳴らしたのが分かった。
「ペチカ……」
「い……まだ、ゼイン」
「だが、これ以上は……」
「まだ一回、じゃないですか。そんな……! 私は、まだ欲しいです。ゼインが」
「くっ、そ、あれだけイきたくないと喚いたくせに。負けず嫌いか!?」
そういいつつも、殿下は私を優しく回しうつぶせにすると、おしりを高く持ち上げて、再び熱を取り戻した自身のそれを殿下の精があふれて止まらない蜜口に当てる。
「こうなったら朝まで付き合ってもらうからな。ペチカ。泣き言はなしだぞ」
「はい、望むところです。ゼイン」
「まったく、これを決闘かなにかと間違っているか知らないが……これは、俺たちの、愛をはぐくみ、確かめるための行為だからなッ!」
と、殿下は勢いよく私を突き刺す。串刺しになったように私は口から音のない悲鳴を漏らす。目の前で星がちかちかと飛んで、快楽に降りてこれなくなる。だが、殿下はそんな私を気遣う様子もなくまたガツガツと腰を進めた。
そうして、何度か体位を変えて、精を吐き出し、ベッドに沈み込むころには、殿下の言った通り日が昇っており、最後の吐精のあと、殿下は私を包み込むようにして倒れこんだ。
「ペチカ、生きているか」
「生きてます、なんとか……」
「そうか……好きだ。ペチカ。ようやく、俺のものに……」
「ゼイン?」
すーすーと幸せそうに、彼が耳元で寝息を立てるものだから、私は動かない体をどうにか動かして、彼の顔を見る。横で子供のように眠る殿下の顔を見て、私は愛おしくて汗だくの体で彼に抱き着き、行儀悪く足で毛布を手繰り寄せ彼が寒くないようにとかけてやる。
日が昇ってしまったが、私も睡魔に襲われ、彼の胸の中で小さくなって目を閉じる。この幸せも、温かさも、きっと明日も続くのだろうと多幸感に包まれながら私は深い眠りへと意識を落とした。
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