89 / 99
王都編
第89話 姉妹の関係
しおりを挟む
「フランチェスカとマチルダは、母親が違うんだ」
師匠神速のダグは、さらっと二人の関係を教えてくれた。
「師匠、それ言っちゃって大丈夫なんですか?」
「ああ。別に秘密でも何でもない。クランメンバーは、みんな知っているよ」
兄弟姉妹の親が違う。
この異世界では、別に珍しい事じゃない。
病気や魔物に襲われて、どちらかの親が早死にしてしまう事があるし、両親が死んで親戚の養子になる子供もいる。
しかし、兄弟姉妹で種族違いと言うのは、あまり聞かないな。
「じゃあ、父親がエルフですか?」
「そうだ。母親は人族の下級貴族だったそうだ」
「だった?」
「マチルダの母親は、マチルダを産んでしばらくして亡くなったそうだ。詳しい話は知らんが……母方の家は、マチルダを疎んじた。それをフランチェスカがどこからか聞きつけて、マチルダを引き取った」
俺は師匠の話を聞きながら、納得しつつも引っかかる事があった。
マチルダがフランチェスカさんに懐いている理由は、良くわかった。自分を疎んじる母方の家から連れ出して、面倒を見てくれた優しい姉だからだ。
しかし、父親は?
「師匠、フランチェスカの父親は?」
「父親? あー、エルフ特有の放浪癖と言うか……、自由さと言うか……、あちこち旅をしているらしいぞ」
「……」
そんな無責任な! と俺は思ったが、同じエルフのセレーネはあっさりとした物だった。
「あー、それじゃあ、仕方ないですね~」
仕方ないで済ませちゃうんだ?
この辺は種族間の文化の違いだな。
セレーネの父親がセレーネをほったらかして出掛けてしまったのも驚いたけど、エルフって放任と言うか、家族って枠にとらわれないと言うか……。
でも、肉親の情が無い訳じゃないんだよな。
フランチェスカさんなんて、マチルダをすごく可愛がっている感じだし。
エルフは人族より遥かに長命だから、感覚が色々と違い過ぎる。
それよりも……。
「じゃあ、マチルダは、人族とのハーフエルフですか?」
「そうだ。魔法が強いのは、エルフの血がなせる業だろう」
「種族が違っても子供って出来るんですね」
「出来るぞ。ただ、同族よりは子供が出来づらいがな」
「へえ~」
師匠がニヤリと笑って、俺に耳打ちして来る。
「まあ、アレだ! そう言う話は女の子のいない所でしようぜ!」
「そうですね!」
師匠とセレーネが話し出すと、サクラが【意識潜入】で話しかけて来た。
(そうなんですよ。ヒロトさん! 異種族間でも子供は出来るのですよ!)
(わかった。わかった)
(ふふ。私とヒロトさんの間も子供が作れますよ)
また! そう言う事を!
つーか、サクラは天使でエネルギー体だ。
魔力を使って実体化しているのに、人族との間に子供が出来るなんておかしいだろう!
俺は適当にサクラのエロトークを聞き流す。
(わかった。気を付けるようにするよ)
(気を付けなくても良いですよ?)
ダメだな。
逃がしてくれない。
強引に話を変えよう。
(なんかマチルダに対する理解が深まったな)
(あー、確かに。あのツンケンした態度は、がんばってお姉ちゃんに認められたいって気持ちが悪い方向にでちゃったんでしょうね~)
(うん。そうだな)
(ロングドレスを着ているのは、貴族の家系に誇りを持っているんですかね~)
(家族の一員になりたかったんだろう)
(家族の一員ですか?)
(うん。マチルダは、母親が早死にして、母方の家に疎まれたって話だろ? 肉親の愛情をあまり受けた事がないから――)
(愛情に飢えた所があると?)
(そう思った)
(私もヒロトさんの愛情に飢えてますよ!)
(毎晩一緒に寝ているだろ!)
(えへへ♪)
俺とサクラが【意識潜入】で微エロトークをしている横で、師匠とセレーネが真剣に話しをしていた。
「フランチェスカは、マチルダを引き取ったが冒険者として『銀翼』で活動をしなくちゃならなかった。だから、留守がちで、マチルダは寂しい思いをしたのだろう。冒険者として早く一人前になって、フランチェスカと一緒にいたいと焦っているんじゃないかな」
「そっかあ~。マチルダの気持ちもわかる気がする~」
翌日、マチルダは来なかった。
師匠神速のダグは、さらっと二人の関係を教えてくれた。
「師匠、それ言っちゃって大丈夫なんですか?」
「ああ。別に秘密でも何でもない。クランメンバーは、みんな知っているよ」
兄弟姉妹の親が違う。
この異世界では、別に珍しい事じゃない。
病気や魔物に襲われて、どちらかの親が早死にしてしまう事があるし、両親が死んで親戚の養子になる子供もいる。
しかし、兄弟姉妹で種族違いと言うのは、あまり聞かないな。
「じゃあ、父親がエルフですか?」
「そうだ。母親は人族の下級貴族だったそうだ」
「だった?」
「マチルダの母親は、マチルダを産んでしばらくして亡くなったそうだ。詳しい話は知らんが……母方の家は、マチルダを疎んじた。それをフランチェスカがどこからか聞きつけて、マチルダを引き取った」
俺は師匠の話を聞きながら、納得しつつも引っかかる事があった。
マチルダがフランチェスカさんに懐いている理由は、良くわかった。自分を疎んじる母方の家から連れ出して、面倒を見てくれた優しい姉だからだ。
しかし、父親は?
「師匠、フランチェスカの父親は?」
「父親? あー、エルフ特有の放浪癖と言うか……、自由さと言うか……、あちこち旅をしているらしいぞ」
「……」
そんな無責任な! と俺は思ったが、同じエルフのセレーネはあっさりとした物だった。
「あー、それじゃあ、仕方ないですね~」
仕方ないで済ませちゃうんだ?
この辺は種族間の文化の違いだな。
セレーネの父親がセレーネをほったらかして出掛けてしまったのも驚いたけど、エルフって放任と言うか、家族って枠にとらわれないと言うか……。
でも、肉親の情が無い訳じゃないんだよな。
フランチェスカさんなんて、マチルダをすごく可愛がっている感じだし。
エルフは人族より遥かに長命だから、感覚が色々と違い過ぎる。
それよりも……。
「じゃあ、マチルダは、人族とのハーフエルフですか?」
「そうだ。魔法が強いのは、エルフの血がなせる業だろう」
「種族が違っても子供って出来るんですね」
「出来るぞ。ただ、同族よりは子供が出来づらいがな」
「へえ~」
師匠がニヤリと笑って、俺に耳打ちして来る。
「まあ、アレだ! そう言う話は女の子のいない所でしようぜ!」
「そうですね!」
師匠とセレーネが話し出すと、サクラが【意識潜入】で話しかけて来た。
(そうなんですよ。ヒロトさん! 異種族間でも子供は出来るのですよ!)
(わかった。わかった)
(ふふ。私とヒロトさんの間も子供が作れますよ)
また! そう言う事を!
つーか、サクラは天使でエネルギー体だ。
魔力を使って実体化しているのに、人族との間に子供が出来るなんておかしいだろう!
俺は適当にサクラのエロトークを聞き流す。
(わかった。気を付けるようにするよ)
(気を付けなくても良いですよ?)
ダメだな。
逃がしてくれない。
強引に話を変えよう。
(なんかマチルダに対する理解が深まったな)
(あー、確かに。あのツンケンした態度は、がんばってお姉ちゃんに認められたいって気持ちが悪い方向にでちゃったんでしょうね~)
(うん。そうだな)
(ロングドレスを着ているのは、貴族の家系に誇りを持っているんですかね~)
(家族の一員になりたかったんだろう)
(家族の一員ですか?)
(うん。マチルダは、母親が早死にして、母方の家に疎まれたって話だろ? 肉親の愛情をあまり受けた事がないから――)
(愛情に飢えた所があると?)
(そう思った)
(私もヒロトさんの愛情に飢えてますよ!)
(毎晩一緒に寝ているだろ!)
(えへへ♪)
俺とサクラが【意識潜入】で微エロトークをしている横で、師匠とセレーネが真剣に話しをしていた。
「フランチェスカは、マチルダを引き取ったが冒険者として『銀翼』で活動をしなくちゃならなかった。だから、留守がちで、マチルダは寂しい思いをしたのだろう。冒険者として早く一人前になって、フランチェスカと一緒にいたいと焦っているんじゃないかな」
「そっかあ~。マチルダの気持ちもわかる気がする~」
翌日、マチルダは来なかった。
39
あなたにおすすめの小説
侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】
のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。
そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。
幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、
“とっておき”のチートで人生を再起動。
剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。
そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。
これは、理想を形にするために動き出した少年の、
少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。
【なろう掲載】
異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?
よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ!
こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ!
これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・
どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。
周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ?
俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ?
それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ!
よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・
え?俺様チート持ちだって?チートって何だ?
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!
異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。
桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。
だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。
そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。
異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。
チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!?
“真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!
老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!
菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは
「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。
同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと
アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう
最初の武器は木の棒!?
そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。
何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら
困難に立ち向かっていく。
チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!
異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。
話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい!
****** 完結まで必ず続けます *****
****** 毎日更新もします *****
他サイトへ重複投稿しています!
ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~
楠富 つかさ
ファンタジー
ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。
そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。
「やばい……これ、動けない……」
怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。
「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」
異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる