左遷されたオッサン、移動販売車と異世界転生でスローライフ!?~貧乏孤児院の救世主!

武蔵野純平

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第五章 冒険者パーティーひるがお

第77話 冒険者ギルドでスマホンを

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「じゃあ、ちょっと座らせてもらうよ」

「えっ!?」

 冒険者ギルド長ババさんは、床に座った。

「驚いたかい? 人と話をする時は、いつもこうしてるんだ」

 ソファーに座らないのか! と、俺は驚いたが、多分ババさんがソファーに座ると、頭が天井スレスレになってしまうのだろう。
 それにババさんの話し相手は、ずっと上を向いて話すことになる。
 こうしてババさんが床に座ってくれれば、俺は上を向かないで済む。
 意外と合理的かもしれない。

 俺は改めてババさんを見る。

(顔っ! デカッ!)

 ババさんは体もデカいが、顔もデカい。
 俺の倍、ソフィーの三倍はありそうだ。

 だが、ババさんの表情は優しげで威圧感はない。

 ソフィーはババさんと顔見知りらしく、話し始めたぞ。

「ぎるどちょーさん! こんにちは!」

「ハハハッ。ソフィーちゃんだよね? 久しぶりだね。元気かい?」

「はい。げんきです! おとーさんと、ダンジョンにはいっています!」

「うんうん。魔法使いになったんだよね。凄いね。期待しているよ」

「えっへん!」

 ババさんは微笑む。自分の孫を見るような優しい目だ。
 そういえば、ババさんは体格が良いが、顔にはところどころシワがある。
 結構、お年なのかな?

 ババさんは、俺の方を見た。

「あなたがリョージさんだね? ガイウスから色々話を聞いているよ。私がギルド長のババです。よろしく」

「リョージです。こちらこそよろしくお願いします」

 ババさんは、低い落ち着いた声で気さくに話す。
 俺はホッとして、リラックスして話を続けた。

「それでギルド長。ガイウスから聞きましたが、お話があるとか?」

「うん。二つあるんだ。一つはダンジョンのことだよ。リョージさんたち『ひるがお』は、ダンジョンに潜っているだろう?」

「はい。三人で。ここのところ毎日ですね」

「がんばるのは結構だけど、ダンジョンに入る前と出た後に冒険者ギルドに寄って報告して欲しいんだ。何かあったら心配だからさ」

「あっ……!」

 いけないな。
 気が回っていなかった。

 俺たち『ひるがお』は、冒険者ギルドに報告せずにダンジョンに出入りしていた。
 冒険者ギルドとしては、どの冒険者が何をやっているかを把握しておきたいだろう。

 ギルド長のババさんが言う通りだ。『何かあった時』に冒険者ギルドに気が付いてもらえない。
 冒険者ギルドに朝晩顔を出して活動報告をしていれば、『あいつら帰ってきてない!』と冒険者ギルドのスタッフが気付いてくれる。

「すいません。これからは顔を出します」

「うん。そうしてちょうだい。何かあったら冒険者ギルドが動くからさ」

「ありがとうございます。もう一つの話とは?」

「ガイウスに見せてもらったのだけど、スマホンって凄いね! あれをいくつか売ってくれないかな?」

 スマートフォンではなく、スマホンで噂が広がっているんだ……。
 ガイウス! スマホンじゃないって言ってるだろう!
 ソフィーも俺の隣でクスクス笑っているぞ。

「スマホンはさ。ダンジョンの中でも使えるんでしょ?」

「はい。ガイウスと検証済みです。ダンジョンの中でも使えます」

「素晴らしいよ! 冒険者ギルドに、二、三台スマホンを置いて、冒険者にスマホンを持たせれば、色々なことが出来る! ぜひ、売ってくれ!」

「なるほど……」

 ババギルド長は熱く語る。
 俺は腕を組んで考えた。

 冒険者がスマートフォンを持つメリットは計り知れない。

 ・手に余る強い魔物が出現したら助けを呼ぶ。
 ・ダンジョンで迷ったら救援を呼ぶ。
 ・夜になっても帰って来ない冒険者に電話して安否確認をする。

 俺がちょっと考えただけでも、これくらい浮かぶ。
 地図機能や写真・動画機能も合わせて考えれば、活用方法はもっとあるだろう。

 さらにスタンピードの前兆があれば、逸速く知ることが出来る。
 町の安全度が高まるだろう。

 売るどころか、むしろ無料で配りたいぐらいだ。

 だが、スマートフォンは貴族に提供する道具でもある。
 安売りは不味いだろう。

 一応、貴族向けのスマートフォンは、キラキラ美麗なゴールドやシルバーのスマートフォン。
 俺たちが使うスマートフォンは、グレー、黒、赤、青、といった普通の色にして差別化した。

 しかし、機能は同じなのだ。

『我々貴族が使っているスマートフォンを、平民風情が安く使うなど許しがたい!』

 そんな文句を言い出す貴族が出そうだ……。

 俺がいろいろ考えてウンウンうなっていると、隣に座るソフィーが肩をつついてきた。

「おとーさん。すまーとほんを売るの?」

「うん。色々と考えなきゃいけないことはあるけど、売ろうと思う」

「おお! 素晴らしいぞ!」

 ババギルド長が喜ぶ。
 だが、考えなきゃならないことがあるんだ。
 まずは価格。

「ソフィーは、スマートフォンをいくらで売れば良いと思う?」

「う~んとね。大金貨十枚!」

「まあ、それくらいするよな……」

「ファ!」

 ババギルド長が驚き、床に座った姿勢から宙に飛んだ。
 大金貨十枚、ざっくり日本円に換算すると一千万円だ。
 日本で売っている高級車の値段……俺は妥当な値付けだと思う。
 何せこの世界にない謎テクノロジーで出来た超高性能端末なのだ。
 むしろ大金貨十枚でも安いかもしれない。

「いや、ちょっと待って! スマホンって、そんな高いの!?」

 ババギルド長が慌てる。

「だって! りょーしゅさまも持ってるんだよ!」

「ババギルド長。ソフィーの言う通りです。領主のルーク・コーエン子爵を始めとする貴族の方々が利用される道具なのです」

「ええっ!? じゃあ、どうしてガイウスは持ってるんだ!? あいつ大金貨十枚も持っていたのか!?」

「いや、ガイウスは色々実験に協力してもらったので、お礼にあげたんですよ」

「いいな~」

 ババギルド長が、あまりにも素直にうらやましがるのでクスリと笑ってしまった。

「まあ、値段のことは一旦置いておくとして、貴族が使っている道具でもあるスマートフォンを、我々平民の冒険者が使うと貴族が怒らないかと心配なんです」

 今度はババギルド長が考え出した。
 口を半開きにして天井を見ている。
 そして、首をひねり俺を見た。

「気になったのだけど、スマートフォンって何?」

 俺とソフィーは、顔を見合わせた。
 同時にスマートフォンを取り出す。

「すまぁーと! ほん!」


「これです! これがスマートフォン!」

 ババギルド長が、また首をひねる。

「なあ、それはスマホンだろ? ガイウスが持っているのと同じスマホンだよな?」

「えっ……?」

「さっきから貴族がどうの、スマートフォンがどうのと言っているけど、私が欲しいのはスマホンだよ?」

「「あっ……!」」

 俺とソフィーは再び顔を見合わせる。

 そうか!

 ・貴族向け:スマートフォン
 ・平民向け:スマホン

 と、名前を変えれば……!

 ソフィーが万歳した。

「ガイウスのおじちゃん! 天才!」

「本当だな! まさかのガイウスだった! アハハハハ!」

 俺が笑い出すとババギルド長はポカンとした。

「ええ? 何のことがすっかりわからないのだけど?」

「ギルド長、すいません。スマホンを提供出来ます。そうですね……まずは十台をお貸ししますので、毎月利用料を支払って下さい」

 俺が考えたのは、『平民に提供するスマートフォンは、名前をスマホンにする』、『レンタルにして月額料金制にする』の二つだ。

 こうすれば、貴族に対して『平民は名前が違う劣化版を使っています』、『平民は買うことが出来ないので、月々利用料を徴収して貸しています』と説明出来る。

 これなら貴族も『まあ、良いだろう』と文句を言わないでくれると思う。

 俺はギルド長と相談して、スマホンの利用料を冒険者から毎月大銀貨二枚、日本円で二万円徴収してもらうことにした。
 大銀貨二枚のうち、一割の銀貨二枚を集金手数料として冒険者ギルドが取り、残りは俺がもらうことで決着した。

「いや~、リョージさん! ありがとう! ソフィーちゃんもありがとう!」

 俺とソフィーは、ババギルド長の大きな手と握手をした。

 これでスタンピード対策が、また一歩進んだ!
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