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王都編
第95話 もっと出来ると思っていた
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俺は魔の森の中で金獅子と対峙している。
金獅子は高ステータスの魔物で、俺には倒せそうにない。
背中を冷たい汗が流れ、金獅子と俺の間に緊張が高まる。
突然、聞き覚えのある笑い声が響いた。
「クフフ」
金獅子も笑い声に反応し、顔を向けた。
俺は金獅子に視線を置いたまま、笑い声の主に語りかけた。
笑い方ですぐわかる。
地獄で会った悪魔だ。
「久しぶりだな。悪魔」
「そうだね」
相変わらず余計な事を、言わないヤツだ。
悪魔は俺から見て左の方にいる。
足音がして、こちらに近づいて来た。
視界に悪魔が入る。
相変わらずの危ない雰囲気を漂わせたナイスバディ。
だが、なぜか好感が持てない。
そして何故か知らないが、こいつと話していると俺はイライラする。
「何し来た」
「迎えに来たよ」
「迎え?」
「ダンジョンが出来たよ」
「ああ!」
そうだな。
この悪魔野郎は、この異世界にダンジョンを造っているのだった。
それで俺が色々アイデアを出して、ダンジョンが出来たらギルドに報告して人を集めると。
そう言う約束になっていた。
「悪いがそれどころじゃない」
「どうして?」
「見ればわかるだろ! 目の前の金獅子が、俺たちに襲い掛かろうとしているからだ!」
「なるほど」
悪魔野郎が金獅子の方へ向いた。
すると金獅子が悪魔野郎に襲い掛かった。
「GARU!」
「早い! おっ……おい! 悪魔!」
悪魔野郎は無防備に突っ立っている。
金獅子は後ろ足で力強く地面を蹴り、悪魔野郎に右前足を振りかざした。
金獅子の鋭い爪がギラリと光る。
「クフ……」
悪魔野郎が右手の人差し指をちょっと動かした。
すると辺りに風が巻き起こり、金獅子が空中でみじん切りになってしまった。
俺は目の前で起こった事に信じられない驚きを覚えたが、悪魔ならあり得るのかと納得もした。
不思議と恐怖は感じなかった。
「クフフ。邪魔なのはいなくなったよ」
「ああ。じゃあ、オマエが造ったダンジョンに行くか。案内しろよ」
俺は眠ったままのマチルダを背負うと悪魔の後を追った。
悪魔は魔の森を、家の近所を散歩するように平然と歩く。
警戒も無ければ、緊張もない。
不思議な事に魔物が一匹も現れない。
(気配を隠蔽するスキルとか、魔法を発動しているのか?)
そんな事を考えたが、途中で考えるのを止めた。
どうせコイツは、聞いた所で教えてくれないだろう。
俺は歩きながら違う話を悪魔に振った。
「おい。俺に呪いがかかっているらしいぞ」
「そう」
「オマエが呪いをかけたのか?」
「違うよ」
「じゃあ、俺が地獄から転生したから呪われているのか?」
「違うよ。地獄から転生しても呪われる事はないよ」
違うのか……。
誰かに呪いをかけられる心当りがないから、悪魔か地獄が原因かなと考えていたのだが……。
それっきり悪魔との会話がなくなってしまったので、俺は色々と考え事をしながら歩いた。
俺にかけられた呪い。
レベルが上がらないから、冒険者として成長が出来ない呪い。
幸いガチャやカードのお陰で何とか戦えているが、この呪いを何とかしたい。
悪魔や地獄のせいじゃないとすると……。
この異世界に転生してから呪いをかけられたのか?
ウォールやニューヨークファミリー?
いや……違うな……。
それだと時系列がおかしい。
俺がレベルアップしないのは、ウォールやニューヨークファミリーと出会う前からだ。
そうすると、転生してから冒険者になる間に呪いをかけられたのか?
それもおかしい。
子供時代の人間関係は限られている。
チアキママと幼馴染のシンディとルドルの街の子供としか付き合いがない。
俺に呪いをかけそうなヤツはいない。
そうすると転生前、地獄に行く前。
つまり前世日本。
そう言えば俺の死の瞬間、記憶が――。
「着いたよ」
俺の思考は悪魔の言葉で中断された。
目の前には石造りのダンジョンの入り口がある。
「これか……」
「帰りはあっちだよ」
悪魔が指さす方を見ると、十メートルくらい先、木々の間から草地が見えた。
スキル【マッピング】を意識してみる。
ふむ。
どうやらスコットさんたちと魔の森に入った地点から、大分東の方へ来たみたいだ。
振り返ると悪魔はもういなかった。
相変わらず愛想の欠片もない野郎だ。
「今日は帰るか……」
俺は魔の森を出て、冒険者ギルドを目指して歩き出した。
魔の森の外は草地で歩きやすく、見通しも良い。
視界に魔物はいない。
スキル【気配察知】にも感知は無い。
どうやら安全な場所まで来たようだ。
「う……うーん……」
マチルダが目を覚ました。
「目が覚めたか?」
「ヒロト……ここは?」
「魔の森の外だ。今、冒険者ギルドへ向かっている。歩けそうか?」
「ええ。大丈夫。自分で歩くわ」
マチルダを下ろして、二人並んで歩く。
最初は無言だったマチルダだが、少しずつ話し始めた。
「助けに来てくれたのね」
「ああ」
「どうして」
「パーティーメンバーだからな」
「そう。ありがとう」
「ああ」
なんかやけに素直だな。
普段の怒ったような口調も鳴りを潜めている。
「私……もっと出来ると思っていたわ……」
「良く戦っていたよ。俺たちが助けに行くまでもたせたじゃないか」
「そうだけど……」
「俺はマチルダを戦力として期待している。一緒に冒険者活動をしたいと思っている。だから、一人で無茶しないでくれ」
「わかったわ」
金獅子は高ステータスの魔物で、俺には倒せそうにない。
背中を冷たい汗が流れ、金獅子と俺の間に緊張が高まる。
突然、聞き覚えのある笑い声が響いた。
「クフフ」
金獅子も笑い声に反応し、顔を向けた。
俺は金獅子に視線を置いたまま、笑い声の主に語りかけた。
笑い方ですぐわかる。
地獄で会った悪魔だ。
「久しぶりだな。悪魔」
「そうだね」
相変わらず余計な事を、言わないヤツだ。
悪魔は俺から見て左の方にいる。
足音がして、こちらに近づいて来た。
視界に悪魔が入る。
相変わらずの危ない雰囲気を漂わせたナイスバディ。
だが、なぜか好感が持てない。
そして何故か知らないが、こいつと話していると俺はイライラする。
「何し来た」
「迎えに来たよ」
「迎え?」
「ダンジョンが出来たよ」
「ああ!」
そうだな。
この悪魔野郎は、この異世界にダンジョンを造っているのだった。
それで俺が色々アイデアを出して、ダンジョンが出来たらギルドに報告して人を集めると。
そう言う約束になっていた。
「悪いがそれどころじゃない」
「どうして?」
「見ればわかるだろ! 目の前の金獅子が、俺たちに襲い掛かろうとしているからだ!」
「なるほど」
悪魔野郎が金獅子の方へ向いた。
すると金獅子が悪魔野郎に襲い掛かった。
「GARU!」
「早い! おっ……おい! 悪魔!」
悪魔野郎は無防備に突っ立っている。
金獅子は後ろ足で力強く地面を蹴り、悪魔野郎に右前足を振りかざした。
金獅子の鋭い爪がギラリと光る。
「クフ……」
悪魔野郎が右手の人差し指をちょっと動かした。
すると辺りに風が巻き起こり、金獅子が空中でみじん切りになってしまった。
俺は目の前で起こった事に信じられない驚きを覚えたが、悪魔ならあり得るのかと納得もした。
不思議と恐怖は感じなかった。
「クフフ。邪魔なのはいなくなったよ」
「ああ。じゃあ、オマエが造ったダンジョンに行くか。案内しろよ」
俺は眠ったままのマチルダを背負うと悪魔の後を追った。
悪魔は魔の森を、家の近所を散歩するように平然と歩く。
警戒も無ければ、緊張もない。
不思議な事に魔物が一匹も現れない。
(気配を隠蔽するスキルとか、魔法を発動しているのか?)
そんな事を考えたが、途中で考えるのを止めた。
どうせコイツは、聞いた所で教えてくれないだろう。
俺は歩きながら違う話を悪魔に振った。
「おい。俺に呪いがかかっているらしいぞ」
「そう」
「オマエが呪いをかけたのか?」
「違うよ」
「じゃあ、俺が地獄から転生したから呪われているのか?」
「違うよ。地獄から転生しても呪われる事はないよ」
違うのか……。
誰かに呪いをかけられる心当りがないから、悪魔か地獄が原因かなと考えていたのだが……。
それっきり悪魔との会話がなくなってしまったので、俺は色々と考え事をしながら歩いた。
俺にかけられた呪い。
レベルが上がらないから、冒険者として成長が出来ない呪い。
幸いガチャやカードのお陰で何とか戦えているが、この呪いを何とかしたい。
悪魔や地獄のせいじゃないとすると……。
この異世界に転生してから呪いをかけられたのか?
ウォールやニューヨークファミリー?
いや……違うな……。
それだと時系列がおかしい。
俺がレベルアップしないのは、ウォールやニューヨークファミリーと出会う前からだ。
そうすると、転生してから冒険者になる間に呪いをかけられたのか?
それもおかしい。
子供時代の人間関係は限られている。
チアキママと幼馴染のシンディとルドルの街の子供としか付き合いがない。
俺に呪いをかけそうなヤツはいない。
そうすると転生前、地獄に行く前。
つまり前世日本。
そう言えば俺の死の瞬間、記憶が――。
「着いたよ」
俺の思考は悪魔の言葉で中断された。
目の前には石造りのダンジョンの入り口がある。
「これか……」
「帰りはあっちだよ」
悪魔が指さす方を見ると、十メートルくらい先、木々の間から草地が見えた。
スキル【マッピング】を意識してみる。
ふむ。
どうやらスコットさんたちと魔の森に入った地点から、大分東の方へ来たみたいだ。
振り返ると悪魔はもういなかった。
相変わらず愛想の欠片もない野郎だ。
「今日は帰るか……」
俺は魔の森を出て、冒険者ギルドを目指して歩き出した。
魔の森の外は草地で歩きやすく、見通しも良い。
視界に魔物はいない。
スキル【気配察知】にも感知は無い。
どうやら安全な場所まで来たようだ。
「う……うーん……」
マチルダが目を覚ました。
「目が覚めたか?」
「ヒロト……ここは?」
「魔の森の外だ。今、冒険者ギルドへ向かっている。歩けそうか?」
「ええ。大丈夫。自分で歩くわ」
マチルダを下ろして、二人並んで歩く。
最初は無言だったマチルダだが、少しずつ話し始めた。
「助けに来てくれたのね」
「ああ」
「どうして」
「パーティーメンバーだからな」
「そう。ありがとう」
「ああ」
なんかやけに素直だな。
普段の怒ったような口調も鳴りを潜めている。
「私……もっと出来ると思っていたわ……」
「良く戦っていたよ。俺たちが助けに行くまでもたせたじゃないか」
「そうだけど……」
「俺はマチルダを戦力として期待している。一緒に冒険者活動をしたいと思っている。だから、一人で無茶しないでくれ」
「わかったわ」
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