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第三章 ノエル南部に立つ!
第44話 俺流! 魔の森の開拓方法
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――翌日。
俺は村人と果物を採取して税率を決め、領主らしい仕事をした。
次は領主屋敷作りに着手だ。
今は村の広場の中央に馬車を停めて野営をしているのだ。
これでは体が休まらないし、気持ちも落ち着かない。
妹マリーのドライフルーツ工房も作ってあげたいし、俺の実験工房も欲しい。
実験工房があれば、人目を気にせず生産スキル【マルチクラフト】を使える。
それに領地を統治するのに領主屋敷がなければ、領民に対しても、他の貴族に対しても格好がつかない。
領主屋敷は必要だ。
俺は執事のセバスチャンに、領主屋敷の立地について相談した。
「セバスチャン。領主屋敷はどこに建てようか?」
「将来的に村をどう発展させるかによります。この広場でも良いですが、村人たちが集まる場所を潰してしまうのもどうかと……」
「確かにそうだな。領民感情を害する必要はない」
俺とセバスチャンは、村の広場にいる。
現在は俺たちの馬車が真ん中にドンと止まっているが、ここは村人たちが日常的に集まる場所なのだ。
広場には井戸があり、村人たちは水を汲みに来たついでに世間話をする。
村人のコミュニケーションスペースを奪うのは、よろしくない。
「ノエル様は、この村をどのように発展させたいとお考えですか?」
「うーん……。出来るかどうかはわからないが、海の方まで広げたい」
「えっ!? 海でございますか!?」
執事のセバスチャンが大いに驚く。
だが、俺としては、海があるのに活用しないのは、もったいないと思うのだ。
漁業や交易はもちろん、製塩、真珠貝の養殖、造船……パッと思いついただけで海の産業は沢山ある。
ここから海までは、馬車で三時間ほどだが、道を整備すれば時間短縮できるだろう。
将来を考えるなら農村地帯と海岸部を両にらみ出来る位置に領主屋敷を建てたい。
執事のセバスチャンに俺の構想を話すと目を見開いて驚いた。
「それは壮大な構想でございますね……。魔の森を開拓するのに何年かかるか……。いや何十年単位ですね……」
「セバスチャン。俺はそんなに時間をかける気はない。ちょっと実験がしたい。村の入り口まで行くので、みんなを集めてくれ」
俺、妹のマリー、執事のセバスチャン、ネコネコ騎士のみーちゃん、エルフのシューさんの五人が馬車に乗り、村の入り口まで移動する。
馬車を降りると俺は全員に厳しい口調で命じた。
「これから俺がすることは秘密だ。一切の口外を禁ずる」
いつか俺の生産スキルは、沢山の人に知られると思う。
だが、ギリギリまで隠しておいた方が良い。
国王と宰相……彼らとの戦いが、これから先にあるだろう。
だから、スキルを知る人間は、最小限にしておきたい。
執事のセバスチャンとネコネコ騎士のみーちゃんは、俺の生産スキル【マルチクラフト】を知っている。
俺が生産スキルを使うと察してうなずいた。
俺はエルフのシューさんに確認を取る。
「シューさん。俺のスキルに関することだから秘密にして欲しいんだ。大丈夫かな?」
「問題ない。雇い主の秘密は守る」
シューさんの言葉には重みがあった。
これまでの行動からも信じて大丈夫だろう。
ネコネコ騎士のみーちゃんが、妹のマリーに優しく説いている。
「マリーは秘密に出来るかニャ? 出来るかニャ~?」
「内緒ですね!」
「そうニャ! 内緒ニャ!」
二人して口元に指をあてて、『シーッ!』とやってる。
ふふ。微笑ましいな。
さて、始めるか……。
これから始める実験が上手く行けば、この開拓村を短期間で拡張することが可能になる。
「シューさん。魔の森は魔力が豊富だから、森の木々がすぐに成長するのですよね?」
「その通り」
「だから魔の森を開拓するには、長い時間が必要……ですよね?」
「そうだけど……?」
シューさんが、何が言いたいのかと不思議そうな顔で俺を見る。
「もし、土地から魔力を抜いたらどうなりますか?」
「それは……普通の土地になるから、開拓はしやすくなると思う。」
「魔の森の魔力を材料にして魔石を作ったらどうなりますかね?」
「えっ!?」
俺の生産スキル【マルチクラフト】は、物体を生成する時に材料が必要だ。
逆に考えれば、材料さえあれば、物体を生成出来る。
この魔の森には魔力がある。
ならば魔力を材料にすれば、魔石が生成出来る。
魔石を生成すれば、魔の森が普通の森に変わる……はずだ!
俺は道から外れて、魔の森の前に立つ。
魔の森に手をかざして、スキルを発動する。
「スキル発動! 【マルチクラフト】!」
脳裏に浮かべたのは魔石。
生産スキル【マルチクラフト】が魔石生成に必要な素材をはじき出し、魔の森の魔力で足りると解を返す。
生産スキルは生成プロセスに入った。
俺の左手から金色の光りが渦を巻いて飛び出し、魔の森を飲み込む。
金色の渦は魔の森から魔石生成に必要な魔力を抽出し、七色の光りが俺の右手から溢れた。
拳大の魔石が右手に現れる。
俺は魔石を地面に落とし、次の魔石を生成しろとスキルに命じる。
(根こそぎだ! 魔力を根こそぎ、ぶっこ抜け!)
生産スキル【マルチクラフト】は、俺の心の声に応えた。
魔の森の地面、地中、空中から魔力をかき集め、ドンドン魔石を生成する。
次々と魔石を生成し、俺の足下に魔石が溜まっていく。
五分ほどすると、生産スキルが停止した。
大量の魔石が俺の足下に山を作る。
俺は東京ドーム一つ分の広さを指定して、魔の森から魔力を奪い取った。
目の前にある森は、見た目は今までと変わらない。
だが、魔力を抜いたので、植物の成長速度は通常の土地と変わらないはずだ。
「ノエル……何をしたの……?」
エルフのシューさんが、俺に近づき怖いほど真剣な声で質問してきた。
「魔の森から魔力を抜いたんですよ」
「そんなこと――!」
「事実として、ここに大量の魔石があります。これで目の前の森は、普通の森になりました。開拓が楽に進みます」
「むう……」
エルフのシューさんが腕を組んで考え込む。
俺はペロッと下を出して、可愛くシューさんにお願いした。
「秘密ですよ!」
「こんなバカバカしい話は、誰も信じない! 本当に魔の森が普通の森になったの?」
シューさんの疑問はもっともだ。
実験は成功したと思うが、時間をおいてみないと確定できない。
だが、俺のスキルは、魔の森から魔力がなくなったと答えを返していた。
「恐らく大丈夫ですよ」
俺はシューさんにニッコリと笑った。
俺は村人と果物を採取して税率を決め、領主らしい仕事をした。
次は領主屋敷作りに着手だ。
今は村の広場の中央に馬車を停めて野営をしているのだ。
これでは体が休まらないし、気持ちも落ち着かない。
妹マリーのドライフルーツ工房も作ってあげたいし、俺の実験工房も欲しい。
実験工房があれば、人目を気にせず生産スキル【マルチクラフト】を使える。
それに領地を統治するのに領主屋敷がなければ、領民に対しても、他の貴族に対しても格好がつかない。
領主屋敷は必要だ。
俺は執事のセバスチャンに、領主屋敷の立地について相談した。
「セバスチャン。領主屋敷はどこに建てようか?」
「将来的に村をどう発展させるかによります。この広場でも良いですが、村人たちが集まる場所を潰してしまうのもどうかと……」
「確かにそうだな。領民感情を害する必要はない」
俺とセバスチャンは、村の広場にいる。
現在は俺たちの馬車が真ん中にドンと止まっているが、ここは村人たちが日常的に集まる場所なのだ。
広場には井戸があり、村人たちは水を汲みに来たついでに世間話をする。
村人のコミュニケーションスペースを奪うのは、よろしくない。
「ノエル様は、この村をどのように発展させたいとお考えですか?」
「うーん……。出来るかどうかはわからないが、海の方まで広げたい」
「えっ!? 海でございますか!?」
執事のセバスチャンが大いに驚く。
だが、俺としては、海があるのに活用しないのは、もったいないと思うのだ。
漁業や交易はもちろん、製塩、真珠貝の養殖、造船……パッと思いついただけで海の産業は沢山ある。
ここから海までは、馬車で三時間ほどだが、道を整備すれば時間短縮できるだろう。
将来を考えるなら農村地帯と海岸部を両にらみ出来る位置に領主屋敷を建てたい。
執事のセバスチャンに俺の構想を話すと目を見開いて驚いた。
「それは壮大な構想でございますね……。魔の森を開拓するのに何年かかるか……。いや何十年単位ですね……」
「セバスチャン。俺はそんなに時間をかける気はない。ちょっと実験がしたい。村の入り口まで行くので、みんなを集めてくれ」
俺、妹のマリー、執事のセバスチャン、ネコネコ騎士のみーちゃん、エルフのシューさんの五人が馬車に乗り、村の入り口まで移動する。
馬車を降りると俺は全員に厳しい口調で命じた。
「これから俺がすることは秘密だ。一切の口外を禁ずる」
いつか俺の生産スキルは、沢山の人に知られると思う。
だが、ギリギリまで隠しておいた方が良い。
国王と宰相……彼らとの戦いが、これから先にあるだろう。
だから、スキルを知る人間は、最小限にしておきたい。
執事のセバスチャンとネコネコ騎士のみーちゃんは、俺の生産スキル【マルチクラフト】を知っている。
俺が生産スキルを使うと察してうなずいた。
俺はエルフのシューさんに確認を取る。
「シューさん。俺のスキルに関することだから秘密にして欲しいんだ。大丈夫かな?」
「問題ない。雇い主の秘密は守る」
シューさんの言葉には重みがあった。
これまでの行動からも信じて大丈夫だろう。
ネコネコ騎士のみーちゃんが、妹のマリーに優しく説いている。
「マリーは秘密に出来るかニャ? 出来るかニャ~?」
「内緒ですね!」
「そうニャ! 内緒ニャ!」
二人して口元に指をあてて、『シーッ!』とやってる。
ふふ。微笑ましいな。
さて、始めるか……。
これから始める実験が上手く行けば、この開拓村を短期間で拡張することが可能になる。
「シューさん。魔の森は魔力が豊富だから、森の木々がすぐに成長するのですよね?」
「その通り」
「だから魔の森を開拓するには、長い時間が必要……ですよね?」
「そうだけど……?」
シューさんが、何が言いたいのかと不思議そうな顔で俺を見る。
「もし、土地から魔力を抜いたらどうなりますか?」
「それは……普通の土地になるから、開拓はしやすくなると思う。」
「魔の森の魔力を材料にして魔石を作ったらどうなりますかね?」
「えっ!?」
俺の生産スキル【マルチクラフト】は、物体を生成する時に材料が必要だ。
逆に考えれば、材料さえあれば、物体を生成出来る。
この魔の森には魔力がある。
ならば魔力を材料にすれば、魔石が生成出来る。
魔石を生成すれば、魔の森が普通の森に変わる……はずだ!
俺は道から外れて、魔の森の前に立つ。
魔の森に手をかざして、スキルを発動する。
「スキル発動! 【マルチクラフト】!」
脳裏に浮かべたのは魔石。
生産スキル【マルチクラフト】が魔石生成に必要な素材をはじき出し、魔の森の魔力で足りると解を返す。
生産スキルは生成プロセスに入った。
俺の左手から金色の光りが渦を巻いて飛び出し、魔の森を飲み込む。
金色の渦は魔の森から魔石生成に必要な魔力を抽出し、七色の光りが俺の右手から溢れた。
拳大の魔石が右手に現れる。
俺は魔石を地面に落とし、次の魔石を生成しろとスキルに命じる。
(根こそぎだ! 魔力を根こそぎ、ぶっこ抜け!)
生産スキル【マルチクラフト】は、俺の心の声に応えた。
魔の森の地面、地中、空中から魔力をかき集め、ドンドン魔石を生成する。
次々と魔石を生成し、俺の足下に魔石が溜まっていく。
五分ほどすると、生産スキルが停止した。
大量の魔石が俺の足下に山を作る。
俺は東京ドーム一つ分の広さを指定して、魔の森から魔力を奪い取った。
目の前にある森は、見た目は今までと変わらない。
だが、魔力を抜いたので、植物の成長速度は通常の土地と変わらないはずだ。
「ノエル……何をしたの……?」
エルフのシューさんが、俺に近づき怖いほど真剣な声で質問してきた。
「魔の森から魔力を抜いたんですよ」
「そんなこと――!」
「事実として、ここに大量の魔石があります。これで目の前の森は、普通の森になりました。開拓が楽に進みます」
「むう……」
エルフのシューさんが腕を組んで考え込む。
俺はペロッと下を出して、可愛くシューさんにお願いした。
「秘密ですよ!」
「こんなバカバカしい話は、誰も信じない! 本当に魔の森が普通の森になったの?」
シューさんの疑問はもっともだ。
実験は成功したと思うが、時間をおいてみないと確定できない。
だが、俺のスキルは、魔の森から魔力がなくなったと答えを返していた。
「恐らく大丈夫ですよ」
俺はシューさんにニッコリと笑った。
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