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§ 魯肉飯
真心話の三
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「林媽媽。芙蓉姐。わたしは自分の気持ちが、わかってなかった。カイくんと結婚式を挙げたのは、林媽媽に頼まれたからでもカイくんの気持ちに応えたかったからでもなかったの。わたし、カイくんが好き。だから、お嫁に来たかったの。カイくんと結婚して、林媽媽や芙蓉姐に家族として受け入れられたかっただけだったの」
最後の声は、嗚咽混じりになってしまった。自然と涙が溢れ、止まらない。
「小鈴の気持ちはうれしいよ……でも」
「そうだよ。小鈴。それはダメだ」
「わたしじゃダメなの? どうして? 両親もいなくて、実家もあるとは言えないわたしじゃ、林家のお嫁さんに相応しくないから?」
篠塚さんと別れようとした曉慧の気持ちも、今ならわかる気がする。
育った環境や生活に違いのある結婚には、立ちはだかる障害が多い。だから、似たような環境の者同士が結ばれるのがよい。これは、小母さんたちの噂話からもよく耳にする話だ。
だからって、早くに亡くなった両親を恨みはしないし、わたしを引き取って育ててくれた叔母には感謝もしている。
けれども、叔母や叔父、従兄弟たちがわたしを気遣ってくれても、ふとした弾みに笑い合っている彼らを見てしまうと、やはりわたしは他人なのだと思い知らされる。
ひとりぼっちだからこそよけいに、誰とでも仲よく、明るく、前向きにと頑張った。けれども、ふと気づけば、いつでもどこかで線を引いて遠慮してしまっていたのだ。
「そんなことを言ってるんじゃないよ。小鈴、あんたはいい子だ。素直で、あたしたちをとっても大事にしてくてる。あたしだってあんたが嫁に来てくれたらとずっと思ってたさ。でもダメなんだよ。だって——阿海はもう、いないんだからね」
林媽媽が、苦しそうに眉間に皺を寄せ目を閉じた。
「カイくんは——カイくんは——いる! ちゃんといるの!」
「小鈴?」
「ほら、いまだってここに……わたしのすぐ横にいるの! ねえ、カイくん。林媽媽と芙蓉姐がわかるようになにかして? 大きな音を立てるとか、なにかを倒すとか、できることたくさんあるでしょう? カイくんはここにいるんだよって、証明してよ!」
水を打ったような静けさのなか、わたしとカイくんが睨むように見つめ合う。
交わるカイくんの視線は、哀しそうに、それでもなにかを言いたそうな色を湛えている。
だがそれもつかの間。視線を逸らしたカイくんは、拳を握り締め、わたしから顔を背けた。
カイくんは、わたしの想いに、応えてくれなかった。
カイくんもわたしと同じ気持ちなのだと信じていたのに、それはわたしの独り善がりだったのか。
「小鈴。この話はもう終わりにしよう? 小鈴の気持ちは、わかったから。だからね?」
「芙蓉姐、違うの。カイくんは本当にいるの。カイくんは霊魂になっちゃったけど、毎日どこでなにをするのも一緒で、たくさんお喋りもして——信じられないだろうけど、本当のことなの! 嘘なんかじゃないの!」
テーブルの上で色が変わるほどきつく握り締めていたわたしの手に、林媽媽が手を触れた。カサカサして少し堅い、温かいその手が、わたしの手を解すように撫でている。
「小鈴。いいかい? よくお聞き? あたしはね、あんたを娘だと思ってる。これは、嘘じゃないよ。あんただって本当はわかってるだろう? 阿海の霊魂がいるかいないかなんて、どうでもいいんだ。あの子はもう死んで、この世にはいないんだからね。でも、あんたは生きてる。若くて、健康で、未来があるんだよ。これから先いくらだっていい相手に巡り会えるさ。結婚して、たくさん子供を産んで、新しい家族と幸せになるんだ。だから、あんたを嫁にはできない。あたしはね、小鈴。あんたにちゃんと幸せになってほしいんだ。小蓉だって同じさ。これが、あたしたちの望みなんだよ」
最後の声は、嗚咽混じりになってしまった。自然と涙が溢れ、止まらない。
「小鈴の気持ちはうれしいよ……でも」
「そうだよ。小鈴。それはダメだ」
「わたしじゃダメなの? どうして? 両親もいなくて、実家もあるとは言えないわたしじゃ、林家のお嫁さんに相応しくないから?」
篠塚さんと別れようとした曉慧の気持ちも、今ならわかる気がする。
育った環境や生活に違いのある結婚には、立ちはだかる障害が多い。だから、似たような環境の者同士が結ばれるのがよい。これは、小母さんたちの噂話からもよく耳にする話だ。
だからって、早くに亡くなった両親を恨みはしないし、わたしを引き取って育ててくれた叔母には感謝もしている。
けれども、叔母や叔父、従兄弟たちがわたしを気遣ってくれても、ふとした弾みに笑い合っている彼らを見てしまうと、やはりわたしは他人なのだと思い知らされる。
ひとりぼっちだからこそよけいに、誰とでも仲よく、明るく、前向きにと頑張った。けれども、ふと気づけば、いつでもどこかで線を引いて遠慮してしまっていたのだ。
「そんなことを言ってるんじゃないよ。小鈴、あんたはいい子だ。素直で、あたしたちをとっても大事にしてくてる。あたしだってあんたが嫁に来てくれたらとずっと思ってたさ。でもダメなんだよ。だって——阿海はもう、いないんだからね」
林媽媽が、苦しそうに眉間に皺を寄せ目を閉じた。
「カイくんは——カイくんは——いる! ちゃんといるの!」
「小鈴?」
「ほら、いまだってここに……わたしのすぐ横にいるの! ねえ、カイくん。林媽媽と芙蓉姐がわかるようになにかして? 大きな音を立てるとか、なにかを倒すとか、できることたくさんあるでしょう? カイくんはここにいるんだよって、証明してよ!」
水を打ったような静けさのなか、わたしとカイくんが睨むように見つめ合う。
交わるカイくんの視線は、哀しそうに、それでもなにかを言いたそうな色を湛えている。
だがそれもつかの間。視線を逸らしたカイくんは、拳を握り締め、わたしから顔を背けた。
カイくんは、わたしの想いに、応えてくれなかった。
カイくんもわたしと同じ気持ちなのだと信じていたのに、それはわたしの独り善がりだったのか。
「小鈴。この話はもう終わりにしよう? 小鈴の気持ちは、わかったから。だからね?」
「芙蓉姐、違うの。カイくんは本当にいるの。カイくんは霊魂になっちゃったけど、毎日どこでなにをするのも一緒で、たくさんお喋りもして——信じられないだろうけど、本当のことなの! 嘘なんかじゃないの!」
テーブルの上で色が変わるほどきつく握り締めていたわたしの手に、林媽媽が手を触れた。カサカサして少し堅い、温かいその手が、わたしの手を解すように撫でている。
「小鈴。いいかい? よくお聞き? あたしはね、あんたを娘だと思ってる。これは、嘘じゃないよ。あんただって本当はわかってるだろう? 阿海の霊魂がいるかいないかなんて、どうでもいいんだ。あの子はもう死んで、この世にはいないんだからね。でも、あんたは生きてる。若くて、健康で、未来があるんだよ。これから先いくらだっていい相手に巡り会えるさ。結婚して、たくさん子供を産んで、新しい家族と幸せになるんだ。だから、あんたを嫁にはできない。あたしはね、小鈴。あんたにちゃんと幸せになってほしいんだ。小蓉だって同じさ。これが、あたしたちの望みなんだよ」
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