没落貴族の異世界領地経営!~生産スキルでガンガン成り上がります!

武蔵野純平

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第四章 国際都市ベルメールへ

第61話 高速ヨットの試運転

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 ――朝!

 俺とシューさんは、寝不足である。
 だが、時間は待ってくれない。執事のセバスチャンに叩き起こされ支度をし、みんなと一緒に海岸に来た。

 白い砂浜と青い海。ふう……寝不足の目に、日差しがまぶしいぜ!

「こ……これが新しい船! 美しい船だな!」

 ダークエルフのエクレールが、白い砂浜に置かれた新しい船を見て感嘆する。
 俺が生産スキルで生成した船は、大きな帆を持つ双胴のヨットだ。
 カラーは白をベースに、船体と帆に青い彗星マークを描いた。馬車と同じマーク、工房のシンボルだ。
 俺はポンと船体に手を置く。

「これはF50という船だ」

「エ、エフィ?」

 F50。名前の由来は船の長さが50フィートだからだ。
 双胴船で船体の長さは、およそ十五メートル。全幅は八.八メートル。
 二つの船体は板状のブリッジとネットでつながっているので、人が行き来することが出来る。

 ダークエルフたちが、ワラワラとF50に群がる。
 若い男のダークエルフが、船体をコンコンと叩く。

「船体は……? これは何だ? 木ではないな?」

「新素材で出来てる。頑丈で、軽く、海水に強い」

「新素材……凄いな……!」

 若い男のダークエルフはゴクリとつばを飲み込む。

 船体はCFRP――カーボン・FRP、炭素繊維強化プラスチック製だ。日本では船や飛行機に使われていた石油素材だ。嫌われ者だった『黒い水』つまり石油から生産スキルで、船体を生成した。

 別のダークエルフの男が帆を触りながら、マストを見上げる。

「マストが高いし、帆が大きいな」

「その分、スピードが出るぞ」

 マストの高さは二十四メートル。ビルの八階と同じ高さだ。
 この高いマストに張った帆に風を受ければ、最高速度は時速百キロ出るはずだ。

 俺は操作方法をダークエルフたちに教える。
 舵を切るのは、ハンドル。
 帆は二つ、大きなメインセールと小さめのセールがつく。
 船体下部には水中翼がついている。ほとんどの操作は、レバーやハンドルで行う。

 本物のF50のようなエレクトロニクス器機はついていないが、油圧システムは実現出来たので、操作感は良いと思う。

 とはいっても、こんなことはダークエルフの連中に話してもわからない。
 全ては俺が前世日本で見たF50のビデオで知ったことだ。生産スキルを使って再現したが、この世界の人間には理解不能だろう。

「まあ、とにかく物凄く早い船ってことだ」

「よし! 早速乗ってみよう!」

 ダークエルフのエクレールが音頭をとって、船を海へ出す。
 ダークエルフの六人、俺、護衛としてエルフのシューさんが、船に乗り込む。

 大丈夫かな? と心配していたが、ダークエルフたちはすぐにF50の操作に慣れた。低速の操船に問題はない。

 さあ、ここからが本番だ。

 グラインダーという手回し車をダークエルフの若い男が回した。
 船体下の水中翼が海中へスライドしていく。
 そして船体が浮き上がり、スピードが上がる。

 ダークエルフたちから驚く声が上がる。

「は、早い!」

「おい! 空を飛んでいるぞ!」

「海面を滑るようだ!」

 よし! 高速でも操船は問題ない。船体や帆にも異常は見られない。これなら大丈夫だろう。

 俺はシューさんと左側の船体に座っていた。右側の船体で舵を切るエクレールが、嬉しそうに話しかけてきた。

「主! これは凄い船だぞ!」

 興奮したエクレールの声が風に乗ってきた。
 俺は風の音に負けないように、大きな声で返事をする。

「そうだろう! スピードなら国一番だと自負しているよ!」

「この船の名前は?」

「エクレールがつけていいよ!」

 今日は試運転だから俺が乗り込んでいるが、普段はエクレールたちが使う船だ。
 エクレールたちが名前をつけた方が良いだろう。

 エクレールは、すぐに名前を思いついた。

「ラファール号は、どうだろう?」

「ラファール……疾風か! 良い名前だ! 決まりだ!」

 早そうな良い名前だ。船の名前はラファール号に決まった。
 ウキウキのエクレールが、目をキラキラさせて、嬉しそうに叫んだ。

「さあ! ラファール! 風をつかめ! 水平線までひとっ飛びだ!」

 ラファール号は、さらに速度を上げた。非常に安定している。
 安心して乗っていられるし、乗り心地も悪くない。

 見ればシューさんが、ウトウトしている。
 朝まで作業をしていたからな……。
 ああ……俺も眠くなってきた。


「主! 起きろ! 到着したぞ!」

「ん……」

 どうやらいつの間にか眠ってしまったらしい。
 ほんの数分だと思うけど……。

 俺はノビをしながら、エクレールに聞く。

「ごめん。寝ていたね。どのくらい時間が経った?」

「およそ三時間だな。ちょうど昼だ」

 見上げると、太陽が真上に差し掛かろうとしている。
 思ったよりも、長い時間寝てしまったようだ。

 しかし、長い試運転だな。
 ダークエルフたちは、よほどこのラファール号を気に入ったのだろう。

 辺りを見回すと、ラファール号は海岸に近いポイントに停泊していた。

 あれ……?
 白い砂浜がないぞ……?

 ゴツゴツとした岩場が見える。
 俺の領地の近くにこんな海岸があったかな……。

「エクレール。ここはどこ?」

「ダークエルフの里だ」
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