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拷の鎖
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国はイレギュラーを嫌う。『すべての性に平等を』なんて小綺麗なスローガンは掲げても、本当の平等が始まればこれは差別だなんだのと騒ぎ立てて崩壊することは目に見えている。
出る釘を打つように、出来る限りイレギュラーで場を乱す者は産み出さないように手を尽くす。
八月朔日と京のケースは特に国が嫌う案件であった。
穏便になど済まない、済むはずがない。
α同士のそういったケースを表立って肯定することは、国の繁栄の面に置いても不利益。
だからこそ、瑛大が謹慎でいない間を狙い央木高等学校に国は『意見書』を送付した。
内容は、纏めて要約して遠回しでなく直接的な言い方で言えば「イレギュラーの一人を退学させるべき」
まさか国から意見書が届くなんて想像もしていなかった学校側はあわてふためいたが、今辞めさせるということは未だに騒ぎ校門に張り付く週刊紙の記者達に格好のエサを与えてしまうことになりかねないことや、学生が大きく道が外れるようなことをしたわけではない以上、本人の同意無しにこの話は進められないこと。
そして退学処分を科すのならば、既にΩ一人を死に追いやってしまったαをではないのかと、国に意見書を送り返した。
…
大松家でゆっくりと流れる時間に身を任せていると思い出す。
初めて八月朔日と出会った時のこと。
アイツは最初から変わった奴ではあった。
最初の挨拶では『この出会いは運命だね』なんて歯痒いことを笑顔で言ってみせたり、会うたびに今日も瑛ちゃんは可愛いね、好きだわとしつこいが為に何も考えずにあしらっていたが、よくよく考えてみればあれは告白だった可能性がある。
何もかもが普通の一般的なαとは少し違う八月朔日という存在が、もし本当に最初から瑛大に運命を感じていたとしたら……
「……あらあら、こんな所で何をしているの?私も休憩がてら混ぜてちょうだいな」
縁側で瑛大の思考が泥沼化する一歩手前、庭の雑草取りを一旦終えた稲が瑛大に声をかけ隣に腰を下ろす。
「考え事をしてました」と素直に言えば、稲は大事よ!考えることをやめてしまったら大変だもの。その考え事は私は聞いちゃ野暮かしら?と言葉を続ける。
稲の言葉はどれも優しい、口調や語彙の圧がないというのも理由だろうけれど稲の雰囲気も相まって、細かそうな千と共に過ごしているという違和感は否めない。
「……稲さんは、なんで千さんと共に暮らそうと?」
「あら、私のことを考えてたの?罪な女ね、私って!うふふ……でもそうね、千さんは私を『お手伝いとして雇った』ことにしてくれているけれど…
実は私昔はただの主婦だったのよ。無口だけどふとした時に大福を買ってきてくれる優しい旦那さんがいたの」
稲はゆっくりポツリポツリと話を始めた。
無口だけど優しい旦那さんとは稲が女学生だった頃にお見合いで出会って、流れるままに結婚もして夫婦として十年近く寄り添ってきたのだけれど、稲は子供を成せなかった。
今ではどちらかの何が悪いとかがわかる時代ではあるのだが、当時はどうしても妻の責になってしまう時代だった。
旦那さんは反対してくれたけれど、身内の意見は子を成せぬ無能は捨てて子を成せる女と結婚するべきだという。
「……旦那さんは最後まで戦ってくれたけれど、実質追い出される形で路頭に迷った私を千さんが拾ってくれたの。千さんも旦那さんが大病を患っていたから…お手伝いをする名目なら居やすいだろう?って迎えてくれたの」
瑛大にしてみれば、納得がいかない。
路頭に迷った女一人、拾おうと思った理由はなんだ、何の目的で?
八月朔日のことで破裂しそうだった頭が今度は千の理解に苦しむ行動の理由に頭を抱えそうだ。
そんな瑛大の百面相に稲はふふっと声を漏らして笑いながらも、千さんと二人きりになってからお話をたくさんしてきたけれど、出会った時に『運命』を感じたんですって。と優しく微笑んだ。
瑛大はこの言葉で悩みの糸が緩んだ気配を感じた。
運命、決してそれはパートナーとしてのみに感じるものではなく『あぁ、この人と多分ずっと一緒にいるんだろうな』なんていう漠然とした想像が出来た人だと言えるのだろう。
もし八月朔日も千と同じ様に、瑛大と長い付き合いになりそうだと好意もあった上で思った言葉なら、壊れた家庭に戻るのも憂鬱である以上、話に乗っかるのもまた一興だはないだろうか。
「……ねぇ、稲さんは千さんのこと好きなんですか?」
「え?ふふっ、そうねぇ好きよ。細かくは言えないけれど、共にいて過ごすうちに感情も変わるものだから、どんな好きかって問われたら答えられないけれどね」
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