没落貴族の異世界領地経営!~生産スキルでガンガン成り上がります!

武蔵野純平

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第五章 領地の拡大

第79話 領地配分 シーモ・ウーマック

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 翌日、道普請はお休みにして、リーダーたちを率い領地候補のツアーに出掛けた。
 リーダーたちは、自分の騎竜に乗り、俺とネコネコ騎士のみーちゃんは相乗りさせてもらった。

 今日から、護衛交代でみーちゃんが俺につくのだ。

「ニャニャニャニャ~♪」

 みーちゃんは、ディー・ハイランドの騎竜に乗せてもらいご機嫌だ。
 俺は、マクシミリアンの騎竜に乗せてもらった。

 マクシミリアンは、ちょっと難しい事情を背負っている。
 こういう時にコミュニケーションを取っておこう。

「マクシミリアン。騎竜は便利だね!」

「はい。南部では必須ですよ」

 騎竜は魔の森の中でも木を避けながらスイスイ進むのだ。
 木の根に脚を引っかけることもない。
 枝が突き出たところでは、頭を下げて枝を回避する。

「私も騎竜が欲しいな」

「でしたら、乗り方を教えて差し上げますよ!」

「おお! それは頼もしい!」

 マクシミリアンにとって、十三歳の俺は親戚の子供のような感覚なのだろう。
 フレンドリーに接してくれる。
 以前、引き抜きがあった時のような頑なな雰囲気はない。

「マックス! こけるなよ!」
「そうだぞ。ご当主を乗せてるんだ! しっかり頼むぜ!」

「はは! 俺の腕は知ってるだろう! そんなヘボじゃないさ!」

 他のリーダーたちから軽いからかいが入ったが、マクシミリアンは笑って軽く返した。
 他のリーダー連中とも、大分打ち解けたようだ。
 ディー・ハイランドが上手く取り持ってくれたのかな?

「エトワール伯爵! 騎竜の乗り方を教わるためにも、俺のところから騎竜を買えよ!」

 フォー辺境伯である。
 開拓村の候補地を見に行くと言ったら、一緒に行くとついてきた。

「騎竜はなかなか良いお値段ですよね~」

「まとめて買ってくれたら安くするぞ! エトワール伯爵だろ。マリーちゃんだろ。護衛のシュー、みーちゃん、執事のセバスチャン、秘書のシフォンちゃん。六頭だな! 毎度!」

「いやいや、さらっと商談をまとめないで下さい! そこまでお金はありませんから!」

 この押しの強さよ!
 俺が断るとフォー辺境伯の後ろからついてくる南部貴族のおじさんたちが口々に騎竜をプッシュし始めた。

「いやいや、騎竜は必要だぞ! 早急に!」
「そうだぞ! 早く乗り方を習った方が良い!」
「エトワール伯爵は、伯爵なのだぞ! 騎竜を持たず何とする!」

 口うるさいおっさんたちだ。
 南部貴族の面々も開拓村の候補地を見たいとついてきてしまったのだ。

 まあ、これだけ人数が多ければ魔物対策になるから良いけどね。


 まず領都ベルメールから東北方向へ向かう。
 地図でいうと右上だ。

 この辺りは山になっていて、山はフォー辺境伯領まで続いている。
 それほど険しい山ではないが、魔の森に覆われているので通行は不可能だ。

 候補地に到着し騎竜を下り、俺はリーダーたちに説明する。

「ここは斜面が多い。畑はあまり広くとれないだろう。だが、斜面は南向きで日当たりが良い。オレンジやオリーブを植えて、ドライフルーツやオリーブオイルを生産すれば現金収入を得られると思う」

 リーダーたちは、周囲の様子を見ている。
 何とな~く辺りを見ている感じだ。

 面白いのはリーダーたちより、南部貴族のおっさんたちの方が熱心にあれこれチェックしている。

「土は良いな!」

「うむ。日当たりも良い!」

「だが、斜面だからな……。畑は厳しいぞ」

「少し斜面を下って平らな所に住まいと畑をこさえてだな……」

「いや、それでも広さがとれぬぞ。小麦は外から買うようだな。そうすると領都ベルメールまで出張らないと」

 南部貴族のおっさんたちは、領地経営の経験者なだけある。
 具体的に色々考えて、この場所に開拓村を作った場合をシミュレーションし、あーだこうだと議論を続ける。
 リーダーたちは、近くでふむふむと熱心に聞いている。
 結果的に南部貴族のおっさんたちを連れてきて良かった。

 リーダーの一人、丸刈りの抜け目がなさそうな男が手を上げた。

「へへへ。ここの土地は俺に下さい」

 こいつはシーモ・ウーマック。
 予算を与えたら料理人を雇い香辛料を仕入れたヤツだ。

「シーモ・ウーマック。良いのか? ここは農地が広くとれないぞ。大丈夫か?」

「へい。エトワール伯爵の説明は聞いてやした。ドライフルーツとオリーブオイルを売る村なんて、面白いじゃねえですか! それに見て下さい!」

 シーモ・ウーマックは、両手を大きく広げた。

「この景色! 最高でやすよ!」

 俺たちが立っているのは、山の斜面だ。
 シーモ・ウーマックの視線の先に広大な魔の森が広がっている。

「毎日、この景色が見られるなんて最高でやしょう?」

 シーモ・ウーマックは、子供のように無邪気な笑顔を見せた。
 領地を選ぶ基準は人それぞれだ。
 毎日気分良く過ごせるということも大事だろう。

 それにシーモ・ウーマックは、予算を与えたら上手く使っていた。
 案外、この経営が難しそうな領地でも、上手くやるかもしれない。

 俺はシーモ・ウーマックの希望を受け入れた。

「よし! わかった! ここはシーモ・ウーマックの領地とする!」

「ありがとうごぜえやす!」

 ◆―― 作者より ――◆
 シーモ・ウーマックは、ミュージシャンのシーモさんとボビー・ウーマックさんから借名しました。
 音楽を聴きながらよく小説を書いているのですが、シーモさんのルパン・ザ・ファイヤーとボビー・ウーマックさんのAcross 110th Streetが流れていて、イメージにピッタリだなと思いました。
 Across 110th Streetは、クエンティン・タランティーノ監督の映画ジャッキー・ブラウンのラストで流れた曲です。
 あれ、やっぱりパム・グリアとタランティーノってデキてたんですかね?
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