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王都編
第92話 突入!
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俺は魔の森の中に初めて足を踏み入れた。
(暗いな……)
そう、ビルのように背の高い木が日光を遮断していて、昼間なのにビルとビルの間に入ったように薄暗い。
そして、動物の気配はなく、虫もいない。
魔の森は魔力が強いと聞く。
魔物以外は寄せ付けない森なのだろうか。
先行するマイルズさんは、大樹にナイフで傷をつけながら進む。
これが帰る時の目印と言う事だ。
右を見ても、左を見ても似たような木が生えているだけの景色なので、道を覚えるのは困難だからだ。
もう、俺は方向感を失っている。
どっちから煙が上がっていたのかわからないし、帰る方角もわからない。
スキル【マッピング】があるから帰れるはずだが、それでも不安になる。
マイルズさんが先行して案内してくれるので助かる。
マイルズさん、俺、リーダーのスコットさん、ジョアンさん、レドルドさんの並び順で進む。
俺のスキル【気配察知】には、何も引っかからない。
スキル【夜目】も使ってみたが、大樹が遮蔽物になってしまい視界が確保できないから意味がない。
(怖いな……)
大樹で見通しが悪く、陽の光があまり射さない魔の森の中は、独特の圧迫感がある。
魔物が接近すれば【気配察知】でわかるはずだが、すぐそこの木の陰からオーガが顔を出すんじゃないかと嫌な想像をしてしまう。
(手……汗ばんでるな……体も固くなっている……)
ズボンで手のひらの汗をぬぐい、手を開いたり閉じたり……。
少しでも体をほぐしておこう。
振り返ると、スコットさんも首を左右にさかんに動かして落ち着かない様子だ。
マチルダのヤツ……よくこんな所に一人で入って行ったな……。
「あっ……」
一瞬視界に炎が映った!
先頭を行くマイルズさんからハンドサインが送られてくる。
『停止! 前方にいる!』
見間違いじゃなかった!
この先にマチルダがいる。
まだ目視出来ないが、【気配察知】に魔物の集団がひっかかった。
十……二十……かなりの数が集まっている。
リーダーのスコットさんが手招きして、全員を集める。
しゃがみ込み、スコットさんの小声の指示を聞く。
「良いか? 奇襲をかけてマチルダちゃんを救出するのが目的だ。無理に魔物を倒す必要はない」
そうだ。
討伐ではなく、救出。
戦う必要はないんだ。
スコットさんの指示は続く。
「まず、俺、ジョアン、レドルドが三人で仕掛ける。魔物の注意がこっちに向いたら、足の速いマイルズとヒロトがマチルダちゃんの所へ向かえ!」
頭の中で整理する。
スコットさんたち三人が魔物に突っ込む。
俺とマイルズさんが、すり抜けてマチルダの下へ。
よし……。
「二人がマチルダちゃんを救出している間、俺、ジョアン、レドルドは、魔物と戦い退路を確保する。マチルダちゃんを確保できたら、即撤退だ! いいな? 行くぞ!」
再び動き出す。
駆け出したい気持ちを抑えて、そっと、ゆっくりと接近する。
近づいて来たな……。
魔物の声が聞こえる。
マイルズさんが左の方へ消えて行った。
回り込むつもりか?
じゃあ、俺は右へ行こう。
スコットさんに『右から回り込む』とハンドサインを送る。
すぐ『了解』とハンドサインを帰って来た。
スコットさんたちと別れて、右へ。
スキル【忍び足】を発動して、静かに近づく。
木の陰からそっと顔を覗かせると……いた!
マチルダは大樹を背に、杖を両手で握り振り回し魔物の接近を辛うじて防いでいる。
魔法を使ってないと言う事は、もうMPがないか、残り少ないのだろう。
マチルダの表情は疲れ切っていて、ドレスも所々破けている。
杖も折れてしまっているな。
まずい……。
マチルダは、ゴブリン、オーク、オーガにビッチリ包囲されてしまっている。
あれの中に入るのか?
本当に入れるのか?
いや!
入らなきゃ!
入るんだ!
決意を新たにして、突入場所を考える。
包囲の薄い所を探ろう……。
どこから行く?
もう、ちょい右へ回り込もう。
右へ移動して静かにコルセアを抜くとスコットさんたち三人が仕掛けた。
「おらあ!」
「シャ!」
「エルボー!」
オーク相手に背後から奇襲をかけた。
三体のオークが、ほぼ同時に倒れ、魔物たちの視線がスコットさんたち三人へ向いた。
(今だ! 【神速】!)
スキル【神速】で加速する。
木々が後ろへ流れ、あっと言う間に魔物が目の前に。
(狙いは、そこ!)
オーガ二体並んでいる足下だ。
巨体のオーガの足下は隙間があるし、十二才の俺は小柄だから行けるはずだ。
それに、オーガ二体はスコットさんたちを見ている。
(チャンスだ!)
コルセアを体に密着させ、引っかけないようにしてオーガの足下を高速ですり抜ける。
マチルダまで、あと5メートル。
オークをかわす。
あと3メートル。
チイィ!
ゴブリンが邪魔だ!
マチルダと俺の間にゴブリンがいる。
コルセアで斬るか?
いや、刃が引っかかって動きが止まると怖い。
ここは……飛び蹴り!
スキル【神速】でスピードがのった飛び蹴りがゴブリンの後頭部にヒットした。
ゴブリンの頭部が弾ける。
(クッ! バランスが崩れる!)
勢いのまま前方へ回転して地面を転がる。
着いた!
マチルダの横にピタリと着けた。
「マチルダ!」
「ヒ……ヒロト……」
「逃げるぞ!」
「あ……ありがとう……」
マチルダは、気を失ったのかそのままゆっくりと倒れだした。
俺はマチルダの正面に体を入れて、マチルダを背負う。
マイルズさんは?
ダメだ! 魔物に足止めされて突入できていない。
目があったが、首を振っている。
気絶したマチルダを背負って、一人でこの包囲から出なきゃならないのか!
(暗いな……)
そう、ビルのように背の高い木が日光を遮断していて、昼間なのにビルとビルの間に入ったように薄暗い。
そして、動物の気配はなく、虫もいない。
魔の森は魔力が強いと聞く。
魔物以外は寄せ付けない森なのだろうか。
先行するマイルズさんは、大樹にナイフで傷をつけながら進む。
これが帰る時の目印と言う事だ。
右を見ても、左を見ても似たような木が生えているだけの景色なので、道を覚えるのは困難だからだ。
もう、俺は方向感を失っている。
どっちから煙が上がっていたのかわからないし、帰る方角もわからない。
スキル【マッピング】があるから帰れるはずだが、それでも不安になる。
マイルズさんが先行して案内してくれるので助かる。
マイルズさん、俺、リーダーのスコットさん、ジョアンさん、レドルドさんの並び順で進む。
俺のスキル【気配察知】には、何も引っかからない。
スキル【夜目】も使ってみたが、大樹が遮蔽物になってしまい視界が確保できないから意味がない。
(怖いな……)
大樹で見通しが悪く、陽の光があまり射さない魔の森の中は、独特の圧迫感がある。
魔物が接近すれば【気配察知】でわかるはずだが、すぐそこの木の陰からオーガが顔を出すんじゃないかと嫌な想像をしてしまう。
(手……汗ばんでるな……体も固くなっている……)
ズボンで手のひらの汗をぬぐい、手を開いたり閉じたり……。
少しでも体をほぐしておこう。
振り返ると、スコットさんも首を左右にさかんに動かして落ち着かない様子だ。
マチルダのヤツ……よくこんな所に一人で入って行ったな……。
「あっ……」
一瞬視界に炎が映った!
先頭を行くマイルズさんからハンドサインが送られてくる。
『停止! 前方にいる!』
見間違いじゃなかった!
この先にマチルダがいる。
まだ目視出来ないが、【気配察知】に魔物の集団がひっかかった。
十……二十……かなりの数が集まっている。
リーダーのスコットさんが手招きして、全員を集める。
しゃがみ込み、スコットさんの小声の指示を聞く。
「良いか? 奇襲をかけてマチルダちゃんを救出するのが目的だ。無理に魔物を倒す必要はない」
そうだ。
討伐ではなく、救出。
戦う必要はないんだ。
スコットさんの指示は続く。
「まず、俺、ジョアン、レドルドが三人で仕掛ける。魔物の注意がこっちに向いたら、足の速いマイルズとヒロトがマチルダちゃんの所へ向かえ!」
頭の中で整理する。
スコットさんたち三人が魔物に突っ込む。
俺とマイルズさんが、すり抜けてマチルダの下へ。
よし……。
「二人がマチルダちゃんを救出している間、俺、ジョアン、レドルドは、魔物と戦い退路を確保する。マチルダちゃんを確保できたら、即撤退だ! いいな? 行くぞ!」
再び動き出す。
駆け出したい気持ちを抑えて、そっと、ゆっくりと接近する。
近づいて来たな……。
魔物の声が聞こえる。
マイルズさんが左の方へ消えて行った。
回り込むつもりか?
じゃあ、俺は右へ行こう。
スコットさんに『右から回り込む』とハンドサインを送る。
すぐ『了解』とハンドサインを帰って来た。
スコットさんたちと別れて、右へ。
スキル【忍び足】を発動して、静かに近づく。
木の陰からそっと顔を覗かせると……いた!
マチルダは大樹を背に、杖を両手で握り振り回し魔物の接近を辛うじて防いでいる。
魔法を使ってないと言う事は、もうMPがないか、残り少ないのだろう。
マチルダの表情は疲れ切っていて、ドレスも所々破けている。
杖も折れてしまっているな。
まずい……。
マチルダは、ゴブリン、オーク、オーガにビッチリ包囲されてしまっている。
あれの中に入るのか?
本当に入れるのか?
いや!
入らなきゃ!
入るんだ!
決意を新たにして、突入場所を考える。
包囲の薄い所を探ろう……。
どこから行く?
もう、ちょい右へ回り込もう。
右へ移動して静かにコルセアを抜くとスコットさんたち三人が仕掛けた。
「おらあ!」
「シャ!」
「エルボー!」
オーク相手に背後から奇襲をかけた。
三体のオークが、ほぼ同時に倒れ、魔物たちの視線がスコットさんたち三人へ向いた。
(今だ! 【神速】!)
スキル【神速】で加速する。
木々が後ろへ流れ、あっと言う間に魔物が目の前に。
(狙いは、そこ!)
オーガ二体並んでいる足下だ。
巨体のオーガの足下は隙間があるし、十二才の俺は小柄だから行けるはずだ。
それに、オーガ二体はスコットさんたちを見ている。
(チャンスだ!)
コルセアを体に密着させ、引っかけないようにしてオーガの足下を高速ですり抜ける。
マチルダまで、あと5メートル。
オークをかわす。
あと3メートル。
チイィ!
ゴブリンが邪魔だ!
マチルダと俺の間にゴブリンがいる。
コルセアで斬るか?
いや、刃が引っかかって動きが止まると怖い。
ここは……飛び蹴り!
スキル【神速】でスピードがのった飛び蹴りがゴブリンの後頭部にヒットした。
ゴブリンの頭部が弾ける。
(クッ! バランスが崩れる!)
勢いのまま前方へ回転して地面を転がる。
着いた!
マチルダの横にピタリと着けた。
「マチルダ!」
「ヒ……ヒロト……」
「逃げるぞ!」
「あ……ありがとう……」
マチルダは、気を失ったのかそのままゆっくりと倒れだした。
俺はマチルダの正面に体を入れて、マチルダを背負う。
マイルズさんは?
ダメだ! 魔物に足止めされて突入できていない。
目があったが、首を振っている。
気絶したマチルダを背負って、一人でこの包囲から出なきゃならないのか!
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