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§ 墨に近づけば黒くなる。
12
結婚も離婚……も、簡単。……離婚も、離婚も、離婚も。
「なによ? あんたそんなことも知らなかったの? ラスベガスってギャンブルやショーだけじゃないのよ? アメリカじゃ結婚も離婚も手間と時間がかかって大変なの。それをその日のうちにやっちゃおうっていうのが、あそこの売りでさ、ちょっと前までラスベガス観光の目玉だったのよ」
「離婚も……なの?」
「そうよー。私も詳しくは知らないけど、数ヶ月? 数週間? 忘れたけど、一定期間あっちに住めば、離婚できちゃうらしいわ。しかも相手の承諾もいらないから、ひとりで離婚できちゃうのよ。なんか、最近は海外からの離婚ツアーもあるらしいわよ」
「う、そ……」
日本で籍を入れてから離婚届を出すなんて回りくどい手続きも必要なく、簡単に離婚する方法がある。
あの腹黒い尊が、それを知らないはずがないわけで。
騙しやがったな。
思わず斜め下を向き、チッと小さく舌打ちをした。
「ちょっと、なに?」
「え? あ、いや、なんでもない」
力なくへラッとごまかし笑ってみせると、佳恵はにやあと意地悪い笑みを浮かべた。
そうでしょうとも。あなたはなんでもお見通しです。
「もしかしてあんた、小林さんに離婚したいとか言った? それで、離婚する方法は無いとか言われたりして……。ほら、その顔! やっぱり当たりでしょう!」
「…………」
ものの見事に、ありのままを言い当てられた。
この女、やはり神通力でもあるんだろうか。いや、ある。絶対ある。
「なんていうか……、搦め捕られてる感は、無きにしも非ずかもねぇ。でも、まあ、あんたがそれでいいんだったら、いいんじゃないの?」
「……そうだよね」
「それで? あんたたち、いつ籍入れるの?」
「え?」
「え? じゃないでしょ? こっちでも当然、婚姻届出すんだから。それともなに? そういう具体的なこと、ちゃんと話し合ってないの?」
「それはその、話し合うっていうか、一方的に通達されてるっていうか……」
「なによそれ?」
「いや、だから……」
「まったくなんなのよ? あんた、小林さんと結婚してるんでしょう?」
「それは……うん」
「まさか、本気で別れたいとか思ってるわけじゃないよね?」
「……うん。それは無い」
「だったら……。情けないわねぇ、自分のことでしょう? シャキッとしなさい、シャキッと! いつまでもグズグズグズグズと……」
「うん。ごめん」
「はあ、まあいいわ。これからは私が相談に乗ってあげるんだから、なんでも隠さず話すのよ? わかってる?」
「……わかってるよ」
ホント、なにをやっているんだか。
佳恵とは十年来の親友。気心は知れているし言えないことなんて何もないはずなのに、私ひとりこんなに緊張しているなんて、考えてみればおかしい。
佳恵の言うとおり、もっと早く、小林統括が尊だってわかった時点で、いや、それこそ三年前にでも、話せば良かった。
「結婚かぁ……。そっか。歩夢は『小林歩夢』になるんだねぇ」
感慨深そうに呟くその言葉を耳にし、突然、結婚の実感が湧いてくる。
そうか。私は、小林歩夢になるんだ。
「なによ? あんたそんなことも知らなかったの? ラスベガスってギャンブルやショーだけじゃないのよ? アメリカじゃ結婚も離婚も手間と時間がかかって大変なの。それをその日のうちにやっちゃおうっていうのが、あそこの売りでさ、ちょっと前までラスベガス観光の目玉だったのよ」
「離婚も……なの?」
「そうよー。私も詳しくは知らないけど、数ヶ月? 数週間? 忘れたけど、一定期間あっちに住めば、離婚できちゃうらしいわ。しかも相手の承諾もいらないから、ひとりで離婚できちゃうのよ。なんか、最近は海外からの離婚ツアーもあるらしいわよ」
「う、そ……」
日本で籍を入れてから離婚届を出すなんて回りくどい手続きも必要なく、簡単に離婚する方法がある。
あの腹黒い尊が、それを知らないはずがないわけで。
騙しやがったな。
思わず斜め下を向き、チッと小さく舌打ちをした。
「ちょっと、なに?」
「え? あ、いや、なんでもない」
力なくへラッとごまかし笑ってみせると、佳恵はにやあと意地悪い笑みを浮かべた。
そうでしょうとも。あなたはなんでもお見通しです。
「もしかしてあんた、小林さんに離婚したいとか言った? それで、離婚する方法は無いとか言われたりして……。ほら、その顔! やっぱり当たりでしょう!」
「…………」
ものの見事に、ありのままを言い当てられた。
この女、やはり神通力でもあるんだろうか。いや、ある。絶対ある。
「なんていうか……、搦め捕られてる感は、無きにしも非ずかもねぇ。でも、まあ、あんたがそれでいいんだったら、いいんじゃないの?」
「……そうだよね」
「それで? あんたたち、いつ籍入れるの?」
「え?」
「え? じゃないでしょ? こっちでも当然、婚姻届出すんだから。それともなに? そういう具体的なこと、ちゃんと話し合ってないの?」
「それはその、話し合うっていうか、一方的に通達されてるっていうか……」
「なによそれ?」
「いや、だから……」
「まったくなんなのよ? あんた、小林さんと結婚してるんでしょう?」
「それは……うん」
「まさか、本気で別れたいとか思ってるわけじゃないよね?」
「……うん。それは無い」
「だったら……。情けないわねぇ、自分のことでしょう? シャキッとしなさい、シャキッと! いつまでもグズグズグズグズと……」
「うん。ごめん」
「はあ、まあいいわ。これからは私が相談に乗ってあげるんだから、なんでも隠さず話すのよ? わかってる?」
「……わかってるよ」
ホント、なにをやっているんだか。
佳恵とは十年来の親友。気心は知れているし言えないことなんて何もないはずなのに、私ひとりこんなに緊張しているなんて、考えてみればおかしい。
佳恵の言うとおり、もっと早く、小林統括が尊だってわかった時点で、いや、それこそ三年前にでも、話せば良かった。
「結婚かぁ……。そっか。歩夢は『小林歩夢』になるんだねぇ」
感慨深そうに呟くその言葉を耳にし、突然、結婚の実感が湧いてくる。
そうか。私は、小林歩夢になるんだ。
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