33 / 92
第二章 新領地への旅
第33話 騎竜の牧場
しおりを挟む
――翌日。
俺と妹のマリーは、ダラダラと部屋で過ごしていた。
疲労回復のために休みは必要だが、半日もすると飽きてしまった。
昼食はゲストみんなで食堂に集まる。
大きなテーブルに料理が並び、ワイワイと賑やかに食べるのが南部流だ。
南部貴族たちは、元気が良い。
前世の親戚の集まりみたいだなと笑みがこぼれる。
王都のお上品なスタイルより、俺はこっちの方が断然好きだ!
妹のマリーも、かまってもらえる相手が沢山いて嬉しいようだ。
笑顔が絶えない。
護衛のネコネコ騎士のみーちゃんとエルフのシューさんも一緒だ。
二人とも健啖家で、かなりの量を平らげている。
ダークエルフのエクレールは、部屋に食事を運ばせている。
執事のセバスチャンは、今日はお休み。
使用人向けの食堂で食事をしているだろう。
フォー辺境伯は、用事があるらしく朝から出ているそうだ。
「なあ! 午後は騎竜に乗りに行かないか?」
ジロンド子爵からのお誘いだ。
妹のマリーが元気良く手を上げた。
「乗りたいです!」
「おお! マリーちゃんは、元気が良いな! エトワール伯爵。フォー辺境伯が牧場の騎竜に乗って良いと言ったんだ。牧場は、この屋敷のすぐ裏だよ」
「良いですね! フォー辺境伯とジロンド子爵のご好意に甘えさせていただきます」
「じゃあ、ご飯を食べたら行こう!」
ジロンド子爵は、すっかり俺とマリーの兄貴分の雰囲気だ。
面倒見が良くて、明るく元気!
こういう大人に俺もなりたい。
一休みした後、屋敷の裏にある牧場へ向かった。
案内をしてくれるのは、フォー辺境伯に雇われている騎竜の世話係だ。
何とこの騎竜の世話係は、準騎士爵の位を持っている。
準騎士爵は、平民に与えられる名誉的な位で貴族ではない。
一般には準貴族と呼ばれ、一代限りの称号だ。
爵位ではなく称号なので、各貴族の裁量で自領の平民に与えることが出来る。
軍で活躍した古参兵に送られることが多い。
騎竜の世話係が準騎士爵とは……。
南部で騎竜がどれだけ重視されているのか、よくわかる。
騎竜の世話係は、ジョンという老人だ。
ジョン老人の下に三人若い助手がいるそうだ。
ジョン老人の案内でフォー辺境伯の屋敷の裏へ向かう。
フォー辺境伯の屋敷の裏は、丘が続いていて緩やかなアップダウンのある地形になっていた。
「こちらが牧場でございます」
騎竜の牧場は、とても広い。
木の柵が延々と続いている。
そして、沢山の騎竜が気持ちよさそうに走り回っている。
俺たちが木の柵を越え牧場の中に入ると騎竜たちが寄ってきた。
騎竜たちは妹のマリーが気になるようで、マリーを囲んで子供をあやすようにしている。
「マリー様は、群れの子供だと思われてますじゃ」
ジョン老人は、騎竜とマリーが戯れる様子をニコニコと笑ってみている。
騎竜が好きなんだな。
ちょっと心配なのは、俺やマリーは年齢のわりには小柄なのだ。
騎竜に乗れるのだろうか?
俺は伯爵として爵位に相応しい態度で、ジョン老人に話しかけた。
「ジョン準騎士爵。私やマリーのような子供が乗れる騎竜があるのだろうか?」
「ございます。小柄で頭が良く、気性が穏やかな騎竜をお選びいたします」
ジョン老人が連れて来たのは、大人しい騎竜だった。
他の騎竜より一回り小さい。
この騎竜なら小柄な俺やマリーでもまたがれそうだ。
さらに頭が良い。
俺とマリーが乗ろうとすると、体をかがめ頭を下げて人が乗りやすくしてくれる。
乗り方は馬と同じで、足で騎竜の胴を軽く叩いたら進め、手綱を引いたら止まれ。
利口な騎竜のおかげもあって、俺もマリーもすぐ騎竜に乗れるようになった。
「それでは、少し遠乗りと参りましょう。ご案内いたしますじゃ」
ジョン老人が騎竜に乗り先頭を歩く。
続いて俺、マリー、ジロンド子爵の順で、牧場の奥の方へ騎竜を進ませる。
牧場の奥には川から水を引き込んだ水場や林があり、風景の変化が目を楽しませてくれた。
騎竜を軽く走らせると、風が頬を叩き、爽快な気分になる。
騎竜か……欲しいな……。
俺は先頭を行くジョン老人に騎竜を並ばせながら、騎竜の売買について聞いてみた。
「ジョン準騎士爵。私は王都から来たので騎竜に詳しくないのだが、騎竜の売買は行われているのか?」
「もちろんでございます」
「私でも買えるのだろうか?」
「騎竜は、南部の人でしたら、どなたでもお買いになれます。平民でも富裕な冒険者は、騎竜を所持しております。移動が早いですし、戦力になりますので」
王都でも稼いでいる冒険者は馬車を所有していた。
なるほど南部では移動手段が騎竜になるのか。
ジョン老人が続ける。
「エトワール伯爵様は、高位の貴族ですので、爵位に相応しい騎竜をお持ちになった方がよろしいでしょう」
「そういうものか?」
「はい。南部貴族なら騎竜に乗れ! でございます。騎竜をお持ちでなければ、他の貴族に侮られましょう」
「うーん。そうなのか……」
俺たちの話が聞こえたのだろう。
ジロンド子爵が後ろから話に加わった。
「まあ、急がなくても良いけど、騎竜は持っていた方が良いね」
「騎竜を持っていないと、どうなりますか?」
「男とみなされない」
「そんなに!」
あー、これは……。
田舎のヤンキーが車自慢するのと同じか……。
『ダセエ車乗ってんじゃねえよ!』
――みたいなノリだ。
これは騎竜を買わざるを得ない。
「ジョン準騎士爵。フォー辺境伯に騎竜を売ってもらうと、いくらくらいだろうか?」
「左様でございますね。騎竜はピンキリでございますから、答えるのは難しゅうございますね」
まあ、生体だもんな。
工業製品と違って販売価格が決まってないのだろう。
「ふむ。相場が知りたいのだが、安い騎竜はいくらくらいだ?」
「安い騎竜でございますか? 私が見た中では、一千万リーブルが一番お安い価格でございました」
俺は振り向いてジロンド子爵を見た。
ジロンド子爵は渋い顔だ。
「一千万の騎竜じゃなあ……。あまり良くないと思うぞ。体が小さくて、気性が荒いとか。血統が良くないとか」
「血統ですか!?」
「あるんだよ。体が大きい血統、足が速い血統、スタミナがある血統、力が強い血統、重視されるのは、この四つだね」
競走馬みたいだな……。
俺が前世の競馬ゲームを思い浮かべていると、ジョン老人が真剣な目つきで情報を付け加えた。
「他にも、体のバランスが良い、尻尾が長い、頭の善し悪し、気性の善し悪し、ウロコの色、顔つきなどもございます」
「そんなところまで気にするのか!」
「はい。色々な要素を考えて交配をしますと、優れた騎竜が産まれるのです。ここにいる騎竜は、何世代にも渡って磨き抜かれた騎竜でございます」
「はあ~凄いな~。ちなみに私が乗っている騎竜は、買うとしたらいくらだろうか?」
ジョン老人は、騎竜を操りながらジッと考えてから答えた。
「左様でございますね……。エトワール伯爵様がお乗りになっている騎竜は、優良な血統の騎竜でございます。頭が良く、気性が良く、足が速く、スタミナもまあまあございます。しかしながら、体が小さく、力が弱いので、戦闘面では少々劣るでしょう」
「なるほど……」
「ですので、五千万リーブルと言いたいですが、戦闘面が劣ることを考慮して四千五百万リーブルですね」
「そんなにするのか!」
目が飛び出た!
俺が王都で生成したワイングラスは一脚十万リーブルで売れた。
ワイングラス四百五十脚分だ。
価格の感覚が高級スポーツカーみたいだ。
イタリア製の馬印や牛印をぶらさげた車か!
チラリとジロンド子爵を見ると、ニヤニヤ笑っている。
「エトワール伯爵が驚くのも無理はない。けど良い騎竜の値段は天井知らずだよ。良い騎竜を買って、交配させて優れた騎竜を産ませるのさ。そうすれば、買った値段以上の騎竜が産まれるという訳さ!」
「奥が深いですね……」
「それに優れた騎竜を持っているのは、ステイタスでもあるよ」
「じゃあ、ジロンド子爵が乗っている騎竜も?」
「なかなかの血統さ! コイツは体が大きくて力が強い。特に戦闘で頼りになる騎竜だね」
これは競走馬の世界だな。
俺は騎竜を買うことを真剣に考えた。
「ジョン準騎士爵。私と妹のマリーには、どんな騎竜が良いのだろう?」
「エトワール伯爵様とマリー様でしたら、とにかく足の速い騎竜がよろしいでしょう。戦闘になったら素早く安全な場所に避難できる。御身の安全を第一に考え騎竜を選ばれると良いでしょう」
「なるほど……。この騎竜のように小柄な方が良いだろうか?」
「いえ。エトワール伯爵様もマリー様も、これから大きくなられるでしょう。騎竜のサイズは気になさらないでよろしいかと」
「ならば選択肢が増えるな」
どんな騎竜を買うか考えることが、だんだん楽しくなってきたぞ!
スピード重視で気性の良い騎竜が良いかな……。
「子供の騎竜をお買い求めになってはいかがですか?」
「子供の騎竜?」
「はい。主と騎竜が共に成長をするのです。かけがえのない家族となりましょう」
「それは良いな!」
あれか!
子供が出来たら犬を飼えってヤツだ!
「そういえば、ちょうど騎竜が子を産みました。ご覧になりますか?」
「見――」
見ると言おうとして、俺はピタリと口を閉ざした。
今、幼い騎竜を見たら、買うといってしまいそうだ。
だが、明日にはマンドラゴラの根と満月草の花びらを冒険者ギルドで買い取らなければならない。
お金が必要なのだ。
「ジョン準騎士爵。その子供の騎竜は、いくらなのだ?」
「良い血統の騎竜の子でございますから、二億リーブル……。いや! 三億リーブル……。いやいや! 四億――」
「わかった! ジョン騎士爵! まずは、資金を作ってからだ! また、相談に乗ってくれ!」
俺は慌ててジョン老人にストップをかけた。
騎竜の価格がストップ高になりそうなのだ。
よくよく考えてみると、俺はジョン老人のセールストークにまんまと引っかかり買う気になっていた。
これって絶対フォー辺境伯の仕込みだよな……。
騎竜の値段を聞いて俺が顔を青くしたのだろう。
ジロンド子爵がゲラゲラ笑っていた。
「お兄様! 私、騎竜が欲しいです!」
妹のマリーにおねだりされてしまった。
よし!
騎竜を買うために、新領地開発をがんばろう!
俺と妹のマリーは、ダラダラと部屋で過ごしていた。
疲労回復のために休みは必要だが、半日もすると飽きてしまった。
昼食はゲストみんなで食堂に集まる。
大きなテーブルに料理が並び、ワイワイと賑やかに食べるのが南部流だ。
南部貴族たちは、元気が良い。
前世の親戚の集まりみたいだなと笑みがこぼれる。
王都のお上品なスタイルより、俺はこっちの方が断然好きだ!
妹のマリーも、かまってもらえる相手が沢山いて嬉しいようだ。
笑顔が絶えない。
護衛のネコネコ騎士のみーちゃんとエルフのシューさんも一緒だ。
二人とも健啖家で、かなりの量を平らげている。
ダークエルフのエクレールは、部屋に食事を運ばせている。
執事のセバスチャンは、今日はお休み。
使用人向けの食堂で食事をしているだろう。
フォー辺境伯は、用事があるらしく朝から出ているそうだ。
「なあ! 午後は騎竜に乗りに行かないか?」
ジロンド子爵からのお誘いだ。
妹のマリーが元気良く手を上げた。
「乗りたいです!」
「おお! マリーちゃんは、元気が良いな! エトワール伯爵。フォー辺境伯が牧場の騎竜に乗って良いと言ったんだ。牧場は、この屋敷のすぐ裏だよ」
「良いですね! フォー辺境伯とジロンド子爵のご好意に甘えさせていただきます」
「じゃあ、ご飯を食べたら行こう!」
ジロンド子爵は、すっかり俺とマリーの兄貴分の雰囲気だ。
面倒見が良くて、明るく元気!
こういう大人に俺もなりたい。
一休みした後、屋敷の裏にある牧場へ向かった。
案内をしてくれるのは、フォー辺境伯に雇われている騎竜の世話係だ。
何とこの騎竜の世話係は、準騎士爵の位を持っている。
準騎士爵は、平民に与えられる名誉的な位で貴族ではない。
一般には準貴族と呼ばれ、一代限りの称号だ。
爵位ではなく称号なので、各貴族の裁量で自領の平民に与えることが出来る。
軍で活躍した古参兵に送られることが多い。
騎竜の世話係が準騎士爵とは……。
南部で騎竜がどれだけ重視されているのか、よくわかる。
騎竜の世話係は、ジョンという老人だ。
ジョン老人の下に三人若い助手がいるそうだ。
ジョン老人の案内でフォー辺境伯の屋敷の裏へ向かう。
フォー辺境伯の屋敷の裏は、丘が続いていて緩やかなアップダウンのある地形になっていた。
「こちらが牧場でございます」
騎竜の牧場は、とても広い。
木の柵が延々と続いている。
そして、沢山の騎竜が気持ちよさそうに走り回っている。
俺たちが木の柵を越え牧場の中に入ると騎竜たちが寄ってきた。
騎竜たちは妹のマリーが気になるようで、マリーを囲んで子供をあやすようにしている。
「マリー様は、群れの子供だと思われてますじゃ」
ジョン老人は、騎竜とマリーが戯れる様子をニコニコと笑ってみている。
騎竜が好きなんだな。
ちょっと心配なのは、俺やマリーは年齢のわりには小柄なのだ。
騎竜に乗れるのだろうか?
俺は伯爵として爵位に相応しい態度で、ジョン老人に話しかけた。
「ジョン準騎士爵。私やマリーのような子供が乗れる騎竜があるのだろうか?」
「ございます。小柄で頭が良く、気性が穏やかな騎竜をお選びいたします」
ジョン老人が連れて来たのは、大人しい騎竜だった。
他の騎竜より一回り小さい。
この騎竜なら小柄な俺やマリーでもまたがれそうだ。
さらに頭が良い。
俺とマリーが乗ろうとすると、体をかがめ頭を下げて人が乗りやすくしてくれる。
乗り方は馬と同じで、足で騎竜の胴を軽く叩いたら進め、手綱を引いたら止まれ。
利口な騎竜のおかげもあって、俺もマリーもすぐ騎竜に乗れるようになった。
「それでは、少し遠乗りと参りましょう。ご案内いたしますじゃ」
ジョン老人が騎竜に乗り先頭を歩く。
続いて俺、マリー、ジロンド子爵の順で、牧場の奥の方へ騎竜を進ませる。
牧場の奥には川から水を引き込んだ水場や林があり、風景の変化が目を楽しませてくれた。
騎竜を軽く走らせると、風が頬を叩き、爽快な気分になる。
騎竜か……欲しいな……。
俺は先頭を行くジョン老人に騎竜を並ばせながら、騎竜の売買について聞いてみた。
「ジョン準騎士爵。私は王都から来たので騎竜に詳しくないのだが、騎竜の売買は行われているのか?」
「もちろんでございます」
「私でも買えるのだろうか?」
「騎竜は、南部の人でしたら、どなたでもお買いになれます。平民でも富裕な冒険者は、騎竜を所持しております。移動が早いですし、戦力になりますので」
王都でも稼いでいる冒険者は馬車を所有していた。
なるほど南部では移動手段が騎竜になるのか。
ジョン老人が続ける。
「エトワール伯爵様は、高位の貴族ですので、爵位に相応しい騎竜をお持ちになった方がよろしいでしょう」
「そういうものか?」
「はい。南部貴族なら騎竜に乗れ! でございます。騎竜をお持ちでなければ、他の貴族に侮られましょう」
「うーん。そうなのか……」
俺たちの話が聞こえたのだろう。
ジロンド子爵が後ろから話に加わった。
「まあ、急がなくても良いけど、騎竜は持っていた方が良いね」
「騎竜を持っていないと、どうなりますか?」
「男とみなされない」
「そんなに!」
あー、これは……。
田舎のヤンキーが車自慢するのと同じか……。
『ダセエ車乗ってんじゃねえよ!』
――みたいなノリだ。
これは騎竜を買わざるを得ない。
「ジョン準騎士爵。フォー辺境伯に騎竜を売ってもらうと、いくらくらいだろうか?」
「左様でございますね。騎竜はピンキリでございますから、答えるのは難しゅうございますね」
まあ、生体だもんな。
工業製品と違って販売価格が決まってないのだろう。
「ふむ。相場が知りたいのだが、安い騎竜はいくらくらいだ?」
「安い騎竜でございますか? 私が見た中では、一千万リーブルが一番お安い価格でございました」
俺は振り向いてジロンド子爵を見た。
ジロンド子爵は渋い顔だ。
「一千万の騎竜じゃなあ……。あまり良くないと思うぞ。体が小さくて、気性が荒いとか。血統が良くないとか」
「血統ですか!?」
「あるんだよ。体が大きい血統、足が速い血統、スタミナがある血統、力が強い血統、重視されるのは、この四つだね」
競走馬みたいだな……。
俺が前世の競馬ゲームを思い浮かべていると、ジョン老人が真剣な目つきで情報を付け加えた。
「他にも、体のバランスが良い、尻尾が長い、頭の善し悪し、気性の善し悪し、ウロコの色、顔つきなどもございます」
「そんなところまで気にするのか!」
「はい。色々な要素を考えて交配をしますと、優れた騎竜が産まれるのです。ここにいる騎竜は、何世代にも渡って磨き抜かれた騎竜でございます」
「はあ~凄いな~。ちなみに私が乗っている騎竜は、買うとしたらいくらだろうか?」
ジョン老人は、騎竜を操りながらジッと考えてから答えた。
「左様でございますね……。エトワール伯爵様がお乗りになっている騎竜は、優良な血統の騎竜でございます。頭が良く、気性が良く、足が速く、スタミナもまあまあございます。しかしながら、体が小さく、力が弱いので、戦闘面では少々劣るでしょう」
「なるほど……」
「ですので、五千万リーブルと言いたいですが、戦闘面が劣ることを考慮して四千五百万リーブルですね」
「そんなにするのか!」
目が飛び出た!
俺が王都で生成したワイングラスは一脚十万リーブルで売れた。
ワイングラス四百五十脚分だ。
価格の感覚が高級スポーツカーみたいだ。
イタリア製の馬印や牛印をぶらさげた車か!
チラリとジロンド子爵を見ると、ニヤニヤ笑っている。
「エトワール伯爵が驚くのも無理はない。けど良い騎竜の値段は天井知らずだよ。良い騎竜を買って、交配させて優れた騎竜を産ませるのさ。そうすれば、買った値段以上の騎竜が産まれるという訳さ!」
「奥が深いですね……」
「それに優れた騎竜を持っているのは、ステイタスでもあるよ」
「じゃあ、ジロンド子爵が乗っている騎竜も?」
「なかなかの血統さ! コイツは体が大きくて力が強い。特に戦闘で頼りになる騎竜だね」
これは競走馬の世界だな。
俺は騎竜を買うことを真剣に考えた。
「ジョン準騎士爵。私と妹のマリーには、どんな騎竜が良いのだろう?」
「エトワール伯爵様とマリー様でしたら、とにかく足の速い騎竜がよろしいでしょう。戦闘になったら素早く安全な場所に避難できる。御身の安全を第一に考え騎竜を選ばれると良いでしょう」
「なるほど……。この騎竜のように小柄な方が良いだろうか?」
「いえ。エトワール伯爵様もマリー様も、これから大きくなられるでしょう。騎竜のサイズは気になさらないでよろしいかと」
「ならば選択肢が増えるな」
どんな騎竜を買うか考えることが、だんだん楽しくなってきたぞ!
スピード重視で気性の良い騎竜が良いかな……。
「子供の騎竜をお買い求めになってはいかがですか?」
「子供の騎竜?」
「はい。主と騎竜が共に成長をするのです。かけがえのない家族となりましょう」
「それは良いな!」
あれか!
子供が出来たら犬を飼えってヤツだ!
「そういえば、ちょうど騎竜が子を産みました。ご覧になりますか?」
「見――」
見ると言おうとして、俺はピタリと口を閉ざした。
今、幼い騎竜を見たら、買うといってしまいそうだ。
だが、明日にはマンドラゴラの根と満月草の花びらを冒険者ギルドで買い取らなければならない。
お金が必要なのだ。
「ジョン準騎士爵。その子供の騎竜は、いくらなのだ?」
「良い血統の騎竜の子でございますから、二億リーブル……。いや! 三億リーブル……。いやいや! 四億――」
「わかった! ジョン騎士爵! まずは、資金を作ってからだ! また、相談に乗ってくれ!」
俺は慌ててジョン老人にストップをかけた。
騎竜の価格がストップ高になりそうなのだ。
よくよく考えてみると、俺はジョン老人のセールストークにまんまと引っかかり買う気になっていた。
これって絶対フォー辺境伯の仕込みだよな……。
騎竜の値段を聞いて俺が顔を青くしたのだろう。
ジロンド子爵がゲラゲラ笑っていた。
「お兄様! 私、騎竜が欲しいです!」
妹のマリーにおねだりされてしまった。
よし!
騎竜を買うために、新領地開発をがんばろう!
194
あなたにおすすめの小説
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します
burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。
その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ
月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。
こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。
そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。
太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。
テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる