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愛を語らば、
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しおりを挟む目を醒ました時、見慣れぬ天井、見慣れぬ部屋の内装に驚くなんてライトノベルを読んだ記憶があるが、まさかそれが自分にも起きるなんていうことを誰が想像できたであろう。
あれはフィクションだからこそ起きる状況だと思っていたのに、鏡を前にし映った自分の視線の先にいる自分であろう人物が自分ではなかった時。
「……随分と美形なモブだことで…いい匂いもする……」
元の世界の自分はきっと過労か何かで倒れて、今この身体に憑依…または転生したということなのだろう。
しかしながら、転生するのならばもっと魔法技術が発展していて現代的であってほしかった。
部屋の内装、を見た感じで言えば昔の日本。歴史の教科書で見た明治、大正あたり。
着る服も文豪が着ている印象しかない着物のような説明がなんとも難しい格好。壁に掛けてあるのは詰襟の学生服だろう。
たったこれしかない情報でこの作品が分かってしまうなんて、自分の無駄なオタクの能力に驚きそうだ。
『愛を語らば、蔭』
時は明治、帝都学院に入学を果たした主人公を含む主要キャラたちが乱れに乱れた学校生活を送るという薔薇物語。
原作は漫画だったが、あまりにも人気がありアニメ化したことまでは知っている。
何故、蔭という言葉がついているのかというと、最終回は卒業式でどれだけ愛していたとしてもそこを最終地点として別れるという結末であったから。
結局は同性同士、結ばれる未来はないと知っているからこその悲愛の物語。
俺は同作者さんが描いていた別の作品が好きで、ふとした時にこの愛を語らば、蔭にも手を伸ばしたのだが、あまりに深く描かれる心理描写、卒業したら許嫁と結婚が決まっている未来でも主人公に愛を語り、来世ではと涙を流すシーンなどは泣いたものだ。
推しというのは烏滸がましいかもしれないが、一つ上の学年の烏丸という先輩がとても好きだった記憶がある。
けれど、鏡に映る自分のことはどうにもわからない。作品内でこんな顔のキャラはいなかったはず。
ということは、モブというとであろう、モブでこの顔の整い具合であれば主要キャラ達はまるで神のように神々しいのだろう。
「…慎太郎様、朝餉の時間です」
ふと襖の向こうから声が聞こえる。
自分の名前が『慎太郎』なのかと、学ぶと同時にどういう対応が正しいのかわからなくなる。
「え…あぁ、わかりました」と掠れた声で答えれば、襖の向こうの者はひどく驚いたようにバタバタと音を立てて走り去っていく。
そんなにも自分が返事をするのはおかしな事だったのだろうか。
もしかしたら、この身体の元の持ち主は引きこもりというやつで家族と疎遠で使用人にも強く当たっていたのかもしれない。
となると、転生して死亡フラグ回避なんてベタな状態の伏線になってしまうのではないか。
そんなことを考えていると、一つではないバタバタとあわてふためきながらこの部屋に向かって走る音が聞こえる。
バンッと勢いよく開いた扉の先にいた少し年老いた使用人と思わしき人と、この身体の持ち主の両親なのか綺麗な顔の男女、そして何故そこにいるのかわからない、この作品の主人公である鶴里 夏彦がいた。
全員が俺の起きている事を確認するなり凄い勢いで医者をと騒ぎ、気づけば再度寝かされ驚いた顔の医者に隅々まで調べられる。
「自分の名前がわかりますか」と医者に問われ、多分慎太郎です。といえば悩ましげに医者は「もしかしたら頭に強い衝撃を受けたことで記憶が混濁しているのかもしれない」と言った。
それから、事を全て見て聞いていた家族の方々は悲しそうな表情をしたけれど、前を向いて俺にこの家のことや色んな事を教えてくれた。
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