実らなかった啜を

安馬川 隠

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愛ほど単純なものはない

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 小説では大逆転物語なんていうので、序章にされる事が多い『寝取られ』だったり『略奪』はフィクションのように堂々とはされることないと他人事だった。

 この世界には数パーセントという少数確率でαやΩという第二の性が存在する。
αは容姿や才能といった分野で人の頭一つ分抜きん出るものを持っていたり、Ωは男女問わずで子どもを孕み産むことが出来る。
 世界の半数以上はβ、ノーマルの人しか居ないのだが、どんな原理でどう選ばれて少数なαやΩになるのか。多くの研究者が調べることを続けている。


 βの両親を持つ眞希はΩとして産まれた。しかも、希少の更に希少である男のΩとして。親を恨んだことは数えきれないほどある。
ただ、高校の時に授業で『第二の性はデザイナーベイビーでも選択肢しえない』という言葉を聞いてから親ではなく神を恨むことにした。

 そんな中で大学生の時、運命の番を見つけ結ばれて。
大学を卒業と共に同棲をしこれからはΩとしても幸せになれると。彼との子であれば欲しいとさえ思っていた矢先。

 番であった彼が家に帰ってくることが無くなった。
そして、TVで『鶴羽京介、大手企業の令嬢と結婚』というニュースが大々的に流れることになった。









 鶴羽京介との出逢いは大学二年生。
歳上でその時からモデルや俳優などの仕事をしていた京介が、たまたまドラマのロケーションで選ばれた大学構内での撮影をしていた際に目があった。
 運命の番とは上手く言ったもので、ビリビリッと電流が走ったように眞希はフェロモンを出して動けなくなり、その眞希を囲うように京介は眞希を保護し介抱した。

 初めての感情に怯えた眞希を守るように、しっかりと心が決まったら項を噛む許可をくれと優しく笑った京介に惹かれるまでに時間はかからなかった。


「京介さんに噛まれたい」


そう言ったのは、出逢ってから半年経ち良い感じに互いに互いを理解し始められた頃。
それまで、虫除けと貰ったチョーカーには京介のオーダーメイドという重すぎる気持ち付き。
 毎日だって『愛してるよ』『眞希も今日一日がんばれ』と連絡をくれていて、αの中でも上位に立つ多くの者に憧れの視線を貰う彼から愛されていないなんて不安を抱くことはなかった。
 眞希は可愛いから不安と言う彼に何度自分の容姿を見たこと無いのかなと思ったことか。


 流れるニュースはどれも鶴羽京介の結婚で持ちきりで、相手の女性が大手企業の令嬢からテレビ局が変われば『……社の社長』や『やり手の実業家』などコロコロと変わり、真相は何処にもない。

 ただ広くなった部屋がとても寒くて、携帯は実家の電話番号を打ち込み発信ボタンを押す。
声は普通を装えるだろうか、とか考えて電話をしたのに母の『眞希?大丈夫?ニュースみたよ』と心配を隠さない言葉に崩れるように泣きながら「…この家に居たくない」と本音を漏らした。
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