実らなかった啜を

安馬川 隠

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絶胎の格子

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 その週刊紙に目を通した時、少しだけ彼がそういう人間なのだと理解した。
 そういう、というのは呆れなどではなくたった一言発言しただけであまりに多くの反響を呼んでしまうという点。
凄いという尊敬の中に、可哀想だという哀れみすらあった。

 自分とは明らかに住む世界が違う人。
なのにも関わらず自分に異様な固執を見せる。
まるで子供のおもちゃに対する独占欲に近く、どこか幼稚で遠いお伽話のような。


 「…遊びだよなぁ……」


 読めば読むほど、何故自分なのか、と疑問がよぎる。
もしかしたらここに記載されているメグルという人間は自分ではない可能性もあるのではないか。

 少し前までの、芸能人に熱愛報道があったことにそうなのかと他人事でいられた自分に戻りたいとさえ願う。


 自分の恋愛の向く性は女性だ。
それに、違和感を感じこともそれを誤った感情だと思ったこともない。
 だけれど、それが例えば同性だったとしても嫌悪を抱くことはない。
その感情をもつのが他人であっても、だ。

 けれど実際にその感情を向けられてみて思う。
どうして、自分なのだ?と。


 「………この腕に抱かれるべきは俺ではないんだ」


 一瞬でも座った覚悟を動かすことは難しい。
自分は、彼には関わってはいけない。
この自分の中に生まれてしまった違和感と共に押し込み消さなければならない。

 『鎌田 颯天 サイン会.ツーショット会 共通参加券』

 そう書かれたチケットを眺めながら、巡は来る日にちを待つことに決めた。









 「真山先輩には感謝しかないです、貴重な土曜日を有難う御座います」

 「遠野も気合い入ってんなぁ、これが最後だからな」


 女性の色めき合う声、鎌田の缶バッジやグッズで飾られた痛バッグと呼ばれる戦闘装備、メイクや服装、どれをとっても凄いの一言しかない。
 こんな愛されている場にいながら、どうして俺なのだろう、とどうしても思ってしまう。


 「整列を始めさせて頂きます、これから呼ばれました番号にお並びください!まずは一から十番までの整理券をお持ちの方!」


 整理番号は四十七番、遠野は四十六番。
まだ少し呼ばれるまでに時間があるな、と辺りを見回せば面白いものを見つけてしまう。

 『鎌田颯天の一問一答!』

そう書かれた見出し文字の雑誌に手をやれば、ペラペラと頁を捲る。
立ち読みなどしてはいけない行為だと自覚はあったがそれ以上にどうしても知らなければならない何かがあるような気がして手を止めることは出来なかった。


 問、好きな女性のタイプは?
 答、難しいですね、俺としては男女問わず俺を俺として見てくれる方なら好きになれるかな。
強いていえば、俺めっちゃ尽くしたがりなんで尽くしても不満にならない人が良いですね。

 問、恋をしたら貴方はどうなる?
 答、おぉ?なんか好きな女性のタイプに近い(笑)
さっきも言いましたけど尽くしたがりなので、尽くすと思います。恋は盲目って言いますけど、本当にその通りだと思ってまして、俺恋したらきっと相手が飲めと言うのなら毒だって笑顔で飲めると思います。

 問、(記者から)男女問わずというのはファン層も含めてということですかね?
 答、そうですね、まぁ九割って言えるくらいには女性が圧倒的割合を占めてますけど(笑)
男性のファンもいるんですよ?これでも。
昔、とあるファンに言われたことがあるんです…
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