外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!

武蔵野純平

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第三章 行方不明

第36話 ダンジョンを駆け抜けろ!

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 アンが俺たちの冒険者パーティーに臨時加入した。

 俺たちの目標は初心者ダンジョンをクリアすること。
 そして、アンのお父さんを探しに行くのだ。

 初心者ダンジョンに入り一階層を走り抜ける。カツカツと革のブーツがダンジョンの通路を叩く。

 前方にホーンラビットと戦闘をしている冒険者パーティーがいる。
 俺たちは、戦闘の邪魔にならないように、横を走り抜けた。

「お先に!」

「えっ!?」

 新人冒険者パーティーは、俺たちが横を走り抜けるとポカンとした顔をした。

 ミレットから提供された地図。そして、俺のスキル【気配察知】を活用し、余計な戦闘を避け攻略スピードを上げるのだ。

 二階層に入った。
 二階層の魔物はナイフ装備のゴブリンだが、既に俺とミレットの相手にはならない。

 スキル【気配察知】に反応!

 俺たちが走る前方にゴブリンがいる。
 ゴブリンがいるのは、二階層から三階層へ続く階段の手前だ。
 この戦闘は避けられない。

「俺が行く!」

 俺の後ろに続くミレットとアンに、俺はひと声かけ、ゴブリンに向かってダッシュした。
 ゴブリンが接近する俺に気が付き、ナイフを振り上げ敵対的な声を上げる。

 俺は盾をゴブリンに向けて突っ込んだ。
 盾を使った体当たり。
 問答無用の突撃だ。

「ギッ!」

「遅い!」

 グワシャ! 湿った音と共にゴブリンが吹き飛ぶ。
 俺の体当たりを喰くらったゴブリンは、ダンジョンの通路を無様に転がり、消えて魔石がドロップした。

 俺は素早く魔石を拾い上げる。

 さあ、三階層へ続く階段に到着した。

「三階層へ行くよ!」

「行きましょう!」

「りょ、了解!」

 ミレットとアンに声を掛ける。
 ミレットは、やる気に溢れた声と表情。
 アンは、驚きの表情で呼吸が少し荒い。

 階段を下りたところで、休憩を入れることにした。
 それぞれ水筒の水を飲む。

「は……早い! 早いよ!」

 アンがつぶやく。

 新人冒険者なら慎重に各階層をクリアしていくのが普通だ。
 ダンジョンの階層を走り抜けるなど、新人冒険者ではあり得ないことなのだろう。

 だが、この程度で驚いてもらっては困る。
 さっさと初心者ダンジョンをクリアして、アンのお父さんを探しに行くのだ。

 遠慮なし。
 全力でやらせてもらう。

 俺はアンのつぶやきをスルーして、ミレットと打ち合わせる。
 ミレットが三階層の地図を差し出す。

 三階層の広さは一階層、二階層と変わらない。
 全力で行けば、それほど時間はかからないだろう。
 俺は三階層クリアの時間を一時間と目星をつけた。

 続けてミレットが、護衛のシンシアさんから聞いた魔物情報を提供してくれる。

「三階層の魔物は、レッサートレントです。木の姿形をした魔物です」

「木なんだ!」

 木の魔物なんて、不思議な感じだ。

「レッサートレントの弱点は火です」

「火か。普通の木と同じだね。じゃあ、ミレットの火魔法が有効なのかな?」

「ええ。ただ、レッサートレントは攻撃のリーチが長いそうです。枝をムチのようにしならせて攻撃してくるそうですわ」

 ミレットが身振り手振りを交えながら、レッサートレントの解説をする。
 正直、情報が豊富で助かる。

 俺は頭の中で、レッサートレントとの戦闘をシミュレーションしてみた。

「と、いうことは……、俺とアンでレッサートレントの攻撃を防いで、ミレットが火魔法で攻撃する形が良さそうだね」

「そうですね!」

 盾役と攻撃役を分ける形だ。
 俺はアンに指示を出す。

「アン。レッサートレントが出たら、俺が正面に立つ。アンは、ミレットを守ってくれ」

「わかった!」

 アンは元気に返事をした。
 呼吸も整ったようだ。

 俺たちは三階層に足を踏み出した。
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