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27 親父たち
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就寝前のベッドの中。 ふと気になって自分のスキル欄を覗いてみる。
そこにはグレーアウト状態で【ジャミング】という名のスキルが表示されていた。
これはどう考えても洞穴の中で人面獣が使っていたスキルである。
どうやらほんとうに、あのとき【魔導視】を使って観察しただけで、習得の一歩手前まできてしまったらしい。
これまでの例からすると、グレーアウトで表示されているスキルは少し練習すればすぐに習得できてしまうはずだが。
やってみるか―― ふむ、流石に一発では上手くできないが―― あ、でも、こういうことか――
そんな感じで実験している間に、いつの間にか眠りに落ちてしまっていた。
そして目を覚ました瞬間。俺の中にまたいつものひらめきを感じた。
New【ジャミング】 妨害魔素の乱流を発生させ、探知魔法を撹乱する。
これで完全な習得状態だ。スキル一覧にもバッチリ記載されている。
地味だけれど、応用範囲の広そうな面白い術だと思う。ただし完全に気配を遮断するようなことはできないようだ。あくまで撹乱するだけ。
それにしてもむしろ今は【魔導視】スキルの優秀さが際立つ。
地面なんかに残された魔法の残滓を目視できるだけでも便利だと思ったけれど、他者の使ったスキルの構造まで解析できてしまうわけだ。
まあ今回の【ジャミング】はかなりシンプルな術だったから、それで簡単に出来ただけかもしれないけれど。
観察するには時間も余裕も必要だ。激しい戦闘の真っ只中ではとても出来そうにはない。
そんな朝のひと時。
寝床から起き上がった俺は、雑巾の九十九神さんを手にとって、ボロ小屋の掃除を手早く済ませる。家財道具があまりない部屋だから、あっというまやりおえてしまう。
そろそろお金も溜まってきたから家具くらいは新しく買っても良いかもしれない。贅沢だろうか?
せめてベッドと寝具はもう少し清潔で穴の開いていないものが欲しい。
ただ、大屋さんの雑貨店でも家具は扱っていなかったから、そうなると何処で手に入れるかが問題だ。
掃除を終えたら、今日もまずは冒険者ギルドに向かう。
昨晩は精算もなにもせずに帰ってきてしまったから、昨日の特殊依頼の報酬を貰っておこう。
町にいた全ての冒険者が強制参加する事になった特殊依頼だったが、成功報酬はそれぞれの働きに応じて支払われる事になっている。
ギルドの前まで到着。いつものように入ろうとすると、扉の前に小さな女の子が居た。目が合った。
「あ、あの、お兄さんがエフィルアさんですか?」
「そうだけど?」
「ありがとう!!」
なんだ? 礼を言われるようなことを何かしただろうか、あ、ああ、分かった。昨日の子か?
昨日さらわれていた子だ。わざわざお礼を言いに来たようである。
彼女の後ろには昨日ギルドに駆け込んできたおじさんがいた。扉に顔をぶつけていた人で、たしか孤児院の院長だったような。
おじさんは俺に近づき、
「聖女家も剣聖家も、近頃町の周囲で起こっている異変は、すべて君の責任だと吹聴している。私にはそうは思えない」
凄く小さな声でそう言った。
それからまた小さな声で“ありがとう”とだけ言って、少女の手を引いて帰っていった。
あらためてギルドの中へ入ろうとすると、今度は中から騒がしい声が聞こえてくる。ギャオの声だった。あいつはいつもギルドにいるな。
「ロアァ、昨日洞穴へ入って何をしてやがった、エフィルアの野郎なんかと仲良くよ。なぁ? 教えてくれよ、町にモンスターを呼び寄せていたのはあの闇属性野郎なんじゃあないのか? まさかとは思うがよ、お前もバケモノの仲間なんじゃないよな? 俺はそうは思わねぇけどよ、あんなもんに付き合ってたらどう思われてもおかしくないぜ?」
受付カウンターのロアさんに向かって騒ぎ立てているギャオ。
一緒になって煽り立てているのは、昨日ロアさんに袖にされてた連中だろう。その後ろには少し離れて聖女エルリカ達もいる。
なんとまあ面倒なことをしているのだ、あの男は。
結局のところロアさんと仲良くなりたいのだろうが、何故にそんな意味不明な方向に突っ走るのだろうか。
「ギャオさんすみません。今回の件は全てリナザリア王室から直々の依頼があっての事ですから」
「だから何でそこで王室なんぞが出てくるんだ? おかしいだろうがよ」
とりあえず俺はいつもどおりに受付カウンターへ向かう。
ギャオ達は俺の存在に気づいたようだ。ゆっくりとこちらに近寄ってきて、俺の前に立って通せんぼ。ギンギンに睨みつけてくる。
これはもう、映画でも小説でも良く見る感じのシーンである。一触即発の大乱闘寸前。ギャオなんて今まさに俺の顔面に向けて唾を吐きかけようとしているところ。だったのだが、
ひゅうとペンギンが飛んできて、ギャオの頭を蹴り飛ばした。
「ああん!? このクソ鳥なめやがって」
ギャオは守護神獣に掴みかかろうとするが、その姿はすぐに消えてしまい、そして2階のほうから別の声が響く。
「お前たち、騒々しいぞ」
現れたのはギルマス。ダウィシエさんだ。
彼女の隣には見覚えのあるオジサン2人組もいる。
1人は聖女の父親、神官長である。
もう1人はこの町の領主で剣聖の末裔。聖女の取り巻き男Bの親父でもある。
「エフィルア。上で話があるのだが」
ダウィシエさんを俺を手招きし、そして領主様のほうは、
「聖女様達はこちらへ…… シオエラルお前もな」
聖女とその仲間を呼び集めて外へと出て行った。
「それではギルドマスター殿。くれぐれも寝首をかかれないように」
神官長も最後に一言発してから、聖女たちと共に出て行った。
ギルマスはササッと階段を駆けあがってしまう。
俺は彼女を追って2階のギルマスルームへと向かう。
ロアさんはカウンターの中で何事もなかったかのように平然としていた。
そこにはグレーアウト状態で【ジャミング】という名のスキルが表示されていた。
これはどう考えても洞穴の中で人面獣が使っていたスキルである。
どうやらほんとうに、あのとき【魔導視】を使って観察しただけで、習得の一歩手前まできてしまったらしい。
これまでの例からすると、グレーアウトで表示されているスキルは少し練習すればすぐに習得できてしまうはずだが。
やってみるか―― ふむ、流石に一発では上手くできないが―― あ、でも、こういうことか――
そんな感じで実験している間に、いつの間にか眠りに落ちてしまっていた。
そして目を覚ました瞬間。俺の中にまたいつものひらめきを感じた。
New【ジャミング】 妨害魔素の乱流を発生させ、探知魔法を撹乱する。
これで完全な習得状態だ。スキル一覧にもバッチリ記載されている。
地味だけれど、応用範囲の広そうな面白い術だと思う。ただし完全に気配を遮断するようなことはできないようだ。あくまで撹乱するだけ。
それにしてもむしろ今は【魔導視】スキルの優秀さが際立つ。
地面なんかに残された魔法の残滓を目視できるだけでも便利だと思ったけれど、他者の使ったスキルの構造まで解析できてしまうわけだ。
まあ今回の【ジャミング】はかなりシンプルな術だったから、それで簡単に出来ただけかもしれないけれど。
観察するには時間も余裕も必要だ。激しい戦闘の真っ只中ではとても出来そうにはない。
そんな朝のひと時。
寝床から起き上がった俺は、雑巾の九十九神さんを手にとって、ボロ小屋の掃除を手早く済ませる。家財道具があまりない部屋だから、あっというまやりおえてしまう。
そろそろお金も溜まってきたから家具くらいは新しく買っても良いかもしれない。贅沢だろうか?
せめてベッドと寝具はもう少し清潔で穴の開いていないものが欲しい。
ただ、大屋さんの雑貨店でも家具は扱っていなかったから、そうなると何処で手に入れるかが問題だ。
掃除を終えたら、今日もまずは冒険者ギルドに向かう。
昨晩は精算もなにもせずに帰ってきてしまったから、昨日の特殊依頼の報酬を貰っておこう。
町にいた全ての冒険者が強制参加する事になった特殊依頼だったが、成功報酬はそれぞれの働きに応じて支払われる事になっている。
ギルドの前まで到着。いつものように入ろうとすると、扉の前に小さな女の子が居た。目が合った。
「あ、あの、お兄さんがエフィルアさんですか?」
「そうだけど?」
「ありがとう!!」
なんだ? 礼を言われるようなことを何かしただろうか、あ、ああ、分かった。昨日の子か?
昨日さらわれていた子だ。わざわざお礼を言いに来たようである。
彼女の後ろには昨日ギルドに駆け込んできたおじさんがいた。扉に顔をぶつけていた人で、たしか孤児院の院長だったような。
おじさんは俺に近づき、
「聖女家も剣聖家も、近頃町の周囲で起こっている異変は、すべて君の責任だと吹聴している。私にはそうは思えない」
凄く小さな声でそう言った。
それからまた小さな声で“ありがとう”とだけ言って、少女の手を引いて帰っていった。
あらためてギルドの中へ入ろうとすると、今度は中から騒がしい声が聞こえてくる。ギャオの声だった。あいつはいつもギルドにいるな。
「ロアァ、昨日洞穴へ入って何をしてやがった、エフィルアの野郎なんかと仲良くよ。なぁ? 教えてくれよ、町にモンスターを呼び寄せていたのはあの闇属性野郎なんじゃあないのか? まさかとは思うがよ、お前もバケモノの仲間なんじゃないよな? 俺はそうは思わねぇけどよ、あんなもんに付き合ってたらどう思われてもおかしくないぜ?」
受付カウンターのロアさんに向かって騒ぎ立てているギャオ。
一緒になって煽り立てているのは、昨日ロアさんに袖にされてた連中だろう。その後ろには少し離れて聖女エルリカ達もいる。
なんとまあ面倒なことをしているのだ、あの男は。
結局のところロアさんと仲良くなりたいのだろうが、何故にそんな意味不明な方向に突っ走るのだろうか。
「ギャオさんすみません。今回の件は全てリナザリア王室から直々の依頼があっての事ですから」
「だから何でそこで王室なんぞが出てくるんだ? おかしいだろうがよ」
とりあえず俺はいつもどおりに受付カウンターへ向かう。
ギャオ達は俺の存在に気づいたようだ。ゆっくりとこちらに近寄ってきて、俺の前に立って通せんぼ。ギンギンに睨みつけてくる。
これはもう、映画でも小説でも良く見る感じのシーンである。一触即発の大乱闘寸前。ギャオなんて今まさに俺の顔面に向けて唾を吐きかけようとしているところ。だったのだが、
ひゅうとペンギンが飛んできて、ギャオの頭を蹴り飛ばした。
「ああん!? このクソ鳥なめやがって」
ギャオは守護神獣に掴みかかろうとするが、その姿はすぐに消えてしまい、そして2階のほうから別の声が響く。
「お前たち、騒々しいぞ」
現れたのはギルマス。ダウィシエさんだ。
彼女の隣には見覚えのあるオジサン2人組もいる。
1人は聖女の父親、神官長である。
もう1人はこの町の領主で剣聖の末裔。聖女の取り巻き男Bの親父でもある。
「エフィルア。上で話があるのだが」
ダウィシエさんを俺を手招きし、そして領主様のほうは、
「聖女様達はこちらへ…… シオエラルお前もな」
聖女とその仲間を呼び集めて外へと出て行った。
「それではギルドマスター殿。くれぐれも寝首をかかれないように」
神官長も最後に一言発してから、聖女たちと共に出て行った。
ギルマスはササッと階段を駆けあがってしまう。
俺は彼女を追って2階のギルマスルームへと向かう。
ロアさんはカウンターの中で何事もなかったかのように平然としていた。
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