57 / 69
第四章 中級ダンジョン
第57話 ダンジョン内の水場
しおりを挟む
俺たちは中級ダンジョン一階層で、パワーラビットを倒しながら水場へ向かった。
一階層のエンカウント率は高めで、水場へ着くまでの一時間の間に四回の戦闘を行った。
討伐ポイントを4ポイントと赤い魔石四個を手に入れた。
到着した水場は、とてもきれいな場所だった。
「ここが水場か!」
「きれいですね!」
「は~!」
水場は泉だった。
泉の周りには、色とりどりの小さな花が沢山咲いている。
人の背丈より少し高い木が生えていて、美味しそうな木の実をつけていた。
「水場は安全地帯だと、護衛騎士のシンシアが言っていました」
ミレットが水場の情報を伝えてくれた。
安全地帯――魔物の襲撃がない場所だ。
ここで、ゆっくり休めるぞ!
「じゃあ、休憩しよう!」
俺たちは、花を踏まないように水場に近づいた。
泉はきれいな水がコンコンと湧き出ている。
俺は水筒に水を補充し、ミレットは布を濡らして首筋を拭いている。
清潔ですぐ飲める水が手に入るのはありがたい。
俺は泉の周囲に生えている花や草を観察した。
前世日本のネモフィラやパンジーに似た小さくて可愛い花だ。
色とりどりで目を楽しませてくれる。
「ねえ、ミレット。薬草のように価値のある草は生えてないかな?」
「普通の花みたいですね。でも、水場の果物は美味しいとシンシアが言ってました」
「食べてみよう!」
俺は近くの実をもいでみた。
梨に似た果実だ。
ナイフで皮をむいて口に入れると、上品な甘さがした。
「シャクシャクして美味しい! そうだ! サオリママに持って帰ろう!」
俺は梨に似た果物をもいで、マジックバッグに入れ始めた。
「ふふ。あまり沢山はダメですよ。他の冒険者が食べる分を残しておくのがマナーですよ」
「了解! じゃあ、二ついただこう!」
なるほど、水場は冒険者の休憩場所だ。
貴重な食料を独り占めしないように、マナーがあるのだろう。
サオリママが喜んでくれるかな?
俺は梨に似た果物を笑顔で収穫した。
「ねえ! 見て! たき火の跡がある!」
泉の向こうで、アンが叫んだ。
俺とミレットは、アンに駆け寄る。
アンの側には、誰かが使ったたき火の跡があった。
地面が黒く焦げて、黒い木の燃えかすが残っている。
このたき火の跡は、アンのお父さんたちが利用したのだろうか?
何時間前に利用したたき火だろうか?
俺はたき火の跡を観察したが、さっぱりわからない。
アンに聞いてみる。
「アン。どのくらい前のたき火かわかる?」
「ううん」
「ミレットは、どう?」
「私もわかりません。けれど、燃えかすが暖かくないから、消火して一定の時間は経っていますね」
「ここ数日かな……」
俺たちは、周囲を探してみたがたき火の跡以外は見つからなかった。
さて、どうしたものだろう……。
俺としては、闇雲に探し回るよりも、たき火の跡――人がいた痕跡があるこの右上エリアを探してみたい。
だが、このたき火の跡がアンのお父さんたちの痕跡だという確証はない。
俺はミレットとアンに意見を求めた。
「この水場があるエリアを重点的に探索するか? それとも他のエリアも満遍なく探索するか? 二人はどちらが良いと思う?」
アンがすぐに答えた。
「私はこの付近をじっくり探したい。お父さんのパーティーは、新人のタナーさんが加入したばかりよ。それなら深い階層にいかないで、浅い階層で探索していると思う。このたき火の跡は、怪しいよ!」
「確かに怪しいね。ミレットは?」
「どうでしょう……。迷いますね……。そもそも、この一階層にいるかどうかもわからないですから……。でも、この水場は二階層へ続く階段の反対側です。ここにいるということは、下の階層に行く意思がない……。おかしいですよね……」
ミレットは片手を頬にあてて考え込む。
「ミレット。おかしいというのは?」
「中級ダンジョンは、深いほど稼ぎが良いそうです。ですから一階層でウロウロする冒険者は少ないと思うのです。ここは階段から遠いエリアですよね?」
「そっか。下の階層に行くつもりなら、階段に近いエリアで探索をするはずだね」
「ええ。このエリアを探索するのは、一階層の探索だけで良いと割り切っている冒険者パーティーでしょう」
「気になるね……」
アンのお父さんたちが、一階層で連携の確認など慣らし運転をしていた可能性はあるな……。
俺は決断する。
「よし! この右上のエリアを念入りに捜索しよう!」
「「了解!」」
俺たちは休憩を終えて、捜索を再開した。
一階層のエンカウント率は高めで、水場へ着くまでの一時間の間に四回の戦闘を行った。
討伐ポイントを4ポイントと赤い魔石四個を手に入れた。
到着した水場は、とてもきれいな場所だった。
「ここが水場か!」
「きれいですね!」
「は~!」
水場は泉だった。
泉の周りには、色とりどりの小さな花が沢山咲いている。
人の背丈より少し高い木が生えていて、美味しそうな木の実をつけていた。
「水場は安全地帯だと、護衛騎士のシンシアが言っていました」
ミレットが水場の情報を伝えてくれた。
安全地帯――魔物の襲撃がない場所だ。
ここで、ゆっくり休めるぞ!
「じゃあ、休憩しよう!」
俺たちは、花を踏まないように水場に近づいた。
泉はきれいな水がコンコンと湧き出ている。
俺は水筒に水を補充し、ミレットは布を濡らして首筋を拭いている。
清潔ですぐ飲める水が手に入るのはありがたい。
俺は泉の周囲に生えている花や草を観察した。
前世日本のネモフィラやパンジーに似た小さくて可愛い花だ。
色とりどりで目を楽しませてくれる。
「ねえ、ミレット。薬草のように価値のある草は生えてないかな?」
「普通の花みたいですね。でも、水場の果物は美味しいとシンシアが言ってました」
「食べてみよう!」
俺は近くの実をもいでみた。
梨に似た果実だ。
ナイフで皮をむいて口に入れると、上品な甘さがした。
「シャクシャクして美味しい! そうだ! サオリママに持って帰ろう!」
俺は梨に似た果物をもいで、マジックバッグに入れ始めた。
「ふふ。あまり沢山はダメですよ。他の冒険者が食べる分を残しておくのがマナーですよ」
「了解! じゃあ、二ついただこう!」
なるほど、水場は冒険者の休憩場所だ。
貴重な食料を独り占めしないように、マナーがあるのだろう。
サオリママが喜んでくれるかな?
俺は梨に似た果物を笑顔で収穫した。
「ねえ! 見て! たき火の跡がある!」
泉の向こうで、アンが叫んだ。
俺とミレットは、アンに駆け寄る。
アンの側には、誰かが使ったたき火の跡があった。
地面が黒く焦げて、黒い木の燃えかすが残っている。
このたき火の跡は、アンのお父さんたちが利用したのだろうか?
何時間前に利用したたき火だろうか?
俺はたき火の跡を観察したが、さっぱりわからない。
アンに聞いてみる。
「アン。どのくらい前のたき火かわかる?」
「ううん」
「ミレットは、どう?」
「私もわかりません。けれど、燃えかすが暖かくないから、消火して一定の時間は経っていますね」
「ここ数日かな……」
俺たちは、周囲を探してみたがたき火の跡以外は見つからなかった。
さて、どうしたものだろう……。
俺としては、闇雲に探し回るよりも、たき火の跡――人がいた痕跡があるこの右上エリアを探してみたい。
だが、このたき火の跡がアンのお父さんたちの痕跡だという確証はない。
俺はミレットとアンに意見を求めた。
「この水場があるエリアを重点的に探索するか? それとも他のエリアも満遍なく探索するか? 二人はどちらが良いと思う?」
アンがすぐに答えた。
「私はこの付近をじっくり探したい。お父さんのパーティーは、新人のタナーさんが加入したばかりよ。それなら深い階層にいかないで、浅い階層で探索していると思う。このたき火の跡は、怪しいよ!」
「確かに怪しいね。ミレットは?」
「どうでしょう……。迷いますね……。そもそも、この一階層にいるかどうかもわからないですから……。でも、この水場は二階層へ続く階段の反対側です。ここにいるということは、下の階層に行く意思がない……。おかしいですよね……」
ミレットは片手を頬にあてて考え込む。
「ミレット。おかしいというのは?」
「中級ダンジョンは、深いほど稼ぎが良いそうです。ですから一階層でウロウロする冒険者は少ないと思うのです。ここは階段から遠いエリアですよね?」
「そっか。下の階層に行くつもりなら、階段に近いエリアで探索をするはずだね」
「ええ。このエリアを探索するのは、一階層の探索だけで良いと割り切っている冒険者パーティーでしょう」
「気になるね……」
アンのお父さんたちが、一階層で連携の確認など慣らし運転をしていた可能性はあるな……。
俺は決断する。
「よし! この右上のエリアを念入りに捜索しよう!」
「「了解!」」
俺たちは休憩を終えて、捜索を再開した。
223
あなたにおすすめの小説
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル
異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった
孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた
そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた
その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。
5レベルになったら世界が変わりました
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜
東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。
ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。
「おい雑魚、これを持っていけ」
ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。
ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。
怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。
いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。
だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。
ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。
勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。
自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。
今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。
だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。
その時だった。
目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。
その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。
ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。
そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。
これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。
※小説家になろうにて掲載中
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!
無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す
紅月シン
ファンタジー
七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。
才能限界0。
それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。
レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。
つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。
だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。
その結果として実家の公爵家を追放されたことも。
同日に前世の記憶を思い出したことも。
一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。
その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。
スキル。
そして、自らのスキルである限界突破。
やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。
※小説家になろう様にも投稿しています
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
最弱スキルも9999個集まれば最強だよね(完結)
排他的経済水域
ファンタジー
12歳の誕生日
冒険者になる事が憧れのケインは、教会にて
スキル適性値とオリジナルスキルが告げられる
強いスキルを望むケインであったが、
スキル適性値はG
オリジナルスキルも『スキル重複』というよくわからない物
友人からも家族からも馬鹿にされ、
尚最強の冒険者になる事をあきらめないケイン
そんなある日、
『スキル重複』の本来の効果を知る事となる。
その効果とは、
同じスキルを2つ以上持つ事ができ、
同系統の効果のスキルは効果が重複するという
恐ろしい物であった。
このスキルをもって、ケインの下剋上は今始まる。
HOTランキング 1位!(2023年2月21日)
ファンタジー24hポイントランキング 3位!(2023年2月21日)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる