実らなかった啜を

安馬川 隠

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ドーズバース

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 鳳城 朔來の愛し人が、歳上のノーマルだと鳳城本人から聞いているのは新垣含むドラッグの先生二人、そしてお喋りだった当時の看護婦長。

 ドラッグ科の鳳城以外の先生達は既にクランケの番を持つ。
鳳城がノーマルを好きになったことに関しては決してドラッグだからノーマルを好きになってはいけないなんて言うことも出来ない問題であったし、指摘をすることは無かった。


 ただ、鳳城はいつしか『ノーマルの彼』と同棲がしたいと本音を漏らし、愛の営みをしたいとだだをこねるように言うようになった。
そしてこともあろうに、病院で沢山のノーマルと実験をすることでノーマルの彼と一秒でも長く居れるような研究をするようになった。

 新垣が鳳城の言動が可笑しいと感じ始めたのは、最初鳳城はノーマルの彼に一目惚れしたんだと片想いの話しかしていなかったのに、ある日を境に『彼と一秒でも長く側に居れるように』と言葉の端々で既に片想いでは無くなっていると匂わせるようになったことから。


 今日も鳳城は病の患者に触れて病を治療する。
愉しそうにしながらも決して目は笑わないまま。


「……鳳城くん、聞いたんだけどノーマルの女の子に実験したんだって?ダメだよ。傷つけちゃ」


 ドラッグの多くは優しく世話焼きな人が多く、鳳城はそんなドラッグの中でもイレギュラーな方だった。
蓼川 閑はドラッグの鳳城の同期で、クランケの番を持つ博愛主義者の偽善者。


「蓼川さんは好きな人と触れあいたいっていう人間の本能を否定するの?俺は彼と一緒に居るために『ノーマルの彼女が俺を受け入れられる時間』を計測し平均値と、何か対策をした際の………」


 鳳城の説明を聞いた蓼川は、理解できないと断言しながらそれは人を傷付けてまですることなのかと問うた。
鳳城は食い気味にすることだよ。俺には彼しか必要ないからね。と言い切ると、蓼川は庇いきれない現実に小さくため息を吐き、浅沼の両親が鳳城を訴えると動き始めていることを伝えた。


「……ノーマルが害されることにお上の人たちは敏感だからね。大切なノーマルの彼も害されるような事になっているのなら、きっと切り離されるのがオチだと警告しておいてあげるね」


 蓼川の警告の、ノーマルの彼と切り離される可能性の示唆に瞳孔が開いたのを蓼川は見逃さなかったがすぐに戻った表情で、警告有難うと優しく笑う鳳城に底知れぬ恐怖を感じた。


 カタカタとパソコンで仕事をしながら、患者が落ち着いた時間帯で一休みしながら蓼川の言葉を脳内で復唱する。
悲しい話だなと小さくため息を吐きながら、パソコンに通知として来た院長からの『鳳城さんへ私的の来客です』という文字に、早いなぁと本音を漏らした。



 院長室に居たのは、浅沼の両親と警官二人。
ドラッグとの面会である為に時間をかけて何度も、を想定しているのか今日は顔合わせだけを…と言ってきたので、話す気にもなれなかった鳳城は、簡素な自己紹介と用意したSDカードを警官に渡した。

 渡したSDカードを見た警官はそのSDカードが普通のものではなく鑑識等が使う編集や書き換えが出来ない最も信憑性の高い動画や画像のデータが入っていると瞬時に理解した。


「…よくいらっしゃるんです、意識朦朧までいったノーマルの方は言葉を話さないので『ドラッグに強姦された』だの『合意はなかった』と突然主張される親族の方が。
俺だってそういう人が多いことを知っているのでちゃんと最初の話しは録画録音すると決めてるんです。その動画を見てまだ俺を訴えると仰るのならその動画を証拠として提出させて頂きます」


 無表情で淡々と告げる鳳城に両親はたじろぎ、警官はその異常性を感じ取ったがデータを渡し長くなると身体に触るのでと頭を下げて部屋を出た鳳城の行動の合理性には納得がいった。


 鳳城が部屋を出た後、警察はデータを確認するためにノートパソコンを開きデータを開いて両親の許諾を得た上で院長も含めた五人でその動画を開いた。
そこには、鳳城よりも浅沼の方が積極的に触れ合おうとしている様の一部始終、浅沼の許可を得た上で動画を回しているというちゃんとした証拠が映し出された。
 嘘だと叫ぶ母親を押さえつけながら現実を見た父親は訴えを取り下げると言葉を漏らさざる終えなかった。
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