一人二役男装令嬢は、一目惚れしたと迫ってくる鈍感暴君様と婚約破棄したい

兎束作哉

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番外編SS

騎士服の間違った使い方◇

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 昼下がりの殿下の執務室、私はとあるものを見せるために殿下のもとを訪れていた。


「近衛騎士団の制服! 見てください、懐かしいですよね」
「この間までそれに袖を通していただろう」
「ですけど、もう着ないって決めてから数週間たっていると思うと、懐かしく思うんです!」


 近衛騎士団を自主脱退して早数週間たとうとしてるが、時々訓練場に足を運んでは近衛騎士団の同期たちと他愛もない話をしては盛り上がった。もう剣を握らないのかと言われて、今は妃教育を詰め込んでいると、もう遅れすぎた教育をスパルタで受けていると話せば近衛騎士団は「アジェリット公爵令嬢ならいけます!」と背中を押してくれた。
 剣は握らないわけではないし、殿下に勝つまでは私は本当の意味で剣を捨てることはできないだろう。だが、騎士服に身を包むことはもうない……と思っていたのだが、お兄様の計らいで記念にと数着もらった。
 自分が少し子供っぽいとわかりつつも、騎士服を着た姿をもう一度殿下に見てもらいたいと思いここまで来たが、殿下はそこまで気乗りしない感じで作業をしていた。
 邪魔しに来たのが悪かったのか、今は単純に気分じゃないのか……それか、だまされたことを思い出しているのか、などいろいろ想像できたが、だまされたとは思っていない、と前に言ってもらったことがあるのでそれはないだろうと、それだけは考えから排除することができた。


「ベテル・アジェリット……か」
「……べテルは、もういません」
「だが、それを見ると、懐かしく思うな。俺に突っかかってきた超新星か」
「ゼイン……」


 殿下との二度目の出会いは、ペチカではなく、べテルだった。
 ペチカに二度目の一目惚れをしたといっていたが、順番としては、ペチカ、べテル、ペチカの順番で彼と会っている。だから、殿下が懐かしく思うのも無理はなかった。
 殿下の中にべテルが生きているというのが、少しうれしくて、私は殿下の前で騎士団の敬礼をする。


「ベテル・アジェリットは、生涯殿下に尽くします……て、どう、ですかね」
「ああ、そうだな。生涯尽くしてくれ、期待しているぞ。ペチカ・アジェリット」
「なんか、あまり気乗りしないみたいですけど」
「まあ、そうだな。気乗りしないわけではないが、貴様のその胸を見ているとな」
「また、胸ですか!?」


 殿下は私が言った瞬間目をそらしたが、私ははっきりと殿下が私の胸を見ていることに気が付いた。どれだけ私の胸が好きなんだと問い詰めたくなるが、私が殿下に自分から触らせた部分だし、彼も思い入れが深いのだろう。


(胸に思い入れが深いって何……)


 それはおいて置いて、最近殿下のせいで胸が大きくなって肩がこる気がするのだ。かわいい下着がなくてオーダーメイドしてもらい、ドレスも採寸を図りなおすとか。魅力的になった気はするけれど、その分失ったものも多い気がして複雑だった。殿下にはこの気持ちはわからないだろうけど。


「確かに、胸がある騎士は、騎士じゃないかもしれません」
「帝国には、女性騎士団もあるが?」
「それでも、あそこはスリマーで、美肉な感じの騎士たちですから、こんなやわらかい胸など……」
「確かにそれは、ザ・男装という感じがするな。男装にもなっていない」


 と、殿下は言いながら立ち上がると、鏡の前でうろうろしていた私の後ろに立って、ポンと肩に手を置いた。


「やはり、体格差があるな」
「男と女ですから……でもゼインは気づいていなかったんでしょ。鈍感だから」
「イグニスも言うが、鈍感ではない。それに、いろいろと余裕がなくて気付かなかっただけだ」


 殿下は言い訳をしながら顔をそらした。それも鏡を前にしたらしっかりと見えてしまい、なんだから笑えて来てしまった。
 殿下もかわいいところがあるな、なんて思いながら、私は鏡に手をついた。鏡に映っているのは髪の毛の長い、確かに女性が男性の服を着ているだけの男装女子だ。ペチカ・アジェリットとわかる体つきで、体間も丸みを帯びている。でもあの夜にあったべテルは、もっとたくましくて、筋肉もついていて……


(お母様の薬が効いていたら私はあんなふうになっていたのかな……)


 考えると恐ろしいけれど、男になるということはそういうことで、達せない境地というか、決定的な差を見せつけられたような気がした。
 私はぶんぶんと首を横に振り、殿下の反応も面白くなかったので着替えてくるとその場を離れようとすると、背中あたりに妙に熱い固いものが押し付けられていた。


「ぜ、ゼイン!」
「すまない。興奮した」
「ど、どこに興奮しているんですか!?」


 その熱い棒が何かなんて、もう何度も彼を受け入れていればわかる。
 興奮した、と鏡に映った彼は顔を赤くして、申し訳なさそうに眉を垂れ下げていたが、その下半身は全く申し訳なさそうではなく、擦り付けてきていて、言動が一致していないと私は抗議の声を上げる。
 だが、この間のこともあってこれ以上殿下を避けるのもな、とも思い、動けなくなる。


「ゼイン、自制しているんじゃなかったんですか……その、性欲を」
「……く、だが、久しぶりのペチカの男装だぞ?」
「また、私のせいにして……べテルとして抱かれてあげましょうか?」


 と、私が意地悪に聞けば、殿下はむっとした顔で「まだ、俺がべテルが好きだと思っているのか? 男色家だと?」と私の腰をするっと撫でた。それだけでわかりやすく私の腰ははねて、内またになってしまう。


「男装した、ペチカとして抱きたい。いや、ペチカしか、俺は生涯抱かないと決めている」
「ぜ、ゼイン……」


 鏡越しにぶつかる視線。殿下のルビーのきれいな瞳は、私をじっと見つめていた。
 そして、一度顎に手を当てて考えるそぶりをしてはまたこちらを見たが、瞳の中の欲に濡れる色が消えることがなかった。見つめあって、首を傾け顔を上げれば彼はそれにこたえるように後ろから私にキスをする。やはり少し首は痛いのだが、彼の舌が口内に入ってきたのを感じ、私はそれに合わせるように舌を動かした。入りきらない唾液は流れ出ていく。キスをしながら、彼は器用に騎士服のボタンを外し、下着の中に手を入れそれはもう愛おしそうに胸をもむ。


「んっ、ぜ、ゼイン」
「その格好で、その声、そそるな……」
「んっ、ああっ」
「こんなにも胸が弱くて、騎士が務まるか?」


 くすくすと上からおってくる声に耳が茹りながらも、彼の声に、胸をもむその手に私は快感を拾い上げずにはいられなかった。
 しかし、鏡の前。自分の顔も見えるし、何より立ちっぱなしゆえに、腰が引けて、がくがくと足が震えていた。このままでは倒れてしまいそうなのだが、殿下は私の腰を支え、今度は器用にベルトを外して、下生えをかき分けながら、私の秘所に触れる。そこはすでに濡れており、ぬちゃっと音がたっていた。


「胸だけで、こうなっているとは、ペチカも変態だな」
「ひあ、それは……ゼインがっ!」
「……俺のせいか? 本当に?」


 後ろから耳にささやかれる声に私は首を何度も縦に振る。そうしないと、達してしまいそうになるからだ。声だけで達するなんて、胸だけで達するなんて恥ずかしすぎる。でも、殿下に作り替えられた、快感を拾い上げすぎる体は言うことを聞いてくれない。
 殿下は私のその反応に気をよくしたらしく、私の耳を舐めながら指を動かす。


「あっ、ああっ! あ……」


 もう立っていられずに膝から崩れ落ちそうになると、殿下が腰を支え、ついにはズボンと下着をすべて剥ぎ取ってしまった。上だけ着ている状態。そこを隠すような長さがない上着をどうにか引っ張ってみるが、殿下によってぬらされたそこから蜜が垂れて、余計いやらしく見えてしまう。鏡を見なければいいのに、逃げる場所がないから、そこに映った私を見るしかなくなってしまった。


(なにこれ、こんな、私、ぐちゃぐちゃな……)


 快楽に溶け切った自分の顔がそこにある。目にハートが浮かんでいるようなとろけた表情に、服は騎士服なのに、まったく騎士としての姿を保っていられない女の子の姿がそこにはあった。


「かわいいだろ?」
「かわいいって、そんな、自分の顔をかわいいだなんて」
「かわいいんだ。ペチカは」


 そう言いながら、殿下は自身の昂ったそれを取り出しぬちゃぬちゃと私の股に摺り寄せた。鏡にその行動が映り、私の白い太ももの間を殿下のグロテスクな赤黒いそれが行ったり来たりする。ぽたぽたと、床にシミを作りながら、殿下は容赦なく私のそれにこすりつける。


(は、入っちゃう!)


「ゼイン!」 


 私は大声で彼を呼んだが、もう遅かった。


「んああっ……ああっ!」


 いつ入ってくるんだろうと、そんな期待もそこそこに、ぐじゅっと生々しい水音が響いたと思うと一気に熱が押し込まれた感覚に陥る。ずっと待っていた彼の熱に頭がバカになりそうで、腰を引いてその快感をどうにか逃がそうとするが、それは逆効果だった。


「ああんっ! あ、あっ……」


 もう立っていられない。つま先立ちになり、逃げようにも彼に腰を抑えられていて逃げられない。鏡に手をついて、おしりを殿下に突き出す形で何とか倒れるのを防ぐが、それが自ら殿下を誘っているようで恥ずかしく、私は鏡越しに見える自分の顔を嫌になるが、鏡の向こうの殿下は私と同じように気持ちよさそうに目を細めているからまだ耐えようと思えて来た。


「後ろからじゃ、見えなくてもったいない気もするが……こういうのも、たまにはいいな」


 男装プレイなのか、鏡を見てのプレイなのか。
 解けた頭は破廉恥なことばかり考える。どちらにも、きっと興奮しているのだろう。殿下が私の中でどくどくと脈打っているのがわかる。


「あんっ、うんっ、ああ……」
「絡みついてくるな、ペチカの中は。そんなに俺が好きか?」
「す、すきっ、ああっ……!」


 ずぼっと腰が引かれまたばちゅんと奥まで突かれる。目の前に白い星が舞うような快感に打ちひしがれていると殿下は私の耳を甘噛みする。私はその刺激にも、ぎゅうっと殿下を締め付けてしまう。


「本当に……かわいいな」


 鏡越しに私を見る彼の瞳は、まるで愛おしいものを見るようにとろけていた。そして、また腰を打ち付けては、彼は私の胸に手をやり揉みしだく。


「んあっ、あ、ああ! ぜ、ぜいん、もう、だめ、足が、あし……あぁあぁっ!」


 もう限界だった私は彼に助けを求めるが、殿下は意地悪に笑っては腰を打ち続ける。もう立っていられなくて、私は崩れ落ちるが殿下は腰を掴み直すとまだ打ち付けてくる。鏡に手をつき、足を広げ、殿下に後ろから突かれて……なんて恥ずかしい姿だろう。でも、もうそれどころじゃない。気持ち良すぎてどうにかなりそうだった。


「ハッ、それでよく騎士が務まっていたなペチカ。立てないか?」
「は、はい。すみましぇ……もう、たてな……」
「いいだろ、俺が支えてやる」


 立っていられないという抗議の声をようやく聴いてくれたかと思いきや、彼は自身のそれを私の中に突き刺したまま、私を抱き上げた。先ほどよりも大きく足を開き、局部が鏡に隠されることなく映し出される。私のそこに、殿下のそれが入っているとまるわかりで、恥ずかしさに私は顔を隠すが殿下はそんなこと許してくれなかった。


「よく見ろペチカ。俺とお前が繋がっているところ」
「ぜ、ゼイン! もう、やめっ」
「そんなかわいい顔をしてもだめだ」


 首を横に振りイヤイヤと拒否する私をよそに、鏡の前で見せ付けるように揺すられる。殿下のそれが抜き差しされるたびに蜜があふれて卑猥な水音が響くがもうそんなことを気にする余裕なんてなくて、ぎゅっと目を瞑ってやり過ごすが視覚を遮断すれば、ぴちゃぴちゃと耳をなぶられ、一つでも五感を遮っていると、そこに集中してしまうと、私は目を開く。


「いやだっ、恥ずかしいっ。ぬ、い、抜いて、ゼイン!」
「イかせて?」
「そんなこと言ってません、から! ああんっ」


 どこをどう聞き間違えたらそうなるのだろう。そして、彼はイかせてという言葉を実行するように腰を打ち血ける。
 腰を何度も打ち付けられるたびに、ぴゅっぴゅっと透明な潮が鏡にかかる。まるでおもらししたみたいで私は涙が止まらなくなるが殿下はやめてくれなかった。むしろ楽しそうな声で私の耳にささやいてくるのだ。


「イキたいんだろ? 俺も、貴様の中でイキたい」


 そんなはっきり言わないで、と言いたかったが、「ペチカの中で」と再度彼に耳元でささやかれ、愛おしさがこみあげてきて、こくりとうなずいてしまう。涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、彼にばちゅんと最奥まで突き立てられて、体がのけぞる。彼に抱きかかえられているなんてもう些細なことで、彼はラストスパートと言わんばかりに奥へ奥へと入り、そして、そこで熱い熱が放たれた。


「あっ……ああ」


 熱くて火傷しそう。お腹の奥に届くような勢いに腰が震えるが、殿下はぎゅっと後ろから私を抱き寄せてくれて、まるで逃がさないと言わんばかりなのだが、それを咎める気力もないまま私はその熱をただ感じていた。


「騎士服、べたべたになってしまったな」
「誰のせいだと……」
「また新しいのを送ろう。それでいいか?」
「そういう問題じゃありません……はあ、でも」
「でも?」


 よかったなんて、言えるわけもなく、それは騎士としてどうなんだと最後の理性が働きかけ、何でもないです。と、私は返した後、彼にギュッと抱き着いてソファまで運ぶよう指示した。またそこで、第二ラウンドに突入するなんて予想できず、「はいはい、俺のかわいいお姫様の言うとおりに」と頬を摺り寄せてきた殿下に甘えながら私は恥ずかしさをごまかし、彼の胸に顔をうずめたのだった。

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